第42話 本屋
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「お先に休憩いただきました」
二階に上がり、栄に声を掛けると、栄はにっこり微笑んだ。
「賄いはどうだった?」
「はい、とっても美味しかったです」
「シチュー?」
「はい」
「そうか。コウの作るシチューは旨いよ。コウはね、シチュー大好き人間だから、あいつが賄い担当の時は必ず出るんだ」
栄は嬉しそうに言った。
「そうなんですか。よかった。また食べられるなら、楽しみです。今日、あまりに美味しかったので、本当はおかわりしたかったんです」
美夜は本心からそう言ったのだが、栄は笑いながら「お世辞が上手いな」と言い、「コウが聞いたら喜ぶよ」と言った。
栄は厨房を覗くと、「コウ、もう美夜ちゃん下でも良い?」と訊いた。
光の返事を聞くと、栄は美夜に向き直った。
「じゃあ、美夜ちゃん。私服に着替えをしたら、下に行って雪さんと交代してあげて。あ、レジの打ち方、教えてもらってね。簡単だから大丈夫だと思うけど。値段が分からなかったら、レジ内に電話があるから、内線で電話して。内線番号は、電話に貼ってあるから」
「分かりました」
「じゃあ、頑張って」
「はい」
美夜は裏口を出ると、更衣室へ向かい素早く着替えをした。
暖簾を潜り、「お疲れ様です」と雪に声を掛けた。
雪は振り向くと「お疲れ様」と笑顔で答えた。
「栄さんが、休憩に出て下さいと言ってました。その前に、レジの打ち方だけ教えてもらって良いですか?」
「いいわよ。今まで、お金扱う仕事、したことある?」
「学生の頃、コンビニでバイトをしていました」
「なら、大丈夫ね。コンビニより簡単よ。ここのキーを選択して、金額打って、小計。ね、簡単でしょ?」
商品キーは「Visual」「Food」「Art」「Interior」の四つで、それぞれ色分けされていた。
「その本が何の種類か分からなかったら、スリップを確認してみて。あ、スリップって言うのはね……」
雪は本を一冊持ってくると、本の間に挟まれている短冊の紙を美夜に見せた。
短冊には、商品名と値段、十桁と十三桁数字の羅列が書かれており、その脇に、カラーの丸いシールが貼られていた。
「ここを見ればいいから。この本だと、赤だから、ヴィジュアルのキー。このキーを打って、金額を打つ。ちょっと練習してみようか」
そう言うと、雪は何冊か売り場から本を持ってきた。
三回ほど練習をすると、客が目の前に立っていた。
「いらっしゃいませ」と、二人は声を合わせて言うと、美夜がレジを打ち、雪が商品を袋に入れた。
客が出て行くと「今みたいな感じで」と雪が行った。
「あ、あと、スリップの抜き忘れには気をつけてね。この箱に入れて。あと、袋はここに二サイズあるけど、無くなったら倉庫にあるから。倉庫分かるわよね?」
「はい、昨日教わりました」
「うん。じゃあ、私行くけど、何かあったら内線で誰かに連絡して」
「はい。ありがとうございました」
雪は軽く手を挙げると「じゃあ、お願いね」と言い、暖簾を潜っていった。
雪が去った後、早速、客が本を購入しに来た。美夜は緊張のあまり、通常よりも大きな声で接客をした。
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