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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
1 はじまり

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23/201

第22話 不思議な本屋

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 二人は商店街を抜け、その先にある、白い建物に目を向けた。


「あそこ?」


 美月は建物眺めながら訊いてきた。

 美夜が返事をすると、「別世界な」と、囁くように言った。

 確かにその通りだった。一週間前に来たときも、同じような感覚があった。そこだけ光が差すように眩しく、別世界へ向かう入り口のように感じたのだ。

 美月は建物に吸い寄せられるように足を進めた。美夜が初めて来た時と同じ感覚を、美月も感じているようだ。

 美夜は美月の後に続くように、建物に向かって歩き出した。


「この前の本、ここで買ったの。見てみる?」


 美夜がそう言うと、美月は上の空で頷いた。

 書店内は、相変わらず客はおらず、レジカウンターにも人がいない。なんとも不用心だな、と思いながらも、本をゆっくり見ることが出来るのは嬉しかった。

 美月はアートコーナーを目敏く見つけると、中二階へ上がっていった。

 美夜は下の階で、子供部屋のインテリアの本を手に取り見ていた。

 暫くして、「いらっしゃいませ」と言う声が聞こえた。

 美夜がレジカウンターをちらりと見ると、先日、接客をしてくれた変わり者の美青年が立っていた。

 美青年は美夜を一瞥すると、小さく頭を下げた。顔の表情は、前回同様、長い前髪に隠れて見えないが、この間、帰り際に見せてくれた笑顔ではないことは確かだった。

 美夜は小さく会釈をすると、再び本に目を移す。

 暫くそうしていると、美月が一冊の本を手に持って美夜の隣に立った。


「美夜、見てよ。ゾーヴァの絵本、見つけた。ここ、変わってる本屋だね。インテリアとかアートの本しかないかと思ったら、探せば色々あるんだ。すごい、宝の山って感じ」


 美月は心なしか鼻息を荒くして言った。その声は、押さえているつもりだろうが、静かな店内に柔らかく響く。恐らく、青年の耳にも届いているはずだ。


「これ、買ってくる」


 美月は本を大事そうに抱えてレジに向かった。

 美夜はなぜか不安に思い、すぐに後を着いていく。


「これください」


 美月は青年に本を差し出した。

 青年は美月をちらりと見ると、レジに鍵を挿し、黙って値段を打ち込んだ。


「千二百六十円です」


 低い、静かな声が響いた。

 美月は鞄から財布と取り出すと、二千円をトレーの上に乗せた。青年は金額を打ち込み「七百四十円のお返し」と囁くように言い、釣り銭を渡した。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


同時進行でミステリー系ヒューマンドラマ

『Memory lane 記憶の旅』更新中!

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― 新着の感想 ―
[一言] 美月も本が好きなのがわかりますね。そしてその気持ちはちゃんとこだわりの強い店員さんにも伝わっているみたいですが、以前と違う表情なのはちょっと気になります。何か美月には美夜とは違った何かがある…
2022/09/26 19:48 退会済み
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