第158話 戸惑い
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美月は嬉しそうに笑みを浮かべ「ついに言ったか!」と大きく一つ手を叩いた。
美夜は素早く顔を上げて美月を見た。
「……知ってたの?」
美月は「まあ、何となくだけど」と苦笑いした。
「だってさ、美夜。考えてもみなよ。いくら同じ職場の人だからって、毎日美夜の様子見に来る?そりゃ、私もちょっとお願いはしたけどさ……。でも、好きでもなかったら、そんな事言われてもって、無視するし。いくら優しくても、興味がなければ続かないよ」
美月にそう言われ、美夜は俯いた。
自分の事でいっぱいで、そこまでよく考えていなかった。言われてみれば、本当にその通りだ。考えれば考えるほど、色々思い当たる点が沢山出てきた。
それらを思い出すだけで、なぜ気が付かなかったのかという自己嫌悪と恥ずかしさで、身体中が熱く、頭も朦朧として熱を持ってきた。
「だ、だめ。今日はもう、寝ます……」
美夜はふらつきながら立ち上がると、部屋へ入っていった。美月は心配そうに「うん、おやすみ」と言い、小さく息を吐いた。
恋愛については、どちらかと言うと、昔から鈍感だった美夜は、告白される度、毎回あの調子で帰ってきた。ただ、今回一つだけ違う事があった。
美夜は「友達」として思っていたら、その旨をちゃんと伝え、謝って帰ってきていた。そして、悪い事をしたと、落ち込むのがパターンだった。その逆に、自分も好きだったら、その場でちゃんと返事をし、夢心地で帰って来た。しかし、今回はどちらの答えも出さず、帰ってきた。
美月は、美夜の一歩になるかも知れないと、安心すると同時に、光に感謝をした。
「美夜を見つけてくれて、ありがとう。シェフ」
美月は腕を伸ばし、身体を反らすと、大の字になって寝転がった。
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翌朝、美夜は昨日の延長で、相変わらず機械仕掛けのように動いていた。
「じゃあ、美月。先に行くね」
「うん。気をつけてね」
「うん。行ってきます」
美夜は型に嵌めたような笑顔を見せた。美月はその笑顔を見て頬を引き攣らせる。
事件以来、美夜の笑顔は「微笑」止まりだった。それが、歯を見せて笑ったものの、あの堅さは、双子の美月でも流石に退いた。
「大丈夫だろうか、あれは」
美月は大きな溜め息を吐き出し、パンをかじった。
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厨房の入り口に立つと、美夜は光の後ろ姿を見て、身体を硬直させた。
「おはようございます」
いつもよりも小さな声で挨拶をすると、手を洗った。
光は水の流れる音に気づき、振り向いた。
「あ、おはよ」
美夜は光に顔を向けづに、俯いたまま「おはようございます」と言い、予定表を確認し、自分の仕事を開始した。
光は妙に固くなっている美夜を見て、困ったように眉を掻くと、何も言わずに自分の仕事を再開した。
手を動かし、菓子作りに集中していると、いつの間にか光と普通に話しをしていた。光も以前と何ら態度を変えず、美夜に的確な指示を与え、スムーズに仕事をこなしていたのだった。
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