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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
8 あなたの声が聞きたい

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第162話 通り魔事件

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 三月に入り、テレビでは連日、嫌なニュースが流れた。


『……已然、犯人は捕まっておりません』


『被害者がこれ以上増える前に、早く捕まえて欲しいですね』


『現在、警察はこの通り魔の目撃情報を募集しております……』


 栄はテレビのチャンネルを変えた。しかし、どこも通り魔殺傷事件のニュースが流れており、テレビを消し腕を組んだ。


「今の事件ルートさ」


 一緒にテレビを見ていた光が、不意に口を開いた。


「このまま捕まらないと、この近辺に来そうだよね」


「え?」栄は怪訝そうに弟の顔を見る。


 光はソファから立ち上がると、紙とペンを持ってきて栄に説明した。


「犯人は、この路線を辿るように来てるんだよ。駅近辺での犯行がないという事は、車やバイクを使ってるんだろう。しかも、どういう訳か快足が止まる駅だけ。これは、あくまで俺の推理だけど、このまま捕まらなければ、次の次辺りにこの近辺に現れると思う」


 栄は光の言葉に頷いたが、いまいちピンと来ていな顔だ。光は、今度は道路地図を持って来ると、テーブルの上に広げた。

 事件のあった箇所を丸で囲っていく。


「ニュースで聞いた犯行現場と駅までの距離は、毎回半径二キロ以内の辺り」


 そう言うと、コンパスでも使ったかの様な綺麗な円を数カ所に描いていく。


「それで、俺たちが使う駅がここ」と言い、円を描いた。丁度、美夜達が住むアパート辺りまでが円で囲まれた。


「おい、おもいきりこの辺、ターゲットになるじゃないか」


「だから。このまま捕まらなければ、危険だって言ってるんじゃないか」


「マジかよ……」


 栄は深く息を吐きだす。胃の辺りが不快な物に掴まれるような感覚を持つ。


「まぁ、俺の考えが合っていれば、の話しだけどさ……」


「いや、お前の勘は、そこそこ当たるからなぁ……」


「中西を襲った奴も捕まってないし……。案外、同一人物かも知れないよね……」


 光は地図を睨み付ける様にじっと見る。地図上に犯人の棲家を見つけ出すかの様に、視線を滑らせている。


「捕まらない事で、エスカレートしてるって事か……」


「多分……」


 栄は額を両手で押さえ、ソファに背中を預けた。


「何だか最近、この辺、治安が悪くなってないか……」


「この辺だけじゃないよ。全国だ。日本も海外並みに十分危険な国になりつつあるんだ。いや、もうなってしまっているのか……」


 栄は「そうだな」と同意した。

 最近はニュースを見ようものなら、誰が殺された、誰が殺した、虐待がと、耳を塞ぎたくなるような事件が多すぎるぐらい起きている。誰かの不祥事がどうこうというニュースが薄らいで聞こえるほど、それぐらい殺人や自死のニュースが流れた。


 三月に入り、立て続けに起きている通り魔事件。どの事件も、若い女性が狙われていた。

 会社の帰り、部活の帰り、買い物帰り、全て人通りの少ない、死角になる場所で犯行が行われている。

 初めは小さな切り傷から始まり、犯行はどんどんエスカレートした。

 


 栄は百合の事を思い出した。



 暗い公園。

 森の様に木々に囲まれ、大粒の雨が降る。光の叫び声も、栄の泣き声も、全て雨の音に掻き消される。耳の奥で、雨の音が、今でも鳴り響く。



 栄は頭を軽く振った。光を見ると、険しい表情をしている。恐らく、光も百合の事件を思い出しているのかも知らない、と思った。すると、ふっと光の険しい表情が若干、解ける。


「俺の、思い込みなら良いけど」


 そう言うと、光はマグカップを持って、二階の自分の部屋へ去っていった。

 栄は光が描いた丸い円を、再びじっと見つめた。


「何も起きない事を願うしかない、か……」


 地図を畳むと、リビングの電気を消した。



*******



 栄達が推理をしてから三日後。


 近隣で、通り魔事件が起きた。


 美夜はテレビを見ながら、この近辺である事を怖く思っていた。

 最近の美夜は、雪に話しをした事で頭の中の混乱が、ほんの少し落ち着き、光とも普通に接する事が出来ていた。そのお陰か、色々な事に目を向ける事が出来はじめていた。

 雪に話すまでは、テレビを見ていても何も頭には入ってこなかった。それは、美月との会話でもそうだった。どこか上の空で、美月に注意された事もある。

 光は美夜に返事を急かす事もなく、むしろ、何もなかったかの様に美夜に接した。

 美夜は、現実から逃げるわけではなかったが、それでも、光が何も言わない事に甘え「このままで良いのではないだろうか」と思ったりもした。だが、光がどんな思いで自分に告白をしたのかを考えると、ちゃんと答えは出さなくてはいけないと思い、夜になると悶々と考え込んでいた。

 ふと時計に目をやる。

 時計の針は、十時半を指していた。


「美月、遅いなあ……」


 いつもなら遅くても十時過ぎには家に着いていたが、今日はまだ帰っていない。


 突然、スマホの着信音が鳴った。美月かと思い、画面をちゃんと見もせず電話に出ると、電話主は美月の職場の人間からだった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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