第60話 幸せな時間
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車が見えなくなると、美夜と美月は階段を上り、自分達の部屋に帰った。
靴を脱ぎ、リビングに直行し、二人同時に倒れ込むように座った。
「なんか、今頃になってお腹一杯なのが実感できてきた」
美月はふう、と息を吐きながらお腹をさする。その言葉に、美夜も「本当に」と吐息まじりに同意する。
「最近、太ってきてるんだよね。前みたいに、ちょっと運動しただけでは、全然駄目。私も何かしなきゃなあ」
美夜はお腹の端を摘んで、悲劇的な顔をした。
美月はそれを見て笑いながら、「うちのフィットネスクラブに来る?」と勧誘するが、その言葉が耳に届いていなかの様に、美夜は小さく手を叩いた。
「そうだ。プレゼント」
そう言い自分の部屋へ行くと、美月へのプレゼントを持ってリビングに戻った。
美月も同様に、プレゼントを大事そうに抱えてリビングへ入ってきた。
お互い向かい合い「おめでとう」と、それぞれのプレゼントを交換した。
美月は早速包みを解くと、「あ!」と嬉しそうな顔で声を上げる。
包みの中は、九十色入りのパステルだ。
「すごい、ありがとう!ちょっと気になってたんだよね、これ」
「商店街内の文具店で取り寄せてもらったの。前に欲しいって言ってたなあって思って」
「ありがとう、美夜」
「どういたしまして」
「美夜も開けてよ」
美月は嬉しそうに美夜を促す。美夜は小さく頷くと、包みを開けた。
中には、前に雑誌で見て、ずっと欲しいと思っていた硝子製の万華鏡が入っていた。
「美月!これ、どこで?嬉しい!ありがとう。高かったでしょう?」
「美夜がくれたパステルと同じぐらいだよ。さすが、東京だよね。田舎じゃなかなか手に入らない物が、ちょっと探せばあるんだもん。それもね、この前の休みに、職場の先輩に連れて行ってもらったショッピングモールで見つけたんだよ。今度、一緒に行こうよ。美夜がお気に入りの洋服屋さんもあったよ。田舎に居た時みたいに、ネットで買って失敗する事がなくなるし」
「そうだね」と笑い、万華鏡の中を覗いた。青をメインに、赤、黄、緑がクルクルと形を変える。
「きれい……」
溜め息混じりに言う美夜を、美月は嬉しそうに見つめた。
「美月も見てみなよ。すごく綺麗」
「うん」
とても幸せな一日だと、二人は思った。その日、二人は夜中まで喋り続けた。楽しくて、嬉しくて、幸せで。このままずっと時間が進まなければいいのに、とさえ思った。
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