第116話 子供の頃
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栄達の数歩前を、光と美夜が歩いていた。
光は、みんなから貰った里々衣への誕生日プレゼントを抱え、「中西はさ」と話しかけた。
美夜は「はい?」と、小首を傾げ光に顔を向ける。
「子供の頃、どんな子供だったの?」
唐突な質問に、美夜は驚きながらも、子供の頃の自分を思い出しながら答えた。
「子供の頃は、いっつもぼんやりしていて、美月や兄に手を引っ張ってもらっていました」
「え?お兄さん居るんだ?」
てっきり双子姉妹で、他の兄妹は居ないと思いこんでいた光は、驚きながら美夜を見る。
「はい。四歳離れた兄が一人居ます。去年結婚して、もうすぐ赤ちゃんが生まれるんです」
「へえ」
美夜は、顔を前に向け、懐かしい風景が目の前にあるかの様に、穏やかな表情で子供の頃の話をする。その柔らかな微笑みに、光は思わずじっと見つめ、耳を傾ける。
「兄は、私が少し苦手だったようで、美月とはよく遊んでいたんですけど……。あまり、兄と遊んだ記憶はないんです。美月は活発で、よく外を走り回っては怪我してばっかりで、近所の男の子達に紛れて泥だらけになってて。私は、兄や男の子達に、ここに居ろって言われたら、ずっとその場にいて、動かないような子供で。だから、時々忘れられたりして」
そういうと、美夜は、ふふっと笑う。
「それは……どうなの?」
光は困惑顔で瞬きをしたが、美夜は苦笑しながら話を続けた。
「でも、そういう時は、必ず美月が見つけてくれたんです」
「双子の力、かな?」
「さあ、どうでしょうね。でも、美月が探してるなっていうのは、何となく分かって、私はここに居るよって心で思うんです。そうすると、数分後に必ず美月が来て、一緒に帰ってました。兄も、私を忘れた事を反省するのか、その日の夜は、すごく優しいんですよ。自分の食後のデザートを私に半分くれたり、私も一緒に遊べるトランプをしようとか言い出したりして」
「でも、次の日には元通り?」
美夜は苦笑しながら「ええ」と答えた。
光は「なるほどね」と笑うと、楽しげに言葉を続ける。
「何だか、今とたいして変わらない感じだな、あんたら双子は」
「確かに、そうかも」
美夜もその意見に同意し、笑った。
生暖かい空気が夜の闇を包む。空に浮かんだ月が、四人の歩く道を明るく照らしていた。
静かに、穏やかな時間が流れていく。
もうすぐ、本格的な夏が来る。
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