第54話 歓迎会
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ここ最近、少し長めですが、会話文が多い時は、今後も少し長めに投稿します。
よろしくお願いします。
六時四十分を過ぎた頃、二人は家を出た。
二人はそれぞれの職場の話しをしながらLisに向かった。
楽しげに職場の話しをする美月に、美夜は「よかった」と言った。
美月は「何が?」と、美夜を振り返った。
「美月、職場で上手く行ってるみたいだね。最初の頃、大丈夫かなって思ってたんだよ」
その言葉に、美月は「え……」と小さな声を出した。
美夜はそっと微笑むと、美月の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「すっごく気になってたけど、美月が何も言わないのに聞けないよ。美月が言ってきたら、いくらでも聞けたけど、何も言わないって事は、今、美月は頑張ってるんだって、見守るしか出来ないって思ってたんだよ」
「美夜……」
「でも、美月は人と仲良くなる才能があるもの。だから、大して心配はしてなかったのよ?あの人見知りの里々衣ちゃんとだって、直ぐに仲良くなったし、今じゃ大の仲良しじゃない。美月は人を楽しくさせる、一緒に居たいなって思わせる、すっごい素敵な魅力がある。東京の人にだって、絶対通用するって信じてた」
美夜はにっこり微笑んだ。
「私の大好きな、お姉ちゃんだもの」
美月は照れるように微笑むと「ありがとう、美夜」といい、涙が出そうになっているのを誤魔化すように「へへ」と笑った。
Lisには七時五分前に到着した。二人は二階を見上げ、首をかしげた。
カフェの電気が消えていたからだ。
「まだみんな来てないのかな?七時からでしょう?カフェでやるんでしょう?」
美月はLisから少し離れて二階を見上げた。
「うん。そのはずなんだけど……。一応、七時まで五分あるから、待っててみようか。それで来なかったら、中に入ってみよう」
「中って?どっから入るの?」
「裏に回って。まあ、二階の鍵が開いているか不明だけど」
二人は、カフェに上がる階段に腰掛けて、時間まで待った。しかし、誰一人来る気配はなかった。
「騙されたんじゃないの?」
美月は腕時計を見ながら言った。
「なんのために?」
美夜は通りに出て、左右に首を振り、誰か来ないか眺めた。誰かが来る気配はなく、仕方ない、と言いながら「裏に回ろう」と、歩き出した。
美月は美夜の後について歩いた。
裏口に回ると、二階に上がる外階段を上った。
「ドア、開いてる?」
美月が訊いた。
美夜はドアノブに手を伸ばし、引いた。
「開いてる……」
二人は顔を見合わせると、暗い店内に足を踏み入れた。
二人が店内に入ると、厨房から「ハッピーバースデー」の歌が聞こえてきた。
二人が同時に振り向くと、栄を先頭に、雪、里々衣が出てきて、最後に光が大きなホールケーキを持って店内に入ってきた。
ケーキには2と3のロウソクが立っていた。
栄がオペラ歌手の様に仰々しく歌い、雪達は笑いながらその歌声に続いた。
「ハッピーバースデー、ディア、美夜ちゃんと美月ちゃあん、ハッピバースデー、トゥーユー」
美夜と美月は驚き顔で笑い、手を叩いた。
「すごい、なにこれ!」美月は嬉しそうに声を上げた。
「ええ!なんで?」美夜は口元を両手で押さえ、喜びの声を上げた。
「さあ、二人とも。吹き消して」
栄が明るい声で言った。
美夜と美月は「せえの」というと、ロウソクの火を吹き消した。
店内の電気が付き、誰とも無く拍手をした。
「おめでとう。美夜ちゃん、美月ちゃん」
雪は細かく速い拍手を二人に送った。二人は声を揃えて礼を言うと、雪の隣に立つ男性を見つめた。
「この人、私の旦那。勝俊さんです」と、雪が紹介した。
勝俊は雪よりもだいぶ年上なのか、白髪交じりの短髪で、笑い皺が頬と目尻に深く刻まれていた。身長は雪より若干大きいくらいで、決して長身ではなかった。
二人は勝俊に挨拶をすると、勝俊は人の良さそうな笑顔を見せ「妻がお世話になってます」と、落ち着いた低い声で言った。
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