表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】光の或る方へ  作者: 星野木 佐ノ
3 恋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/201

第103話 思わぬ誘い

いつも読んで頂き、ありがとうございます。





 翌日、栄は自分が休憩に入る前に、本屋に顔を出した。

 栄が来た事に驚いた美夜は、顔を赤らめ「お疲れ様です」と言い、椅子から立ち上がった


「お疲れ。どう?お店の方は」


 栄は極力いつもと変わらない調子で訊いた。

 美夜は栄から顔を逸らすと「それなりに、売れてます」と返す。


「そう」と言うと、栄は店内を少し歩いた。乱れた本を手直しし、美夜に振り返る。


「美夜ちゃん」


「はい!」


 美夜は背筋を伸ばして、栄を真っ直ぐに見つめる。


「来週の水曜、一緒にどこか出掛けようか?」


「え?」


「だめかな?」


 美夜は目を大きく見開き、頭の中で栄の言葉を復唱した。言葉が解読できると、一気に顔が熱くなっていく。


「あの、えっと……」


「何か、用事あった?」と栄が訊くと、美夜は急いで「いえ、何も」と返事をした。


「じゃあ、来週の水曜、駅前で良いかな?」


「はい」


「時間は、昼前にしよう。どこかでご飯食べよう」


「はい」


「じゃあ、十一時半でいいかな?」


「はい」


「よし。じゃあ、それで」


 栄はにっこりと微笑み、暖簾を潜って休憩室へ向かった。

 美夜は椅子にへたれこむ様に座り、胸に手を当てる。心臓がこれまでにない速度で動いている。手と足は震え、耳が良く聞こえない。


「あ……メモ……」


 美夜は震える手でメモ用紙とペンを取ると、日付と時間、駅前と書いて、スカートのポケットに仕舞った。 


「夢……かな?どうしよう……」


 店内に女性客が二人、入ってきた。美夜は我に返り、震える声で「いらっしゃいませ」と言った。



*******



 美夜は取っ替え引っ替え服を着替え、鏡の前に立っては「違う」と呟いた。部屋の時計を見ると、刻々と待ち合わせ時間が迫っている。


「どうしよう……」


 美夜は部屋中に散らかした服を見渡し、気になった物を掴んだ。


「美夜」と、美月が部屋をノックして入ってきた。


「なに?どうしたの、こんなに散らかして。どこか行くの?」


 美月は目を丸くして美夜の部屋を見る。

 美夜は微かに頬を赤く染めると「そう」と返事をした。


「ちょっとね。時間がないの。何か用事?」と着替えながら美月に訊く。


「ああ、うん。今日、本当は休みだったんだけど、急遽、仕事に出る事になったんだ。それで、帰りは遅くなると思う。美夜も遅くなる?」


「わからない」


 美夜は鞄を漁りながら答えた。


「そう。じゃあ、ご飯はそれぞれで食べよう」


「うん。分かった。もう行くの?」鞄から顔を上げて美月を見た。

 美月はもう既に支度が調っている。


「うん。今から行ってくる。周り閉めていくから」


「ごめん、ありがとう。気をつけて行ってきてね」


「うん。美夜もね」 

 

 美月は部屋から出て行った。暫くして、玄関のドアが閉まる音がした。

 美夜は化粧台の前に座って、自分の顔をじっと見つめた。寝不足で少し目が腫れ、薄っすらと隅も出来ている。


「美月に言えなかった……」


 なぜ、正直に栄と出掛けると言えなかったのか、自分でも分からなかった。

 美夜は「急がなきゃ」と呟くと、化粧を始めた。

 栄に貰ったピアスを付け、全身鏡で自分の姿を見る。

 鏡の中の美夜は、半袖のグリーンをメインにしたチェックの膝丈ワンピースを着た。

 スクエアーカットの胸元に、アクセントとして三個のボタンが付いていて、裾は白いレースが見える。焦げ茶色の小さなショルダーバッグに、肩下までの長さがある髪の毛は、毛先を少しカールさせ、両耳の脇をピンで留めた。


「大丈夫かな……。可笑しくないよね……」


 不安げに鏡の中の自分に問いかける。鏡の中の自分は、情けない顔をしてこちらを見ていた。


「大丈夫、美夜。笑って」


 自分の口角をきゅっと上げる。自分の顔にコンプレックスはそれなりにある。しかし、普通にしていても口角が上がっている所が、唯一、自分の中で好きな箇所だった。

 鏡の中の美夜は、口角を持ち上げただけで、明るい笑顔になる。


「そう。大丈夫。緊張しないで、いつも通りに。今日を楽しみましょう」そう言うと、鞄を持って部屋を出た。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます!


「続きが気になる」という方はブックマークや☆など今後の励みになりますので、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もしかして、おデート…!
2022/12/26 00:21 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ