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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
3 恋

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73/201

第72話 祭りはみんなで楽しむもの

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 連休一日目。


 雲一つ無い、よく晴れた天気で、絶好の祭り日和だ。

 商店街は大賑わいで、まともに歩ける様子ではない。各店舗が屋台を出し、ゲームなど催し物もあり、多くの親子連れが来ていた。

 Lisのテントは、商店街の入り口に設置され、全員で接客をした。

 五十食ずつ用意した四種類のゼリー。合計で二百食分あり、美夜は内心、本当にこんなに売れるのだろうかと思っていた。しかし、四種のゼリーは見る見るうちにはけていき、昼過ぎにはワインゼリーが数個残っているだけで、他は完売していた。

 昼を過ぎると、少しだけ客の出入りが落ち着きだした。


「美夜ちゃんが提案した、メロンのムースがあってよかったわね。子供達が喜んでた。本当、うちの男共ったら、子供達より自分達の事だけなんだから」


 雪は腰に手を当てて呆れ声で言った。その男共は、ビール片手に屋台で買ってきた焼き鳥を美味しそうに食べて、軽い宴会状態だ。

 光はコック服に焼き鳥のたれを垂らして騒ぎ、栄は缶ビールのプルタブを開け、ビールを溢して騒いでいた。


「なんだか、接客態度ゼロですね……」


 美夜は苦笑しながら呆れた口調で言った。


「いいじゃない。祭りはみんなで楽しむ物でしょ?」


 美夜の声が聞こえたのか、栄は若干赤い顔をしながら返す。


「でも、子供も楽しめなきゃ意味がないですよ」


 美夜は困った顔で栄にこたえ、首をすくめる。


「でも、美夜ちゃん案のメロンムースすごい人気だよね。お兄さん、もう、びっくりよお」


「誰よ、あれ」


 雪は鼻で笑い、呆れた顔で栄を見た。

 あれから、美夜はメロンを使ったデザートを考えた。美夜が出した案を、光がアレンジして出来た物は、見た目がメロンのクリームソーダーの様なデザートだった。乳白色の緑色、生クリームが泡のように見える。上には、サクランボが一粒乗っていた。緑色の部分はメロン風味のムースになっており、中には角切りしたメロンが入っている。


「俺もさっき食べたけど、旨かった。すごい良かったよ。良くできました!」


 栄は立ち上がると、美夜の頭を撫でた。


 美夜は笑いながら「ありがとうございます」と礼を言う。


 あの写真を見て以来、美夜は栄への想いを固く閉ざした。以前のように、胸が痛くなったり、顔が赤くなったり、栄の笑顔を見て泣き出しそうになったりすることは無くなった。

 雪と栄が言い合いをしていると、美月が里々衣を連れてテントに入ってきた。


「ただいまあ」


 二人は顔を綻ばせ、両手いっぱいに買った物を持っている。


 四人は「おかえり」と声を揃えて出迎えた。


「お、里々衣、何買ってもらったんだ?」


 栄は両手いっぱいにお土産を持った里々衣を、膝の上に抱き上げる。


「パパ、おさけくさい」


 と、里々衣が嫌そうな顔をすると、栄は「そうか?」と言い、里々衣に「はあ」と息を吹きかけた。

 里々衣は、「いやあ」と言って栄の膝の上から降りると、美夜の所に駆け逃げる。


「うわ、最低」


 光と美月が同時に言うが、そんな事はお構い無し。二人に非難されながらも、栄は楽しそうに大きな笑い声を上げた。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!



ミステリー系ヒューマンドラマ

『Memory lane 記憶の旅』完結済み!

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