第68話 ブランマンジェとワイン
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白さから、ミルク味と決めつけていた美夜は、一口食べてすぐに違う事に気が付いた。
アーモンドの風味だ。舌触りが滑らかで、冷えたプリンが気持ちよく喉を通っていく。
ソースはバニラの風味が利いていて、アーモンドと相性が良かった。柑橘系の後だったせいか、甘さが強い気もした。
「美味しい……。これ、アーモンドの味がする……」
「ブランマンジェだよ。どうかな?」
光は小首を傾げて美夜に訊く。美夜はもう一口食べると、自分が感じた意見を述べる。
「柑橘系の後からだと思いますが、少し甘い感じがします」
「多分そうかな。待って、水持ってくるから」
光はコップに水を入れ、戻ってくると、美夜に渡した。美夜は水を一口飲むと、もう一度、ブランマンジェを食べた。
「ああ、丁度良いかも……。舌触りも、喉越しもすごく良いと思います。ただ、ソースのお酒が少し強い気がします。お祭りなら子供もたくさん来ると思うし。あと、希望を言えば、生クリームをもう少し増やしても良いと思います。うちの生クリームはくどくないし、美味しいですから」
光は腕を組んで「やっぱりね」と言い、栄をちらりと見やる。
「俺が言った通りじゃないか。やっぱ、酒が強いよ。ハル兄、酒飲みすぎて感覚がないんじゃないの?」
栄は下唇を突き出し、「すまんね」と拗ねたように言った。それを見て美夜は小さく吹き出す。
光は鼻から息を吐き出すと、「シャンティーは」と、生クリームについて話し始めた。
「シャンティーは、あまり増やさない方が良いと思うんだ。増やす事で、折角のアーモンドの風味が薄れるだろ」
「ああ、そっか……」
美夜は光の意見に納得した。アーモンド風味と言っても、アーモンドの味その物がする訳ではなく、あくまで風味で、鼻に抜ける香りだ。生クリームが多く入る事で、ミルクの香りが引き立って、アーモンドが消えてしまう事がある。
「アマレットを入れて、杏仁豆腐風にするという考えもあるけど、女の子はそういうの、どうなのかな?」
「私は好きですけど……。私の周りは、苦手な子が多かったです。東京はどうなんだろう……。でも、これはこのままで良いと思います」
「そう。ありがとう。じゃあ、これが最後」
最後に手渡されたものは、赤いゼリーの中に、イチゴ、ラズベリー、赤カシスがカップの中に踊るように入っている。上には生クリームが少し絞られ、ミントの葉が飾られていた。とても可愛らしい印象だ。
口を軽く濯いで一口食べると、「あ」と低い声を出した。
「これ、ワインじゃないですか」
美夜は口を尖らせ、腕を突き出すようにしてカップを光に渡した。
「今さっき栄さんに怒ってたのはパフォーマンスですか?これなんか、まんまお酒じゃないですか」
光と栄は笑いながら「まあまあ」と宥め、言い訳をするように「大人も楽しめなきゃね」と言った。
「お祭りは子供の方が楽しみにするんですよ?子供が食べられない物作ってどうするんですか」
美夜が、さらに意見するように言うと、栄が「そうだけどさ」と笑いながら言う。
「でも、大人も楽しめなきゃさ。それに、ブランマンジェの酒を省けば、三個中、二個はお子様も食べられるって事で。駄目かな?」
栄は愛想笑いの様な笑顔で首を傾げる。美夜は唸るように返事をし、考えるように首を傾げた。
「でも、柑橘系のゼリーは、どちらかというと大人向けのように思えます。そう考えると、ブランマンジェだけしかありませんよ?」
「じゃあ、中西は何が食べたい?」
光は拗ねた子供に諭すように、優しく訊いた。
美夜は自分が食べたいものを考え、暫くして「今、直ぐには浮かびません」と呟くように言った。
「じゃあ、明日までに考えてきて」と光は言うと、「さあ、開店準備だ」と手を打った。
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