第118話 帰省
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お盆に入り、店が四日間の休みになったため、美夜と美月は予定を合わせて約半年ぶりに田舎へ帰ることにした。
午後三時を回った頃、二人は実家の玄関前に、ようやく辿り着いた。
「ただいまあ」
二人が声を揃えて言うと、母と父が揃って玄関まで出迎えた。
「早かったねえ。もっと遅い電車だと思ってたよ」
「美月がね、ネットで早いうちから切符を買っておいてくれてたの。お陰様でゆっくり座って来られました」
美夜は美月に感謝、感謝と言いながら家に上がった。
「美月は機械に強いねえ。そう言えば、この間ね、恭ちゃんが来てノートパソコン置いてってねえ」
母が美月の大荷物のうちの一つを持つと、居間へ運んだ。
「へえ、恭兄、帰ってきてたんだ」
「うん。花火大会見に来てね。あんた達が帰って来るって言ったら、明日来るって言ってたよ。墓参り、今日は遅いから、明日一緒に行ってこようね」
恭は、美夜と美月の四歳年上の兄で、去年結婚をし、現在、奥さんが妊娠中で奥さんの実家で一緒に暮らしている。いわゆる某国民的アニメに出てくるお婿さん状態だ。
「赤ちゃん、いつ産まれるの?」
美月は母に質問しながら、「疲れたあ」と畳の上に倒れ込んだ。
「今月末だよ。それで、赤ちゃん産まれたら映像が見られるようにって、何だかセットして行ったんだけどね。私もお父さんもよく分からないのよ」
「どれどれ?」
美月はむくりと起き上がると、兄が置いていったというパソコンを覗き込んだ。
「ここがカメラになってて、ようはテレビ電話と同じだよ。この前に座って、恭兄って呼べば向こうが近くにいれば、手を振ってくれるよ」
「マイクとか必要ないの?」
「内蔵じゃない?何も置いていかなかったんでしょう?」
「これだけ」
「じゃあ、そうじゃないのかな」
「みづ、みや、スイカ切ったから食べよう」
父は裏庭で自分で育てたスイカを二人に振る舞った。スイカはよく冷えていて、甘くて美味しい。
「そうだ、これ、お土産。私が働いてるお店の焼き菓子。すっごく美味しいの。後で皆で食べよう」
美夜は、L i sの焼き菓子を母に手渡した。甘い物が好きな母は、「また随分とハイカラなお菓子だわねえ」と顔を綻ばせながら受け取った。
美夜と美月は、東京での生活を父と母に話して聞かせた。仕事の話し、職場の人達の事。電話で話をしていても、会って話すと、それはまた違って聞こえるのか、両親は嬉しそうに二人の話に耳を傾けた。
*******
「美夜、もう寝た?」
電気を全部消し、網戸から漏れる月明かりで部屋の中が淡い光に照らされ、明るく見える。
「起きてるよ」
眠そうな声が返ってくる。
「やっぱり、田舎の空気は良いね」
美月はしみじみと言うと。
「そうだね」と、美夜は素直に同意した。
「明日、お墓参り行ったあとさ、海行こうよ」
「そうだね……。向こうに帰ったら、なかなか見られないもんね……」
「貝とか、シーグラスとか沢山拾ってさ、里々衣のお土産にしない?」
「……うん、そうしよ……」
声が徐々に消えていくように小さくなった。
美月は隣で寝る美夜を見た。静かに寝息を立て、眠りの中に落ちたようだ。美月は網戸越しに見える月を見上げた。里々衣の誕生日の時に、徳山がいった言葉が、美月はずっと気になっていた。栄が声を被せたが、しっかりと美月の耳には聴こえていた。
美夜が栄とデートをしていた。
別に美夜が誰と付き合おうと、どこへ出掛けようと美月には関係のないこと。
だが、なぜ美夜は黙っていたのだろうか、と考えた。そして、それはいつの話しだったのか。
一つだけ、思い当たる、それらしい日が頭を掠めた。
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