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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
1 はじまり

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26/201

第25話 幸せを運ぶケーキ

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 席に戻ると、美月は難しい顔をしながらメニューを見はじめた。

 美夜はメニューをぼんやり見ながら、書店の青年を思い浮かべていた。

 この間は、本を欲しい理由を訊いてきたのに、今回はなぜ、何も訊かなかったのだろうか。自分が一緒だったからだろうか、とも思ったが、レジを打っている時点では、美夜が先週の客だとは分かっていなそうだった。では、なぜだろうか。そう思っていると、不意に美月が呟いた。


「さっきの綺麗なお兄さんさあ」


 美夜は顔を上げて美月を見る。

 美月はメニューを見ながら「よく私たちが双子って、気が付いたよね」と言い、顔を上げた。

 美夜は、あ、と思いながら「そうだね」と頷く。メニューを閉じると、店員を呼んだ。

 二人はそれぞれの注文をすると、話しを再開した。


「似てるね、とか、姉妹?は、あるけど、双子って言う人、そんなに居ないじゃん」


 好きな服装も、髪型も、話し方も似ていない二人は、顔もあまり似ていない。よく見れば似ているが、ぱっと見ただけで分かる人は、今まで居なかった。


「すごい観察力だよね。あんなに前髪長くて見づらそうなのに」


 美月は水を一口飲むと、店内を見回した。人の笑い声や話し声に紛れ、ピアノの旋律が聴こえる。美夜が良く聴いてるサティの曲だ、と思っていると、女性店員が紅茶とケーキを運んできた。


「お待たせしました。アッサムとダージリン、チーズケーキとイチゴのムースリーヌです。ごゆっくりどうぞ」


 運ばれたケーキは、前回のようにシャーベットは付いてはいなかったが、プレートには斜線状にソースがかかっており、シンプルな盛りつけがされていた。


「美味しそうだね」


 美月はにっこり微笑むと、「いただきます」と、言ってチーズケーキを口に運んだ。

 美夜もイチゴのムースを一口食べた。

 ふんわりした舌触り、あっと言う間に口の中から消えるムース。酸味のあるソースが、さっぱりとした後味で、清涼感がある。

 一口、口に運ぶだけで、幸せな気持ちになる。先ほどまで、東京に出てきたことを少し後悔していた自分が、嘘みたいにどこかに吹き飛んでいく。

 幸せそうに微笑み、ケーキを口に運ぶ美夜を見て、美月はそっと微笑み、ケーキを食べた。

 幸せな時間をじっくり堪能し、二人は席を立ちレジに向かった。店内は、いつの間にか奥様達以外、居なくなっていた。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


同時進行でミステリー系ヒューマンドラマ

『Memory lane 記憶の旅』更新中!

https://book1.adouzi.eu.org/n7278hv/



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― 新着の感想 ―
[一言] いちごムースリーヌ、美味しそうで…。読んでいて幸せを感じました…。 そして何が決め手で二人が双子だと分かったのか、確かに気になっていました。一体何を見て思ったのか…双子同士だからってわかると…
2022/09/28 21:38 退会済み
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