第139話 胸騒ぎ
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美月はウェブサイトで浅草について調べていた。
仕事が早く上がった美月は、今日、美夜が行っている浅草が、今朝からずっと気になっていた。今度、美夜に案内してもらおうと思いながら、壁時計に目を向ける。
「遅いなあ、美夜……」
パソコンの電源を切り、スマホを手に取った。
美夜に夕飯をどうするか聞こうと思ったのだ。だが、美夜は電話に出なかった。
美月は小首を傾げ、スマホ画面を見つめていると、ふと、背筋が凍るような寒気が美月を襲った。身体が震え、口の中が妙に乾く。激しい胸騒ぎに襲われ、美夜の泣き顔が脳裏に浮かんだ。
「美夜……?」
小さく名前を呟くと、美夜の声が聞こえた気がした。必死に美月の名を呼ぶ声が、美月の頭の中に響く。
美月は、はっと顔を玄関に向けた。
「美夜!」
美月は家を飛び出した。
*******
光は厨房の時計に目をやった。
既に七時を過ぎているにも拘わらず、美夜が来ない。
今まで無断欠勤はおろか、遅刻すらしたことのない美夜が、何の連絡も無しに仕事に来ないのは、美夜らしくないと思った。
光は七時半を過ぎ、店舗内にある電話から、美夜のスマホに電話を掛けた。
呼び出し音が鳴り続けるだけで、出る気配もない。やっと出たと思うと、留守番電話に切り替わる。
光は短く息をつくと、電話を切り厨房へ戻った。
開店三十分前に栄と雪が出社してきた。
二人は裏口のドアを開けると、賑やかに入ってきた。
「でも、本当に大した怪我じゃなくて良かったわよ」
雪の安心しきった大きな声が店内に響く。
「雪さんがあんまりにも大慌てだから、俺もものすごく動揺しちゃって。病院着いたら頭に絆創膏貼った里々衣見て、本当泣き崩れちゃって。あれはちょっと恥ずかしかったなあ」
栄は昨日の情景を思い出し、苦笑した。
「でも、大事なくて本当、良かったですよ」
「本当ねえ」
「美夜ちゃんには迷惑掛けちゃったなあ」と栄が言うと
「その美夜ちゃんが、無断欠勤なんだけど」
と、後ろから声がした。振り向くと、微かに眉間に皺を寄せ、不機嫌そうな顔をした光が厨房の入り口に立っている。
「美夜ちゃん、来てないの?」
「うん。何回か電話したけど、留守電になってる」
「どうしたんだろう……。メールは?」
「一緒」
栄は黙り込むと、眉を寄せて考え込んだ。
「何か、あったのかしら……」
雪が不安げに呟く。
三人が黙り込むと、しんと静まり返った店内が、いっそう静かに感じた。電気のじぃっという音が、いつもより大きく聞こえる。
光は妙な胸騒ぎに、気持ちが落ち着かないでいた。
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