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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
7 日常をきみと

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第148話 スペシャルケーキプレート

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 商店街を通ったときには、もう午後二時を過ぎていた。朝十時から歩き回った美夜は、久しぶりに一時間以上を歩いたせいか、全身がだるく、疲れはじめた。

 二人は手を繋いでLisへ向かった。Lisに着くと、本屋をドア越しに覗いた。店内には、二人の客がそれぞれ本を探しており、カウンターには、背の低いスポーティーな格好をした青年が立っていた。短い髪の毛が、妙に新鮮に感じたのは、Lisの男性陣が長髪だからだろうかと、美夜は思った。

 二階のカフェへ上がり、ドアを開けた。


「いらっしゃいませ」と、栄と雪の声が響く。


 二人はドアの前に立つ美夜を見て、瞬時に顔を輝かせた。

 雪がすかさず美夜に近づくと、抱きついても良いかと聞き、美夜が小さく頷くと、雪は泣きそうな顔でゆっくりと美夜に抱きついた。その腕は力強く、温かかった。

 栄は厨房へ入り、光を呼び出した。

 慌てた様子で厨房から出てくる光に、美夜は一瞬驚きの表情をしたが、すぐに笑みを浮かべた。すると、光は美夜が以前、見惚れた輝く笑顔を見せ、美夜に近づいて来た。

 雪は美夜から離れ、目尻をそっと拭う。


「良く来たね」


 光が美夜の頭を優しく撫でると、美夜は、はにかむように微笑み、小さく頷いた。


「コウさんのお陰です。本当に、ありがとうございます」


 光は柔らかい笑みを湛え美夜の手を取り、店内の中に入るよう促した。

 喫茶には数名の客が静かにお茶の時間を楽しんでいる。

 美夜と美月は、初めて二人で来たときに座った席に腰を下ろした。何も変わっていない店内は、美夜を優しく迎入れる。

 しばらくすると、栄が水を持ってやって来た。


「今、コウが二人にスペシャルケーキプレートを作ってるから、暫く待っててね。お茶は紅茶でいいかな?セイロンでいいかな?」


「はい。それでお願いします」


「了解。じゃあ、ちょっと待っててね」


 店内にはドビュッシーのベルガマスク組曲「月の光」が流れ出した。

 美夜が大好きな曲だ。

 月の光を紡いで出来たようなこの曲を聴いていると、水の中に浸かって、ゆったりと浮かんでいるような気分になり、身体の疲れが癒える気がするのだ。


「この曲、美夜ちゃん好きだったでしょう」


 いつの間にか栄がテーブルの前に来ていた。


「お帰り。美夜ちゃん」


 栄はそう言うと、テーブルに紅茶を置く。

 次いで、栄の後ろに立っていた光が、二人の前にケーキをのせたプレートを置いた。


 プレートにはケーキが三種類、グラスに入ったシャーベットが一種類乗っている。


 チョコレートソースの上に淡いピンクと白のマーブル模様のイチゴのババロアが、そしてオレンジソースの上には、ドーム型をしたブリオッシュとメレンゲで作った真っ白なポロネーズ、粉砂糖の上に置かれたチーズケーキ。

 真ん中にあるグラスの中には、ゆず味のシャーベットが入っていた。


「すごい、こんなに?」


 美夜は頬を染めてプレートに見入った。


「食べられるでしょ?」


 光は笑いながら言うと、美夜は光を見上げ、「ありがとう」と微笑んだ。

 光は小さく顎を引き、厨房へ戻っていった。


 二人は早速、ケーキを口に運んだ。

 美夜はイチゴのババロアから、美月は白いポロネーズを一口食べた。


「美味しい!」


 同時に声を上げ、二人は顔を見合わせ微笑んだ。


「私、ここのケーキなら、何でも食べられることが分かったよ」


 本来、甘いものが苦手なはずだった美月が、そう言いながら美味しそうにケーキを食べ進めた。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 「私、ここのケーキなら、何でも食べられることが分かったよ」 この言葉、ただ美味しかったというだけじゃないでしょうね。 あの暴力から生還し、まだギクシャクはしても動けるようになった喜びや、久…
2023/01/02 22:51 退会済み
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