第121話 双子の思い
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朝食を済ませ、家族全員で墓参りに行った。
前々日に、両親が墓掃除をしてくれていたため、墓の周りはとても綺麗になっている。
花の水を取り替え、線香を供え、手を合わせる。
じりじりと暑い日差しが首筋を焼き付け、ただ、じっとしているだけでも、汗が噴き出てくる暑さだ。
墓参りを終えると、車の後部座席で美月が「海へ行きたい」と騒ぎ出した。
「でも、美月は具合悪いんじゃない。今日は止めておこうよ」
美夜は心配そうに声をかける。すると美月は、「もう、本当に大丈夫だって」と応え、車を運転する恭の後ろ姿に向かって声を上げる。
「ご飯食べて元気になったから。ねえ、恭兄、お願い、海に連れてってよ」
「そうだなぁ。じゃあ、一旦家に帰ってから行こう。色々準備してからだ」
恭は前を向いて運転しながら答えた。その返事に、美月は「やったあ」と大きな声を上げた。
家に帰り、濡れても構わない服に着替え、替えのズボンや冷えた飲み物、タオルを数枚持ち、恭の車に乗り込んだ。
美夜と美月は、後部座席ではしゃぎながら、日焼け止めクリームをこれでもかと言うほど塗りたくる。
海に着くと、海水浴場から少し離れた場所で裸足になり、三人は暑い砂浜の上を騒ぎながら走り、海に近寄った。
水温は少し冷たいぐらいで、かえって気持ちが良い。
美月は恭と水を掛け合い、大騒ぎをし、美夜は波打ち際で瑪瑙やシーグラスが無いか下を向いていた。時々、大きな波が来て、それに気づかないで下を向いていると、思った以上に驚き、美夜は盛大に服を濡らした。
美月は騒ぐだけ騒ぐと、恭と共に一度砂浜に戻り、ジュースを飲んだ。
「美夜は子供の頃から、貝だの石だの探すのが好きだよな」
恭は、美夜が下を向いて一生懸命に何かを探してる様子を見ながら、しみじみと言った。
「お前とは正反対で。どうした物かと、子供の頃は本当に困ったよ」
小さく苦笑すると、美月を見やる。
「東京の暮らしは慣れたのか?」
美月は美夜の姿を目で追いかけながら「うん」と小さく答えた。
「ねえ、恭兄」
「ん?」
「私さ、美夜とは双子だから、美夜のことなら誰よりも、何でも知ってるんだって思ってたんだ」
恭は、隣に座る妹の顔を目の端で見つめる。
「でも実際は、なあんにも知らないんだなあって。美夜はさ、私のこと、沢山知っててくれてるんだ。東京出て、すぐの頃ね、私、職場に馴染めなくてさ。ちょっと落ち込んだりしてたんだ。でも、美夜も大変な時期だったから、私も愚痴なんか言ってられないなって思ったんだ。でも、美夜は気が付いてた。すごく心配しててくれて、私が元気になったとき、すごく嬉しそうに喜んでくれたんだ」
恭は小さく微笑み「あいつの特技だもんな」と頷く。
「あいつは、ぼんやりしてるようで、誰よりも周りを見て、気を遣ってる。それは、子供の頃からずっとそうだった。お前が、母さんと上手く接することが出来なくて、俺がお前と遊んでただろ。俺、あいつに、一緒に遊ぶぞって誘ったときな、自分はいいって言い張ったんだ。お兄ちゃんと遊んでる美月の笑った顔が、一番美月らしくて好きだから、邪魔したくないの、だって。最初、意味が分からなくてさ。それから、余計あいつとどう接したらいいか分からなくなってね。単純なお前の方が扱いやすくて、哲学的なあいつにはついて行けなくて、苦手だった。流石に、今は苦手でも何でもないけど。でも、今思えば、あれはあいつなりの気遣いだったのかも知れないな」
美月は美夜を見る自分の視界が、歪んで見えなくなっている事に気が付いた。喉の奥が痛くなり、鼻水が出てくる。
「恭兄……私、美夜の力に、なれないのかな……?」
震える声を抑えながら、美月は言った。
恭は深刻な顔で美月の横顔を見つめる。真っ直ぐ前を向き、美夜を見ている美月の頬は、涙で濡れていた。
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