第196話 茜色のキス
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美夜は、ベンチの上に乗った光の手に、そっと自分の手を乗せた。光は空に向けてい目を、美夜に向けた。
「好きって、難しいですね」
美夜は光の手を見つめて言った。その顔は、穏やかで、静かな表情だ。
「私、正直、好きって、どういう事なのか、よく分からなかったんです。でも、今なら分かる」
「うん」
「一緒にいて、素直になれて、安心できて。黙っていても、何時間でも一緒に居れる。……辛いとき、側にいてくれた。弱音はくと、励ましてくれた。さり気ない優しさが、自然すぎて……。すぐ近くにいたのに、恋に恋して、全然気がつかなかった。気がついたとき、目の前が晴れやかになった。私も、その人が辛かったり、何かに負けそうなとき、側にいて励ませる存在になりたいと思った。私が、その人を本当に必要だと思っているように、その人にも、私を必要として欲しいと思った」
「……」
美夜は光を正面から見つめた。
「コウさん。いつも、ありがとうございます」
そういうと、深く頭を下げた。
光は身体を起こし、無言のまま美夜をじっと見つめた。
顔を上げた美夜の顔は、少し高揚している。
「私、光さんが好きです」
美夜は、晴れやかな笑顔で言った。
光がずっと見たかった、あの笑顔だ。その場が一気に優しい空気に包まれる、柔らかい、花のような笑顔。
光は口角をくっと上げた。
その顔は、微笑みでは留まらず、満面な笑みになった。その場が、一瞬で明るさを増す、そんな笑顔だ。
光は美夜を引き寄せ、優しく抱きしめた。
「初めてだ」
「え?」
「初めて、ヒカルって呼んでくれた」
美夜は笑いながら光の背中に腕を回した。
「好きだよ、美夜」
優しい、温かい声。
美夜の身体に浸透するように、心の底から喜びが押し寄せる。
「……はじめて、美夜って呼んでくれた」
美夜は笑い声を上げながら、光に言い返した。
嬉しさで、目の前が翳んで見える。夕焼け空が滲んで、幻想的な風景が美夜の目に映っていた。
「返事が遅くなって、ごめんね?」
美夜は光の耳元にそっと囁いた。
光は身体を離すと、「うん、随分待ったよ」と言い、優しいく微笑みながら美夜の唇に親指で触れる。
美夜がそっと微笑み返すと、どちらからともなく唇を重ねた。
柔らかな甘いキスを交わしている時、空は完全な茜色に染まっていた。
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