第1回公式イベント 終
魔王VS聖……いや、凄女。
両者の戦いは、隕石まで降る大激戦の末、魔王の勝利で幕を閉じた。
負けた。
それも、真正面からぶつかった上で。
完膚なきまでに、負けた。
「あーー! 悔しい!!!」
第1回公式イベント。
私はそこで親友たるカナと対決。激闘の末、敗れた。
今は、大会が終結するまでとして、別の空間で待機させられている。
中央には大きなモニターが置いてあり、そこで公式配信の様子を見ることができるらしい。
因みに、どうやらプレイヤーごとに空間は独立しているようで。周りを見渡してもほかの人間の姿は見られなかった。
『お疲れ様』
『どんまい』
『惜しかった』
『魔王に敗れる聖女』
『聖女じゃ勝てなかったか』
『”聖女”なら勝てたかもしれない』
『凄女サマだもんな』
『聖女ならそもそも攻撃手段足りんやろ((』
「うぬぬ……」
もうちょっとだった感じではあるんだけどね。
カナの言葉からしても、あと一手、足りなかったというところか。
耐久力が私なみにあるとは考えられないから、回数限定の耐えるスキルかな。
よく考えれば、致死ダメージを耐えてしまう手段がある可能性くらい、容易に想像できた。
万が一にも削り切れないということを恐れるあまり、視野が狭くなっていたね。
せっかく増やしておいた手札を使うチャンスが無かったのも、悔しさを際立たせる。
使う隙が無かった……というより、咄嗟に使うという思考に至れなかったと言うべきだろう。
……まぁ、過ぎたことをいつまでも悔いていても仕方が無い。
いつか、リベンジはしたいところだけどね。
そうこうしているうちに、イベントは進み。
最終的に生き残ったのは、ドレンという侍さんだった。
親友は、3位。
カナを破った聖騎士さんが2位だったんだけど、名前はユリウスと言うらしい。
あれ。そういえば、私がやられちゃった時点での順位って幾つだったんだっけ。
チラッとだけ表示された記憶はあるけど。
◇◇◇◇◇◇◇◇
プレイヤー:ユキ
獲得スコア:40キル
生存順位:10位
◇◇◇◇◇◇◇◇
10位か。
……10位!?
確かに、あの時、何人かを巻き込んでしまった感じはあった。
けれど、まさか10位まで上がっているとは。
獲得スコアも高いし、これなら充分以上に戦えたと言って良いんじゃないかな?
そうそう、最後の決着の付き方なんだけど。
残り3人になってからは、トーナメントのような形になった。
具体的には、先ずカナとユリウスさんが激突。
彼らの周囲100メートルくらいの地面が抉り取られるほどの激戦の末、軍配は聖騎士さんの方に。
得意の紅蓮の炎で攻め立てた魔王様。
だけど、ユリウスさんが開幕から纏っていた光のバリアのようなものは、どうやら炎属性を大幅に軽減しているように見えた。
炎熱と、閃光。
2つのぶつかり合いは、まるで盛大な舞台のような白熱の末、聖騎士側の勝利。
その背景には相性はもちろんのこと、カナの方は私との戦闘でリソースをかなり消費していた……というのが挙げられるだろう。
結果的に、ユリウスさんの防御を崩しきること能わず。
傍から見ていた感じ、結構惜しいようにも見えたけどね。
どうせなら優勝して欲しかっただけに、残念。
最後は、侍と剣士の決戦。
ドレンさんは崇高な意志をお持ちのようで、魔王と聖騎士の決戦が終わる頃にはかなり近くにいたのにも関わらず、その周囲で三分ほど待機。
息も整ったであろうというタイミングで、ようやく、堂々と姿を現した。
流石に死闘の影響は大きく、万全とは程遠いものの。
ドレンさんの振る舞いによって、それなりに体勢を整えることが出来たユリウスさん。
そのお陰で、最終決戦はそれに相応しい非常に見所のあるものに。
映像の派手さでいえば、魔王カナとの戦いに僅かに軍配が上がるものの、同じ剣士タイプによる頂上決戦。
瞬きする間さえない、激しい剣戟戦となった。
シンプルな打ち合いに始まり、途中からスキルも混じえた、まさに息つく暇のない一騎討ち。
最終的に自らの刃を届かせたのは、侍ドレンさんのほうだった。
そんなこんなで無事、勝者が確定。
それに伴い、最終ランキングの計算に入っている。
「……かなり撃破してるし、流石に順位落ちるってことは無さそうだよね」
『そらそうやろ』
『撃破数だけならトップレベルまである』
『余裕ちゃう?』
『一気に上がるまでありそう』
「そうだとは思いたいけどねー。ドキドキするなぁ」
『最終結果が確定致しました。中央巨大モニターをご覧下さい』
アナウンスが響きわたり、先程まで激戦が映し出されていたモニターの映像が切り替わる。
まず表示されたのは、生存順位。
特に煽るような実況があるわけでもなく、下から順番に発表するわけでもない。
まるで受験の合格発表かのように、上位10名までが一斉に映し出された。
生存の順位に関しては、今更触れるまでもないだろう。
私の結果は、10位。トップ3に関しても、さっき触れたままだからね。
『続きまして、撃破スコアのランキングです』
そんなアナウンスが流れて、いよいよだと身を固くする。
わるい成績ではないはずだけど、やっぱりドキドキするね。
◆◆◆◆◆◆◆◆
撃破スコアランキング
1位 65キル カナ
2位 48キル フリージア
3位 40キル ユキ
4位 34キル ドレン
・
・
・
◆◆◆◆◆◆◆◆
「おーーっ!! 3位!!」
『かなり高くて草』
『聖女とは』
『凄女だからね』
『凄女サマだからな』
『【速報】凄女サマ、人間相手でもライフで殴れる』
『むしろモンスターよりHP限られてるから殴りやすいまである』
『魔王様やばすぎんか』
「カナは本当にえげつないね。どうやったら今の戦いで60キルを越えるんだろう。
2位の方も、名前は聞いたことあるような……!」
『フリージアたんか』
『フリージアww』
『結構有名だよ』
『クール笑のフリージアね』
『一応、氷属性遣いとしては最高峰』
『あの雰囲気がなぁ……w』
『背伸びするロリっ子は可愛いもんよ』
そうだ。カナの対策で魔王技能……じゃなかった。魔法技能について調べている時だったかな。
魔法職の現状ツートップの話が挙がっていた。
炎熱のカナと、氷獄のフリージア。
今大会の対策としてちょっと調べてみようかなーって思ったんだけどね。
フリージアさんで検索したら、なんかこう、物凄く圧を感じる特集サイトみたいなのが出てきて。
そっとブラウザバックして、そこで予習は辞めちゃったんだ。
まぁ、えっと。小柄で、物凄く愛されている感じの方みたいだよ?
『お待たせしました。最終ランキングの発表になります』
おっと。いよいよ最終結果の発表か。
撃破数ランキングからして、かなり期待の持てる感じ。だいぶ上がるんじゃないかな。
◆◆◆◆◆◆◆◆
最終ランキング
1位 134点 ドレン
2位 95点 カナ
◆◆◆◆◆◆◆◆
おおーー! カナが2位!
生存順位から、ひとつ逆転させた形になるね。
20もの順位点の差をひっくり返しちゃうのは凄いなぁ。
親友の大躍進は、それだけで心躍るものがある。
コメント欄で『撃破数がおかしい』『これが炎熱のテロリスト』『さすマオ』『魔王様流石です』とか、いろいろ言われているのが面白い。
◆◆◆◆◆◆◆◆
3位 78点 ユリウス
4位 53点 フリージア
5位 50点 ユキ
・
・
・
◆◆◆◆◆◆◆◆
5位!!
結構、際どいラインではあったけれど。目標のトップ10どころか、五本指に入ることが出来たのは本当に嬉しい。
まぁ、親友に対しては悔しい敗戦となったわけだけれども。
同時に届いた報酬は、賞金と1つのアイテム。
アイテムに関しては、何らかのキーアイテムっぽい。また今度触れようかな。
さて、とりあえずは、これで大きな山がひとつ終わった形になるのかな。
次は順当に行けば、ワールドクエストとやらになるんだろうか。
私が砦をぶっ壊しちゃったことにより始まった、ワールドクエスト。
公式さんからの追加情報はまだ来ていなかったはずだけど、はたしてどんな感じになるんだろう。
多分だけど、グレゴールさんたちを中心とした人間サイドと、ゴブリンやオーガを中心とした魔物サイドのぶつかり合いになるんだよね。
そうなると、プレイヤーたる私たちは人間側に力添えを…………あれ?
……魔王って、どっち陣営?
イベント報酬アイテムの名前案募集します(おい)
NPCに実績を証明する証みたいなもの。のちのち実装されるイベントで、実績の分だけショートカットできる的な物になる予定……!
三段階くらいに分けようかなー。
プロローグの前に、ファンアート紹介所を設置させていただきました。良ければ見てね。
これにて二章終了。これからも、よろしくお願いします!




