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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
10 最終章 光の或る方へ

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第198話 幸せな口付け

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 短い沈黙の後、美月が口を開いた。


「……奥さんと、重ねてみてたんじゃないの……」


 栄は顔を上げ、美月を見た。その顔は、涙を拭おうとせず、目を見開いていた。美月は人形のように感情のない顔で、真っ直ぐ栄を見つめる。


「私は、奥さんじゃない……」


 そう言うと、人形のような表情が微かに歪んだ。栄は椅子から立ち上がると、美月の頭を引き寄せ抱きしめた。


「重ねてない。美月は、美月だ」


 栄の声は、震えていなかった。力強く、優しかった。

 

 美月はその声を聞き、顔を歪め涙を流し、栄の腕にそっと触れた。


「あの時、ハルの声、聞いてなかったら、ダメだった……。美夜でもなくて、恭兄でもなくて、親でもない。ハルの声だったから……」


「うん」


 栄は抱きしめる腕に力が入った。あまり力を入れてはいけないと分かっていながらも、自然に力が入ってしまった。

 それでも、美月は痛がらず、栄の腕の服をぎゅっと掴んだ。


「死んじゃうのかなって、思った……。死にたくないって、もっとハルと話したいって、おもっ……」


「うん」


 栄は美月の頭にキスをした。


「これから、たくさん話をしよう」


「ケンカになるかも」


 美月は笑い泣きしながら言った。栄は小さく笑うと、「喧嘩も、たくさんしよう」と言った。


「ハル」


「ん?」


「ありがとう」


「うん」


「ハル」


「ん?」


「今度は、私がハルを助けるよ。ハルを暗闇から、明るい方へ、手を引いてあげる。いくらでも時間をかけて……」


 栄は美月から離れると、美月の頬に優しく触れる。美月は目を瞑り、その手を愛おしそうに自分の頬に押し当てた。


「愛してるよ、美月」


 美月はそっと目を開き、微笑んだ。優しい、女性らしい微笑み。


 栄はその微笑みに吸い寄せられるように口付けをした。

 優しく、温かい、幸せな口付けを。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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