第34話 初日の朝
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翌朝、美夜は朝四時に起きた。
今日からLisで働けるのだと思うと、寝付けなかったのもあるが、六時半には家を出なくてはいけなかった。朝食の支度など考えると、二度寝するより、起きてしまった方がいいと思った。
昨日、面接が終わると同時に、契約を交わし、光が店舗内の案内をしながら、労働時間についてボソボソと話しをした。美夜は光の大きな歩幅に一所懸命ついて歩きながら、淡々と話す光の声に、必死に耳を傾けた。
「基本、製造の労働時間は朝六時から夜七時。ですが、中西さんは朝七時に来ていただければ結構です。残業はしない主義です。店舗の営業時間には終わらせるスタンスで。店舗は本屋が十時から五時。カフェが十時から七時。ラストオーダーが五半時。六時から七時まではテイクアウトのみの販売になります。ただし、水曜は定休日、日曜の営業時間は本屋もカフェも午後四時までです」
光は兄とは対照的に、職人気質で、口数も少ないうえ、低く小さな声で話しをし、笑うことも少なかった。
こんなに暗いのに、あんなに鮮やかで美味しいケーキを作るなんて、と美夜は不思議で堪らなかった。それでも、あの味を作っている人の元で働けるんだと思うと、嬉しかった。
美夜は着替えを済ませ、身支度を調えると、台所へ向かった。
昨日の残り物をアレンジしてスープにし、その他のおかずを作った。
五時過ぎに、美月が起きてきた。
美月は台所にいる美夜に「おはよ。早いね」と、目を擦りながら、ぼんやりとした声で言った。まだ、頭の中は夢の中を彷徨っているのかも知れない。
美夜は「おはよう」と返事をし、済まなそうな顔をした。
「ごめん、うるさかった?」
「ううん。大丈夫。美味しそうな匂いがしたから目が覚めた」
美月はにんまりと笑った。そして、リビングに行くとテレビをつけた。
五時半を過ぎると、美月は美夜と共に朝食を取った。だいぶ目が覚めてきた美月は、先ほどよりもはっきりした声で話しかけてきた。
「シフトとかどうなってるって言ってたっけ?」
「働くのは、朝七時から夜七時まで。朝は厨房で働いて、昼からは本屋でって契約になってる。でも、たまにホールも手伝うことになるかも」
「労働基準法、大幅にオーバーだけど、大丈夫なの?」
「そうなんだけど、私がどうしてもって、無理にお願いした感じの所もあるし。休みとかも色々考慮してくれるって言ってくれて。取りあえず、働かなきゃ分からないでしょ」
「八時間以降はサービス残業とかになるんじゃないの?」
「さあ、どうだろう。でも、前の会社だってそうだったし。あんまり気にしてない」
「そうか。そうだよね……。本当、美夜って……。偉いって言うか、何というか、すごいよね。私は無理だな」
美月はしみじみ言うと、スープを口に運んだ。美夜は苦笑するしかできなった。
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