第152話 チョコレート
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光と共に作ったチョコレート菓子は、次から次へと売れていった。
「コウ、六個入りがそろそろ切れる」
栄が厨房から顔を出し、在庫を訊いてきた。
「中西、それ袋詰め終わったら、六個入りの箱詰めお願い」
「はい」
六個入りのチョコレート菓子は、ミルクチョコで作ったクッキー入りのトリュフ、ホワイトチョコで作ったシンプルなトリュフ、ダークチョコを絡ませたオランジェット、ヘーゼルナッツのペーストが入ったプラリネ、生チョコの美味しさが一番分かるパヴェ、そして、ホワイトチョコをピンクに着色して、砕いたドライストロベリーを入れて作った、ハート形チョコレートが入っている。
ハート型のチョコレートが目を惹くのか、来る客は挙って六個入りのチョコレートを買っていく。
その他にも、焼き菓子やマカロンも通常よりも売れ行きがよく、レジカウンター脇に置いた籠は、すぐに空っぽになった。
「なんだろう……中西が帰ってきた途端、すごく忙しい気がする……」
光は手際よくチョコレートを型に流しながら呟くように言う。
美夜も久しぶりに来て働き、動きが鈍っていることに自身で気が付いていたため、申し訳ない気持ちになった。
「ごめんなさい、私、足引っ張ってますね」
六個入りの箱にチョコレート菓子を詰めながら謝ると、光は慌てて「違う、違う」と訂正した。
「そうじゃなくて。客が一斉に来たって言う意味。去年まで、こんなじゃなかったんだ……。昨日までだって、ここまですごくなかった。なんだか、中西の復帰に合わせて、客が押し寄せてる感じ。やっぱり、中西は雪さんの言う通り、招き猫体質なんだな」
そう言うと、光は小さく笑い声を上げた。
「たまたまですよ。バレンタイン近いですし」
美夜は手を休めずに答えた。箱詰めを終えた物をばんじゅうに乗せると、売り場に持って行った。
喫茶はいつの間にか臨時休業のプレートが立っており、栄と雪は忙しなくカウンター内を動いている。
売り場のテイクアウトスペースは、女性客で賑わっていた。
「雪さん、六個入り出来ました」
美夜が声をかけると、雪は顔を向けずに「ありがとう」と慌ただしく返事をし、客の名前を呼んだ。
美夜は、ばんじゅうをカウンター下の作業台に置き、「ここに置きますから、気をつけてくださいね」と声をかけ、厨房へ引き返す。
「コウさん、売り場が大変なことになってます。私、販売を手伝った方が良いんじゃないでしょうか?」
美夜は手を洗いながら光に売り場の現状報告をしたが、光はチョコレート菓子を相変わらず手を休める事なく作り続ける。
「いや、あっちはあの二人で大丈夫だよ。中西はこっち手伝ってて。でないと、間に合わない」
「分かりました」
「じゃあ早速、この作業引き継いでもらっていい?俺は焼き菓子をやるから」
「はい!」
美夜は直ぐさま光のアシストをした。
気が付けば、いつの間にか休憩時間は過ぎ、美夜の帰る時間もとっくに過ぎていた。
「中西、ごめんな。初日からこんなで。これじゃあ、土日と変わらないな。今日は送るから、もう少し働けるかな?」
「はい、大丈夫です」
「無理はしなくて良いから」
「はい」
二人は昼休憩を取ることも出来ず、時々焼き菓子の切れ端を食べながら、作業を続けた。
※ばんじゅう……ケーキ屋さんや和菓子屋さんなどが使う、出来上がった商品入れる長方形のケースのこと。
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