計算通り
念願の新装備を受け取ったユキ。
村人装束から外見だけでも聖女っぽくなった彼女は、満を持して第一回イベントに挑む。
「うおー。やっぱり、ざわざわしてるね」
装備を受け取った日からニ日後。
このゲームを始めてからなら、十二日目。
そう、第一回公式イベントの日だ。
無事に装備を手に入れたあの時から、実は1回も配信をしていない。
正確には、インクリの配信は……だけどね。
ゲームを始めたばかりの時は、伏せたい情報なんて何も無いって言ってたし、実際いまもそこまでガチガチになるつもりではないんだけど。
まぁでも、せっかくのイベントだし。
最後の二日位は、配信の外で準備というものをしてみようかなーってね。
それにほら。情報による有利不利だけじゃなくて。
ちょっとは隠し札があった方が、イベントを観戦してくれる人たちも楽しんでくれるだろうって気持ちもある。
装備も、ステータスも、私にしては珍しく非公開。
大会が始まったらイベントに参加中の人は配信を観られなくなるから、そのタイミングで色々とお披露目だね!
さて、前置きはここらで良いだろう。時刻は11時59分。
まもなく、予定通りならばイベントの開始となる。
『ワールドアナウンス』
『これは、ログイン中の全プレイヤーに配信されています』
『これより、第一回公式イベントを開催致します』
『カウントダウンの後、参加者の一斉転移が行われます』
『念の為、その場を大きく移動することなく、待機しておくようにお願い致します』
『3……2……1……』
カウントダウンが終わると共に、ちょっとした浮遊感。
これはあれだね。広場で転移を使う時と同じ感覚。
次の瞬間には、私は見たこともない岩肌の上に立っていた。
待ちに待った、第1回イベントの幕開けであるっ!
『第一回イベント「あっちもこっちも敵だらけ!?生き残るのは誰だ!」が開始されました』
ああ、そう言えばそんなタイトルだったね…………
◇◇◇◇◇◇◇◇
「はいはーい。みんなこんちゃー。ユキだよ」
『がおつ』
『がおつー』
『(「・ω・)「ガオー』
『(「・ω・)「ガオツー』
『(「・ω・)「ガオツー』
『待ってた』
『!?』
『衣装!!』
見慣れないフィールドに転移した私は、一先ず周囲を確認。
即座に襲ってくる人間は居ないっぽい……ってことで、予定通り配信を開始した。
「がおつーコメント、毎回進化してる感じがもうなんとも言えないよ……
と、とにかく、二日間も空けちゃってごめんね。さっそく来てくれてありがとう!」
まず最初に、ちょっとだけ期間を空けちゃったことへのお詫びから。
無言だったわけでもないし、ほかの内容の配信は多少していたとはいえね。
インクリだけを楽しみにしてくれている人も沢山いるだろう。
それに、実際は2日だけど……なんだか2週間くらい、このゲームの配信をしていない気分。
いや、そんな訳ないんだけども。それくらいに、ずっと配信をするっていうのが日常に染み込んでいたのかな。
おっと、さっそく気付いて声をあげてくれている人がいるね。
「……そう。皆さんご覧あれ!
ついに、装備が完成したのです!」
カメラに向かって、ふわりと横に一回転してみせる。
ふふ。この服、やっぱりとても身体に馴染む感じがするよ。
『おー!』
『聖女だ』
『かわいい』
『清楚だ』
『似合ってる』
『いいね』
『外見だけは せいじょだ』
『聖女の皮を被りやがった』
『すぐに正体表すよ』
「こらそこぉっ!
だーれが外見詐欺だ。焼き払うぞ!」
『いや草』
『そういうとこだろwww』
『いきなり視聴者を脅し付ける聖女』
『聖女の圧政じゃん』
『これは凄女』
ある意味お約束のような、言葉の応酬。
うがーーっと怒ってみせるけれど、やっぱりこのやり取りこそが、私は一番楽しいのかもしれない。
温かくコメントを投げてくれている視聴者さんたちに、ほっと一息。
それにしても、今回はいつもより結構ご新規さんっぽいコメントも混じってる気がするな?
そんなちょっとした疑問は、視聴者さんたちの言葉によってすぐに氷解した。
どうやら、公式さんによる専用配信の他に、公認配信者として私の放送自体も運営サイドによって掲載されたり告知されたりしているみたい。
「だったら、いつも以上に恥ずかしいところは見せられないね!」
『おー』
『頑張れ』
『気合いを入れる凄女』
『この女。見た目こそは非常に聖女っぽいが……実態は悪魔なのである』
『凄女で勢女な聖女様だからね』
『今日は一体誰が犠牲になるのだろうか』
「いい加減に……しろぉぉぉっ!!!」
一秒だけチャージ。
振りかざしたバギーニャトロスティから、光線がカメラに向かって放たれた。
ピシィ! という音と共に、衝撃でカメラがゆらゆらと揺れる。
「あ、しまった。大人しく、無難に楽しんでもらおうと思っていたのに、思わず手が……!」
『草』
『ほんとそういうとこやぞ』
『前は、手までは出さなかったのにww』
『凄女っぷりが増しててほんと笑う』
『もっと撃って罵って下さい』
『いきなり笑った。チャンネル登録したわ』
『何これ面白すぎる』
『※当チャンネルでは、これが平常運転です』
『マジかw俺も登録した』
『おい待て変なの湧いてるぞw』
『凄女で勢女な悪魔の沼にご新規様ごあんなーい』
初見ということで様子を見ていた人たちが、今の言葉の通りにポチッとしたのだろう。
怒涛の勢いで登録者数が増えていっていることが、視界の片隅に表示されていく。
私は杖を一旦しまうと、両手を腰にあて大きく頷いた。
「…………ふふ。全て計算通りよ」
『嘘つけ』
『嘘だな』
『嘘ね』
『嘘よね』
『嘘だね』
『嘘は良くない』
『どう見ても嘘』
う、うるさーーい!!
大変お待たせ致しました。ごめんなさい。理由は言わないよ!
そうそう、先週投稿しなかった理由とは関係ないんですけれど、待ちに待ったドラクエ11sがps4で発売されましたね。
早速買ってプレイしましたが、個人的に最高傑作って言えるくらい気に入りました。本当に面白かった。
プレイ時間もう60超えちゃってたよ。
先週投稿しなかった理由とは関係ないんですけれど!!!!!!!
あとダビスタも買いました。先週投稿し……(殴
(これからまた週一でコツコツがんばりますのでどうぞお願いいたします。)




