第43話 招き猫体質
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どのくらい時間が経ったのかと思い、時計に目をやる。
雪が休憩に入ってまだ三十分しか経っていない。早々に疲れたのか、または寝不足のせいか、身体が重く感じた。
身体を解すように背筋をぐっと後ろに反らすと、身体中が凝り固まっていたのか、血が巡り始めた気がする。
暫くして、雪が売り場に戻ってきた。今日は四時まで一緒にレジに立つ言い、ありがたくその好意に甘えた。
雪が来てから、スリップが入っていないものや「商品を探して欲しい」など、美夜一人では応対出来ない事が続き、その度に、雪の動きを観察し、教えてもらいながら、何とかこなした。
一段落付くと、二人は「ふう」と同時に息を吐き、目を合わせ苦笑いをする。
「いつもはこんな事はないのよ。今日は特殊なケースが随分重なったわ」
雪は、腕を組み「珍しい事もあるわ」と、苦笑した。
「それに、今日はいつもよりお客さんも多いかもね。美夜ちゃん効果?美夜ちゃん、客寄せ効果があるとか?」
雪は笑いながら言ったが、その言葉に、美夜は笑いながら首をかしげる。
「いや、関係ないと思いますよ」
「そう?ほら、こういう人もいるのよ。例えば、誰も入っていないお店に入って商品を見ていたら、いつの間にか周りにお客さんだらけ、とか」
美夜は「ああ」と頷く。「それなら、分かります」と答えると、雪は「ほら」と言った。
「時々いるのよ、招き猫体質の人って」
雪の「招き猫体質」という言葉に、美夜は「どんな体質ですか」と笑いながらも、田舎での出来事をふと、思い出す。
「そう言われてみれば、そういうこと、田舎ではよくありました」
不意に、学生時代に友達に言われた言葉を思い出した。
『美夜と買い物行くと、行くところ、行くところ、突然、混雑し始めるよね。まあ、こうやってご飯食べるときは良いけど。だって、美夜と一緒なら直ぐに入れるってことだし』
その時、美夜は店の入り口に目をやった。確かに、美夜達が入ったときは、まだ席が随分と空いていたが、席に座って数分後には、周りは満席になっており、店の前で席が空くのを待っている人達が居た。
そんな事は、ただタイミングの問題だ、といったやり取りをした記憶が蘇る。
客足が途切れた合間に、少しだけ雪とたあいの無い話しをし、気が付けばあっと言う間に四時を過ぎていた。
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