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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
7 日常をきみと

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148/201

第147話 一歩ずつ

明けましておめでとうございます。

年末3日間の更新マラソン、お付き合い頂き、ありがとうございました。何の予告もなく始まったので、驚かれたと思います。

今日から通常更新です。笑


本年もよろしくお願いします! 


 一月末から、東京では珍しく、時々ぱらぱらと降っていた雪が、二月に入った途端、大雪に変わった。

 その降り方は極端で、全く降らない場所と電車が止まるほど降る場所と別れた。


 幸い、美月の通勤範囲は自転車で行ける距離で、もちろん、歩きでも通える範囲だ。

 朝、目を覚ますと、あまりの寒さに美月は布団を身体に巻き付け、窓の外を見た。

 外は一面真っ白で、全てが同じ色をしていた。

 空からは、止まり方を知らないのか、はたまた壊れたおもちゃの如く、薄いグレーがかった雲から、砂糖菓子のように白くふわふわした雪が降り続いていた。

 勇気を振り絞り、服に着替え、部屋を出る。

 キッチンから美味しそうな香りがしてきた。

 美月はリビングへ行くと、テーブルの上に用意されている朝食を見た。

 日本の朝を感じさせる、和食。

 香ばしく焼けている焼き魚、綺麗に巻かれ、ふんわりとした厚焼き卵、山芋の浅漬け、筑前煮が並んでいる。


「おはよう、美月。今、お味噌汁出来るから」


 キッチンに立っていた美夜が、美月に気が付き声をかけた。美夜は見るからにだいぶ落ち着き、夜もちゃんと眠れているようだった。


「おはよう、美夜。ありがとう。今、顔洗ってくる」


 美月が再びリビングへ戻ると、白いご飯と豆腐とネギの味噌汁が並んでいた。


「食べよう」


 美夜の言葉に美月は頷き、ラグの上に座る。


「すごい雪だけど、仕事休めないの?」


 美夜は曇った窓硝子を見ながら言った。


「うん。多分、他の人が来られないだろうから」


「そう。気をつけてね。滑って怪我しないように」


「うん。ありがとう」


 美月はご飯を食べ終わると、すぐに出掛ける準備をした。

 玄関で長靴を出している美月に、美夜が声をかけた。振り向くと、美夜は「今度、Lisに行こうと思う」と、小さな声で言った。


「美夜……」


 美月は不安そうな顔で美夜を見つめだが、美夜は小さく微笑み「大丈夫」と視線を下に降ろした。


「だいぶ、落ち着いてきたし。そろそろ、私も働かなきゃ」


 そう言った美夜の顔は、自分に「大丈夫」と言い聞かせるような、少し硬い表情だった。

 美月はその意志を尊重することにした。

「分かった」と頷き、長靴を履いて「じゃあ、行ってきます」と玄関を出て行った。


「いってらっしゃい」


 美夜の見送る優しい声が、美夜の背中に当たった。

   

*******


 美夜がLisへ行くと言ってから三日後。

 大雪だった事が、嘘のように跡形もなく消えていた。一日中、日の当たらない場所には、少し残ってはいたが、それも今日、明日中には消えるだろうという量だ。


 美夜は美月と共に、バス停へ向かった。

 事件現場近くに来ると、美夜は美月の手を取った。美月は美夜の微かに震える冷たい手を、しっかりと握り、その場を足早に通った。

 事件現場の空き地は、たった数ヶ月で家が建っていた。

 今では、あの薄暗さはどこにもなく、全く違う風景に見え、かえって美夜の精神的負担が減り、幾分歩きやすくなっていた。

 二人はLisへ行く前に、買い物をしてから行く事にした。

 美夜にとって、事件以来、初めての遠出だ。

 美月は不安で、心配で仕方なかったが、通勤時間を過ぎた車内は人も少なく、美夜も落ち着いている。

 美夜は美月が以前、誕生日にくれた万華鏡を買った店に連れて行って欲しいと言った。

 なぜ、急にそんな事を言い出したのか、美月には分からなかったが、それでも美夜が外へ出ようと決心したのだから、その決心を無駄にしないためにも、連れて行く事にした。何かあった場合、自分が一緒だから絶対に大丈夫だと、何度も自分の心に言い聞かせて。

 美夜は自分と揃いの万華鏡を一つ買うと、贈り物用に包装してもらった。

 そして、美月に栄の誕生日を知っているか訊ねた。


「確か、前にちょっと話した事があったっけ……いつだったかな。確か十月の筈だよ」 


「十月か……だいぶ過ぎちゃったね。プレゼントのお返し、しなきゃいけないし。美月、栄さんには何が良いと思う?」


 美月は腕を組んで考え込んだ。栄が好きだと言っていた物を、記憶の中から探し出す。


「ああ、そう言えば、前に財布が欲しいって言ってた。でも、まだ使えるから買うのもなあって言ってたっけ」


「じゃあ、財布を探そうよ」


「うん」


 二人は館内の数店舗にポイントを絞り、さくさくと探していった。

 どこの物もぱっとせず、諦めかけているときだった。最後に入った店のディスプレイに、栄に似合いそうな財布があった。

 二人はそれを購入すると、その足でLisへ向かった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 少しずつ回復しつつあるのが嬉しいです…。もう襲われなければいいのですが…。
2023/01/01 14:02 退会済み
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