第72話 祭りはみんなで楽しむもの
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連休一日目。
雲一つ無い、よく晴れた天気で、絶好の祭り日和だ。
商店街は大賑わいで、まともに歩ける様子ではない。各店舗が屋台を出し、ゲームなど催し物もあり、多くの親子連れが来ていた。
Lisのテントは、商店街の入り口に設置され、全員で接客をした。
五十食ずつ用意した四種類のゼリー。合計で二百食分あり、美夜は内心、本当にこんなに売れるのだろうかと思っていた。しかし、四種のゼリーは見る見るうちにはけていき、昼過ぎにはワインゼリーが数個残っているだけで、他は完売していた。
昼を過ぎると、少しだけ客の出入りが落ち着きだした。
「美夜ちゃんが提案した、メロンのムースがあってよかったわね。子供達が喜んでた。本当、うちの男共ったら、子供達より自分達の事だけなんだから」
雪は腰に手を当てて呆れ声で言った。その男共は、ビール片手に屋台で買ってきた焼き鳥を美味しそうに食べて、軽い宴会状態だ。
光はコック服に焼き鳥のたれを垂らして騒ぎ、栄は缶ビールのプルタブを開け、ビールを溢して騒いでいた。
「なんだか、接客態度ゼロですね……」
美夜は苦笑しながら呆れた口調で言った。
「いいじゃない。祭りはみんなで楽しむ物でしょ?」
美夜の声が聞こえたのか、栄は若干赤い顔をしながら返す。
「でも、子供も楽しめなきゃ意味がないですよ」
美夜は困った顔で栄にこたえ、首をすくめる。
「でも、美夜ちゃん案のメロンムースすごい人気だよね。お兄さん、もう、びっくりよお」
「誰よ、あれ」
雪は鼻で笑い、呆れた顔で栄を見た。
あれから、美夜はメロンを使ったデザートを考えた。美夜が出した案を、光がアレンジして出来た物は、見た目がメロンのクリームソーダーの様なデザートだった。乳白色の緑色、生クリームが泡のように見える。上には、サクランボが一粒乗っていた。緑色の部分はメロン風味のムースになっており、中には角切りしたメロンが入っている。
「俺もさっき食べたけど、旨かった。すごい良かったよ。良くできました!」
栄は立ち上がると、美夜の頭を撫でた。
美夜は笑いながら「ありがとうございます」と礼を言う。
あの写真を見て以来、美夜は栄への想いを固く閉ざした。以前のように、胸が痛くなったり、顔が赤くなったり、栄の笑顔を見て泣き出しそうになったりすることは無くなった。
雪と栄が言い合いをしていると、美月が里々衣を連れてテントに入ってきた。
「ただいまあ」
二人は顔を綻ばせ、両手いっぱいに買った物を持っている。
四人は「おかえり」と声を揃えて出迎えた。
「お、里々衣、何買ってもらったんだ?」
栄は両手いっぱいにお土産を持った里々衣を、膝の上に抱き上げる。
「パパ、おさけくさい」
と、里々衣が嫌そうな顔をすると、栄は「そうか?」と言い、里々衣に「はあ」と息を吹きかけた。
里々衣は、「いやあ」と言って栄の膝の上から降りると、美夜の所に駆け逃げる。
「うわ、最低」
光と美月が同時に言うが、そんな事はお構い無し。二人に非難されながらも、栄は楽しそうに大きな笑い声を上げた。
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