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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
1 はじまり

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17/201

第16話 ひとり娘

いつも読んで頂き、ありがとうございます。


 栄が小さく鼻で笑っていると、「ただいまあ」と、可愛らしい声が店内に響いた。

 栄は一瞬で現在に引き戻される。


 カウンターから身を乗り出すと、「お帰り」と大声で応える。


「ただいまあ。買い出し、こんなにあるならハル君が行ってくれれば良かったのに。重い!」


 買い物袋を三つ腕にぶら下げた三十代後半の女性が、疲れ切った顔で店内に入ってきた。


「お帰りなさい。ご苦労様でした、雪さん。さ、冷たいアイスコーヒー、用意してお待ちしておりました」


 栄は笑いながらカウンター越しにアイスコーヒーを手渡した。

 雪と呼ばれた女性は、「ありがとう」と言って受け取ると、一気に飲み干す勢いで飲んだ。


「パパ、りりーには?りりーも、おてつだいしたよ」


 栄はカウンターに身を乗り出し、小さな女の子を見下ろした。瞬きをすると、音でも聞こえてきそうな大きな瞳が、真っ直ぐ栄を見つめている。


「もちろん、里々衣(りりい)の分もありますよ」


 そう言うと、栄は冷蔵庫から小さな瓶を取り出し、カウンターから出て、里々衣の前に屈む。


「はい、どうぞ」


 小瓶を里々衣に手渡すと、里々衣は満足げな顔で受け取り「ありがとう」と言い、席についてオレンジジュースを飲みはじめた。


「今日、保育園で何か言われませんでした?」


 栄は立ち上がりながら雪に訊ねると、雪は不思議そうな顔をし、首を振る。


「ううん、特に何も。何で?」


 雪は飲み終えたグラスをカウンターに置き、栄と一緒に買い出ししてきた荷物を厨房に運んだ。栄は冷蔵庫に食材を入れながら、声を抑え話しはじめた。


「この間、喧嘩したらしくて」


「喧嘩?」


「母親のことで、誰かに何か言われたようです」


「そう……」


 雪は眉間に皺を寄せ、「困ったわね」と言い、栄の背中を優しく叩いた。栄は困ったように微笑むと、すぐに目を見開き、「そうだ!」と、輝いた顔を見せた。


「今度は何?」


 雪は笑いながら栄の笑顔を見上げる。


「今日、ついさっきまで居たんですけどね、新しいお客さんが来たんですよ」


「新しいお客さんって……別に珍しくも何ともないじゃない」


 雪は苦笑しながら、次の言葉を促した。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


続きが気になる!という方は是非ブックマークや☆、評価、感想など今後の励みになりますので、残してもらえると喜びます!よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 雪さんとりりいちゃんは栄さんのパートナーと娘さんでしょうか。彼女たちがどう物語に絡んでいくか、とても 気になります。そして雪さんにはいったいどんな秘密があるのでしょうか。りりいちゃんが…
2022/09/20 21:53 退会済み
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