表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
3 恋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/201

第67話 ジュレ・ア・オランジェ

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 翌朝、美夜はすっかり熱も下がり、身体もだいぶ軽くなっていた。

 店へ行き、コスチュームに着替えを済ませ、事務所へ向かう。胸の奥の熱は、今はない。平常心である事に、少しほっとしつつ、事務所のドアをノックする。返事はなく、もう一度ノックをしてドアを開ける。事務所内に栄は居なかったが、ジャケットがハンガーに掛かっていた。

 二階に居るのだろうかと思い、美夜は二階に向かった。


「おはようございます」


 いつもの様に大きな声で挨拶をすると、厨房から二人の声が聞こえ中を覗く。美夜を見て、光が僅かにほっとしたような笑みを浮かべた。


「おはよ」


「おはよう、美夜ちゃん。気分はどう?元気になった?」


 栄は心配そうに眉を寄せ、小首を傾げる。


「おはようございます。この間はご迷惑おかけしました。もう大丈夫です。ありがとうございます」


「いいえ。うん、この間より顔色良いね。よかった」


「ご心配おかけしました。ありがとうございます。もう、元気です」


 美夜がはにかみながら答えると、栄は軽く頷き、「ちょっと来て」と、美夜を手招きした。

 美夜は手を洗い、栄と光の元へ近寄った。

 二人の前には、美夜が初めて見る菓子が三種類、置かれている。

 どれも、プラスチック製のパフェなどに使う様な小さなデザートカップで、中はプリンとゼリーのようだ。


「これ、ちょっと食べてみてくれる?」


 美夜は光に言われるまま、一番手前にあるカップを手に取った。


「これ、新作ですか?」


「そう。二日間だけの限定品」


 光がそう言うと、美夜は「二日間だけ?」と小首を傾げる。栄が「そう、二日間だけ」といい、美夜に説明を始める。


「今日から五月ですが、五月と言えば連休がありますね」


「はい」 


「商店街で、祭りがあるんだよ。二日間だけ。それで、うちは店は閉めてるんだけど、テントブースで参加をするんだ。そこでは毎回、その日限定のお菓子を引っ提げて行くんだけどね。去年が異常な暑さだったから、今年は喉越しの良い物をと思ってね」


「かと言って、ソルベとか持って行っちゃうと、駄菓子屋さんのアイスと被るから、それは出さないけど。で、どうかな?」  


「はい」


 透明なカップに、下から順に赤、ピンク、薄い黄色、無色透明のグラデーションになっていた。透明な部分はクラッシュゼリーになっていて、上には小さくカットされたグレープフルーツとオレンジ、ミントの葉が飾られている。

 一口、口に含む。ゼリーは柑橘系で、甘さ控えめのさっぱりしたものだ。

 柔らかな舌触りに、すっと溶ける様に流れる喉越し。下に行くにつれ、少しゼリーが硬くなるが、それがまた癖になりそうな感覚だ。


「これは着色したんですか?」


「いや、天然色だよ。下から、ブラットオレンジ、ピンクグレープフルーツ、グレープフルーツ。透明な部分は、少しレモンを使ってる。着色は避けたかったし、タケさんがいい柑橘系を揃えてくれたからね。その物を生かしたかったんだ。ブラッドとピンクの境はちょっと苦労したけど」


 タケさんの名を聞き、美夜は表情を和らげた。Lisのチーズケーキをこよなく愛する青果店の亭主だ。美夜が初めてLisへ訪れた時に出会った常連客である。


「綺麗ですよね。上の透明なクラッシュゼリーが涼しげだし。下の方のゼリーの堅さは、もう気持ち柔らかくできますか?」


「うん、可能だよ。ただ、あんまり柔らかすぎると、反対に溶けやすくなるから。そんなに柔らかくは出来ないけど」


「ああ、そうか。そうですね。野外ですもんね」


 そう言うと、栄が頷く。


「まあ、ポータブル冷蔵庫の中に入れてるとはいえ、混雑すると蓋を何度も開け閉めするから、温度が保てない可能性もあるし」


 その言葉に美夜が頷くと、光は次のカップを手渡す。


「これはどうかな?」


 白いプリン状のもので、少し絞った生クリームの上に、飾り切りしたイチゴとラズベリー、ミントの葉が飾られていた。




最後まで読んで頂き、ありがとうございます!



同時進行でミステリー系ヒューマンドラマ

『Memory lane 記憶の旅』更新中!

https://book1.adouzi.eu.org/n7278hv/



「続きが気になる」という方はブックマークや☆など今後の励みになりますので、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ