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【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
4 それぞれの思い

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123/201

第122話 双子の思い(2)

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 恭は急いで綺麗なタオルを取り、美月の頬に当てる。

 美月はタオルを手に取ると、顔を伏せ、声を殺して泣いた。


 恭は美月の背中を宥めるように優しく撫で、静かに、諭すように話を始めた。


「俺の目には、お前は十分、美夜の支えになってると思うぞ。どちらかと言えば内向的な美夜が、東京へ行って本当にやっていけるのかと思った。でも、俺や母さん達の心配をよそに、しっかりやってる。それは、お前が一緒にいたからだって俺は思う。お前がいつも側にいて、その阿呆みたいな明るい笑い声振りまいて、いつでも前向きで、美夜が立ち止まると、半ば強引にでも引き上げる。美夜にとって、何よりも大きな存在、大きな力になってると思うぞ?」


 恭は美月に、言い聞かせるようにいった。


「阿呆みたいな笑い声かな?」


「おお、アホっぽいぞ。俺は好きだけどな。お前の良いところだ」


「ひどい、アホっぽいのが良いのお?」


 美月はタオルで顔を埋めながら、泣き笑いの声を出した。

 恭はにっと口角をあげると、「ああ、俺も美夜も、母さんも父さんも、みんなが大好きな笑い声だよ」と美月の短い髪の毛をぐしゃぐしゃに撫でる。


「何やってるのお?」


 美夜が日に焼けて赤い顔をして近づいてきた。帽子を被って、日焼け止めも散々塗っていたのに、何の意味もなしていないぐらい、顔が赤くなっている。

 恭はその顔を見て「美夜、お前、猿みたい」と大笑いをした。  

 美月は顔を上げて美夜を見ると、「本当だ、すごい真っ赤だ!」と笑った。

 美夜は「そんな!」と慌てて帽子を深く被った。

「今更、遅いだろ」と恭はいい、美夜に冷えたジュースを渡した。

 美夜は礼を言いジュースを受け取ると、美月の隣りに腰を下ろした。


「何かいいの拾えた?」


 美月は口元にタオルを当てながら訊く。その声に、美夜は素早く美月に顔を向けると、「どうしたの?泣いてるの?」と眉を顰めて訊き返す。


「気分が悪くなったんだと」と恭が答えると、美夜は目を丸くした。


「だから言ったじゃない。何でもっと呼んでくれなかったの?すぐ帰ろう」


「ううん、大丈夫だよ。落ち着いたから。それより、里々衣にお土産拾わないと」


 そう言うと、美月は立ち上がって浜辺に走っていった。


「美月、本当に大丈夫なのかな?最近、ちょっとおかしかったんだよね……」


 美夜は恭に顔を向けると「お兄ちゃん、何か聞いてない?」と言ってきた。

 恭は「いや、別に何も」と惚けると、美夜はどこか納得が行かない様子で「そう」と呟いた。


「ところで、りりーって、誰だ?」


 恭は、浜辺で貝を拾っている美月を見ながら訊ねる。


「ああ、私が働いてる店のオーナーのお子さんなの。すっごい気難しい子なんだけど、美月はたった五分で仲良くなったの。今ではまるで姉妹。いや、親子?とにかく、そのぐらい仲が良いの」


「へえ。……美月はすぐに友達出来るからなあ。すごいよな」


 恭は普通に感心した。美夜は「本当に」と同意し、美月のすごさを自分の自慢話しでもするかのように話し始めた。


「東京出てすぐ、美月、あんまり元気がなかったの。職場で上手くいってないんだってすぐ気づいたんだけど、あの子、一人でちゃんと乗り越えた。もし、それが私だったら、すぐに逃げ出していたかも知れない。でも、持ち前の明るさで、乗り越えてた。絵もすごく上手いでしょ。うちのオーナーが気に入って、何点か買わせてくれないかって言ってくれたり。それで、店に幾つか飾ったの。そしたら、お客様にも評判で、この間、一点売れたんだよ」


 恭は嬉しそうに話す美夜を横目で見て、自分でも嬉しくなってきたことに気が付いた。

 話しを聞いている間、眩しさで目を凝らしていると思っていた自分の目は、嬉しさで目を細め、頬が上がっていたのだと感じた。


「私ね、美月が一緒に東京に来てくれて、本当に嬉しかったんだ。ちょっと、落ち込んだことがあって、どうしようもなかった事があったんだけどね、美月が笑ってくれると、ふっと力が抜ける感じで、緊張して凝り固まってた背中が、一気に楽になるの。最初は、自分の生き方に巻き込んじゃってる気がして、申し訳なかったけど、今は感謝しきり。巻き込んでごめんね、じゃなくて、これからも一緒にいて!って感じ」


 そう言うと、美夜は自分の言葉に困ったような顔で笑った。

 恭は小さく微笑むと「やっぱり双子だな」と息を吐き出しながら言った。


「え?」


「いや、何でもない。それ、美月にちゃんと言ってやったら?」


「え?どれのこと?」


 美夜は首を傾げて恭を見た。


「一緒にいてくれて感謝してるって。これからも、一緒にいてねってさ。美月のやつ、自分は美夜に甘えてばっかだって、言ってたからさ。あたしも美月に甘えてるのよって、教えてやれ」


 そう言うと、恭は立ち上がり「最後にもう一暴れしてくるか」と、浜辺に走っていった。

 恭は浜辺に着くと、美月に足で海水をかけ、美月がそれに笑いながら怒り、むきになって足をばたつかせ、恭に向かって水を浴びせた。

 美夜は笑いながら二人の様子を眺め、恭の言葉を頭の中で復唱した。


「甘えてばっかり……かあ。それは私も同じなのに……」


 美夜は短く息を吐き出すと、大きな口を開けて笑ってる美月を、眩しそうに目を細めながら見つめたのだった。


 




最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 甘えている、とか、信頼しているよ、って、実は劣等感を抱えている相手から言われるとすごい救いになるんですよね。自分もその人に役立っているって思えて。 美夜、ぜひ言ってあげてほしいなぁ…劣等感が…
2022/12/30 18:29 退会済み
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