周回と、補充と。(重大告知あり)
遅くなってごめんなさい。
大事な告知もあります。
よかったら最後まで見てね。
◇
(前話)
ポーション補充の素材集めに行こう!
「よし!まーこんなもんかな」
エリアボス、ジャイアントスパイダーを周回すること、10回。
インベントリに溜まった素材の量を確認して、私は大きく頷いた。
『相変わらずえぐい』
『蜘蛛は嫌いだがこれは同情する』
『登場、即撃破の繰り返しかぁ』
『これでも大多数のプレイヤーはまだ苦戦しているんだけどな……』
『凄女サマだからね』
『殺戮の凄女』
「しょうがないでしょ!おばあちゃんのためだもん!」
私だって、やりたくて巨大蜘蛛を乱獲している訳では無いんだ。
なんなら、クモはかなり苦手な部類に入るし。
これも、初期からずっとお世話になっているおばあちゃんのため。
彼女のポーションが無ければ、骸骨も猪さんも勝てなかっただろうからね。
しっかり恩は返さなきゃ。
「……そういえば、素材の量は制限ないのって楽だよねぇ」
『なにが?』
『ああ、重量か』
『素材は筋力とは無関係やね』
『専用インベントリに入るからな』
『肉とかも、調理するまではそっち枠』
『その辺はいかにもゲームなんだよなー』
インクリにおいて持てる荷物の量に、筋力値に応じた重量制限が設けられているのは前も話したと思う。
STRの値が大きくなるほど持てるものの総重量が増え、低すぎると軽いメイン装備すらも持てない。
現に、私の持っているこの聖女杖だって。
筋力値が足りていない結果として、持っているだけでもとても重いし装備した時も本来の性能を発揮しきれない。
……まぁ、発揮できなかったところで、尖りすぎた私には関係ないんだけど。
そんなインクリにも、もちろんながらゲームとして救済措置がある。
まずは、さっきも話にあがった素材用インベントリ。
ドロップした各種素材が自動的に専用亜空間に収納される仕組みとなっているらしく、取り出しはウィンドウを操作するだけ。
現地人の方に引き渡す時は現物を出さないといけないけれど、プレイヤー同士の時ならばウィンドウ越しのやり取りだけで素材取引をすることが出来る。
持つことが出来る量はそれぞれ共通なので、ステータスによる変動は無い。
この仕様のおかげで、非力な私でも素材の持ち帰りに苦労するということは無いわけだ。
もう1つの大きな救済点としては、武器類もまた専用のインベントリに格納されることが挙げられる。
これもまた重量に制限は無いので、大体のプレイヤーは予備の武器を何本か用意しておくんだそうな。
私は、聖女様の杖を1本持っているだけだけどね。必要ないし。
……あった所で持てないだろって? うっさいやい。
因みに、防具には温情措置はないため、枠を圧迫したくなければ拠点のタンスにでも閉まっておく必要がある。
タンスや棚といった収納スペースの中身は個々人それぞれに割りあてられていて、世界中どのタンスを開いたとしても繋がるインベントリは一緒なんだって。
個性豊かな動物たちと、街や島を興して暮らす某箱庭ゲーの収納システムに近い……とはカナの言だったかな。
おっと。話題が逸れたね。
まあともかく、非力(STR0)な私であっても素材を持つ分には問題ないということだ。
「じゃーそろそろ、おばあちゃんのところに行くとしますかぁ」
『おつ』
『おつ~』
『合計10体のボスが生贄になったのか……』
『素材周回ってオンゲで当たり前じゃね?』
『いやそうなんだけど』
『そうなんだけど絵面がなww』
『巨大蜘蛛を乱獲する聖女(笑)』
『凄女サマだからね』
「はいはいもうなんでもいいからさっさといくよ~!」
気を抜けばすぐにいつもの流れを始めるコメント欄を放置して、アジーンへ向かう。
門番さんに挨拶をして、まっすぐお店へ。
「こんにちは~」
「いらっしゃいま……聖女様!」
「もうその呼び方は固定なんだね……」
当然と言わんばかりにニコニコとしているお姉さん。
追求したところで無意味と判断して、すぐさま本題に入ることにした。
「……えっと、ポーションの補充をしたくて」
「はい! 既に準備できておりますよ」
「ほえ? もう、ですか」
言葉通りなのだろう。すっと差し出されるポーション群。
店員さんの顔は、私が来るのを確信していたことを物語っている。
いやいや、そんなことある?
だって、私のポーション補充のタイミングなんてバラバラだよ!?
「ふふ。おばあ様から、聖女様が来られるから……って」
「おばあさま……えぇっ!? ミランダさんのお孫さん!?」
否定も肯定もせず、にっこりと微笑むお姉さん。
え、その反応はどっちなんだ。
けど何となく、明言する気はないという様子は感じ取れた。
「……えっと、ミランダさんには私の動きが筒抜けだってことですか?」
「どうでしょう。けれど、おばあ様の言伝があったのは確かですよ。
……いつからの、とは申しておりませんけれど」
なにそれ。ずるい。
そんな私の反応がお気に召したのだろう。お姉さんは悪戯っぽく笑う。
いつまでも手玉に取られているのも癪なので、こちらからも仕掛けたい。
「ポーションを貰いに来ただけじゃないですよ。
ちょーっと失礼するので、机の上あけますね?」
ウィンドウを実体化して、素材欄を開く。
今し方あつめたばかりの大量の蜘蛛素材を、どさどさーっと机の上にばらまいた。
目を丸くしたお姉さんの姿に、ちょっとだけ満足。
「これはまた……ものすごい量ですね?」
「へへ。楽しくなっちゃって。多すぎちゃったら回収しますっ」
「いいえ。全て買い取らせて頂きます。突き詰めるなら、素材はいくらあっても足りないものですから」
「ほんとですか!よかったぁ」
「近々、大きな戦いもありますし。物資系の需要は高いですよ」
「ゴブリン……ですね?」
お姉さんが素材をどこかへ収納していくのを眺めながら、軽く雑談。
あれ? そういえば、私たちはインベントリっていう超便利なものがあるけれど、現地人の方々はどうしているんだろう。
目の前の動きは明らかにそれと近しい感じではあるから、何かそういう魔法みたいなのがあるのかもしれない。
「ええ。聖女様も、戦闘に出られるんですか?」
「はい!そのつもりです!」
「そうですか……ありがとうございます。ご無理はなさらず……いえ。ご武運をお祈り申し上げます」
私が異邦者であることを思い直したか、それとも私自身の性格を察してのことか。
言い回しを変えるお姉さんに、私はにっこりと笑うことで返す。
お互いの事務作業が終わったところで、お暇。
さて、じゃあ次の行程に移るとしますかー!
さて。いい加減ゴブリンたちには犠牲になってもらおうか。
◇
重ね重ね、更新遅くなって本当にごめんなさい。
こんなに遅くなっているのに、まだ見捨てず見に来てくれて。楽しんでくれて本当にありがとう。
活動報告があります。
良かったら、みてください。
大事な告知は前半で終わるので、そこだけでも、見てほしいな。
こまるん。




