第12話 癒しの空間
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
美夜は店内に流れる音楽を聴きながら、ケーキを口にすると、目を見開いた。タケさんの言うとおり、今までのチーズケーキは何だったのかと思うほど、口溶けが良く、ふわふわで、甘さ控えめのチーズケーキだ。スフレと似てはいるが、スフレよりも存在感のある滑らかな舌触りと濃厚さ。口の中で解けていく様に消える。焼き色も、きつね色で美しく輝いている。嫌味のないチーズの後味。下のクッキー生地も絶妙な塩味で全体のバランスを程よく保っている。一体、何のチーズを使っているのかと、美夜は味わいながらも、真剣な顔つきで食べ進めた。
食べすすめながらも、美夜は、これなら甘い物が苦手な美月も食べられるかも、と、双子姉を思う。
周りにあったソースは、グレープフルーツのソースで、少し付けて食べてみると、繊細なチーズケーキの甘味と、爽やかな酸味が良く合っている。
タケさんはさっさと食べ終えると、ガタガタと騒がしく音を立てて立ち上がる。
「じゃあ、ハルちゃん、お会計ここね。また来るわ」
そう言うと、美夜に向かって「これからも、この店をよろしく!」と手を振り、にやりと口角を上げた。美夜も釣られて手を軽く振ると、タケさんは人のいい笑顔で去っていった。
ギャルソンは笑いながらタケさんの背中に向かって「ありがとうございました」と声を掛け、美夜を振り向く。美夜がギャルソンに笑いかけると、彼は苦笑しながら「お騒がせいたしました」と会釈をし、カウンターの奥へ戻っていった。
美夜はギャルソンの後ろ姿を見送り、再びケーキに舌鼓を打つ。サービスに添えられたシャーベットはヨーグルト風味で、さっぱりとした後味が、ほんのりと残るチーズを連れ去り、口の中を爽やかにした。
ケーキを食べ終え、紅茶を飲みながら店内の飾りを眺め、小さく息を吐く。
全てブラウン色の木のテーブルと椅子で統一され、壁には地中海の風景と思われる写真がいくつか飾られている。この店の雰囲気によく似た建物の写真。居心地の良い、ゆったりした空気が流れている店だ。初めて来たのに不思議な程、妙に落ち着くと、美夜は感じていた。東京に来て、初めて好きな場所が出来た気がして、今日は色々あったけど良い日だったと思いながら、小さく微笑む。
店の空間に満足した美夜は、伝票を持ってレジへ向かった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
続きが気になる!という方は是非ブックマークや☆、評価、感想など今後の励みになりますので、残してもらえると喜びます!よろしくお願いします!




