第145話 光の笑顔
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世の中がクリスマスの飾りで賑わいだした頃、光は美夜を連れて、以前、美月と来た住宅街の中にある小さな公園へやって来ていた。
コートを着ていても、じっとしていると、芯から冷えてくる気がした。
美夜が寒さで微かに震えていたので、光は急いで温かい飲み物を買って手渡した。美夜は光が買ってきたホットティーのペットボトルで両手を温め、光は光で、コートから手が出せないでいた。
「寒いね。ごめん、喫茶店とかに行けば良かったかな」
光は僅かに鼻を啜り、「寒い」と口の中で呟いた。
「確かに、寒いですけど。でも、気持ちが良いです。喫茶店より、ここの方が、私は好き」
美夜は葉が落ちた木の枝を見上げていた。
冬のピンと張った空気、夏の青さとは違う、冷たさを感じる空の色が、葉の無い枝によく似合っている。
美夜は、緑の生い茂り、木漏れ日が差す光景も好きだったが、こうした葉の無い枝を見るのも好きだった。
光も美夜と同じように、頭上に広がる枝を見ていた。まるで、木の血管を見ているようだと思った。生きている事、命の熱さを感じる。
上を見上げていた光が、不意に謝った。
美夜は何事かと思って光に顔を向けた。
「うちも、クリスマスの準備やらで忙しくなってきたんだ。ケーキの予約も、想像より早い時期から集まりだしてて。当日のこととか考えると、結構な数になるかも知れない。それで、今みたいに毎日は来れないと思うんだ」
美夜は首を横に振り、「気にしないで下さい」と言った。
「今までだって、大変だったのにこうして来ていただいて……。本当に何てお礼を言えば良いのか……。感謝してます。ありがとうございます。……クリスマス、お手伝いできたら良いんですけど……」
美夜は申し訳なさそうに下を向いた。
「気にすることない。今は、少しでも中西がこうして外に出ることが、大きな進歩で、仕事はもっと元気になってから手伝ってくれたらいい」
「コウさん……」
「それに、俺は中西以外とは、製造の仕事をしたいと思ってない。それだけ、信頼してるんだよ、中西を。だから、今はゆっくり休んで、また手伝ってくれ」
いつになく熱く語る光を、美夜は泣きそうな表情で見つめていたが、光のその気持ちの温かさに、胸の内側が熱を持つ。
「ごめんなさい……ありがとうございます」
光は僅かに眉を顰めたが、すぐに温かい笑みを浮かべ「毎週水曜には来るよ」と言った。
その言葉に美夜は顔を上げ、光の顔を見た。
春の太陽のように温かく柔らかな、優しい輝きを持った光の笑顔。美夜は、光の笑顔に一瞬見惚れてたが、すぐに眩しそうに目を細め、口角をあげ、頷いた。
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