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原因

 

 色々とキナ臭くなってきたよなぁ。

 呪いと思って色々と調べてみれば、聖堂の下にはありえないはずの異端審問の痕跡と山のような拷問器具。


 リィナちゃんが言うにはフェルムの土地はずっと白神教だけが信仰されていたから、他の信仰は存在しなかったし弾圧するような相手もいなかったはずなのに異端を迫害するような行為が行われていた証拠がある。


 もしかしたら、これは単に僧侶の中に変態趣味の奴がいて、拷問でもやってたとかそんな感じかもしれないね。呪いって話もそこから来てるのかもしれないが、そうだとしても拷問器具はしばらく使われていないようなんだよね。だからまぁ、今生きている人間が拷問で人を殺して恨まれたってことはないと思うんだよな。


 そもそも僧侶の体調不良は呪いじゃなくて瘴気が原因だから、拷問で殺された奴らの恨みは関係ないと思うんだ。まぁ、間接的には関係あるかもしれないが、直接に呪いを受けている様子はなかったわけだし、白神教の僧侶全体が恨まれて呪いを受けているわけではないってことは確かだろう。


 色々と分からねぇことがあるよな。

 間違った情報をもとに推理してる感じだ。

 そもそもメレンディス自身も相当に怪しい。あの野郎は本当に僧侶が倒れていた原因を呪いだと思っていたのか? 奴の言葉もどこまで信用していいやら、というかアイツ自身がそこまで信用できないよな。だってアイツだけは間違いなく──


「──ねぇ」


 考え事をしていたらリィナちゃんに呼びかけられたので俺は思考を中断する。

 何か用ですか御嬢さん? さっきまで体調が悪かったのに顔色が戻っているね。健康なのは良いことだ。

 まぁ、取り繕ってる余裕が無いってだけなんだろうけどね。実力を隠そうと思って虚弱なふりをしようとしていたんだろうけど、そんな余裕はないようだ。


「ちょっとこれ大丈夫なの?」


 隠し階段を降り、秘密の拷問室に辿り着いた俺達はそのまま部屋を奥へと進んでいた。

 奥へ進むにつれて瘴気は段々と強くなっていく。そのことから、瘴気の大本が近いことを察することができる。


「大丈夫、大丈夫」


 俺は振り向いてリィナちゃんを励ます。

 問題ねぇって。きっと、なんかスゲェ化け物がいるだろうし、最高だろ?

 強い瘴気を発する大本にはだいたい強い恨みを持った亡霊とかがいるイメージだし、俺のこれまでの経験上もそうだったんだから、今回もいるんじゃねぇかなって思う。

 まぁ、それが不安でリィナちゃんは俺に大丈夫かって聞いてるんだろうけどね。俺はヤバいものがいる方が良いが、世間一般の人間はそうじゃないってことくらいは分かるぜ。


「絶対、大丈夫じゃない!」


 リィナちゃんが声を上げて足を止める。

 何事かと思い、俺はリィナちゃんの視線の先を追うと、拷問部屋の奥に扉があり、そこからおびただしい量の瘴気が漏れ出していた。


「ゴールじゃねぇか」


 何をそんなに不安がっているやら。

 そこの扉を開けて、この瘴気を出している元凶をぶちのめすなりすれば問題解決だぜ?

 俺は目的地に着いたことを確信し、扉へ向かって歩き出す。


「拷問部屋の隣って何があるんだろうな?」


 リィナちゃんに聞いてみるが、答えは返ってこない。

 俺の勘だと死体置き場だと思うね。いや、死体捨て場か? 置いておいても誰も回収には来ないんだろうし、回収の見込みがないなら安置じゃなくて放置だし、放置ってことは捨ててるのと意味は変わらないよな

 ?


「まぁ、開けてみればわかるよな」


 俺は扉に手をかける。後ろに立っていたリィナちゃんが俺に止めるように叫んでいるのが聞こえるが俺は無視して扉を開けた。すると、その直後、部屋の中から一気に瘴気が溢れ出し、俺とリィナちゃんを呑み込み、漆黒に澱んだ瘴気に覆われ俺達の視界が奪われる。


「おまえ、マジふざけんな……」


 俺達を呑み込んだ瘴気はすぐに散っていく。

 後に残ったのは問題なしで突っ立っている俺と膝をついているリィナちゃん。

 リィナちゃんの体はどういうわけか淡く発光しており、神聖な気配を感じさせるその光が瘴気からリィナちゃんの身を守っていたようだ。

 瘴気に呑まれたときにはリィナちゃんはちょっと危ないかなぁって思ったんだけど、問題なかったのはちょっと驚きだぜ。なんか特別な力でも持っていそうだなぁとは思っていたけど、こんなに分かりやすい形でそれが見れるとはね。


「よし、問題ないなら行こうぜ? 元凶はこの先だ」


 俺はリィナちゃんに先を急ぐように促すと、リィナちゃんは舌打ちしながらも平気な様子で立ち上がる。

 やっぱ、普通な感じじゃないよなぁ。教会関係者だから邪悪な力にも耐えられるってことなのかもしれないけど、俺の勘だとそういう単純な物でも無さそうなんだよな。


「……さっさと終えて、コイツから離れる……もう絶対に関わりたくない……」


 ぶつぶつ聞こえてくる声を気にせずに俺は部屋の中に足を踏み入れる。

 部屋の中は真っ暗闇で一寸先も見渡せないような有様だったが、俺の後ろを歩いていたリィナちゃんが気を利かせて、照明の光球を放つ魔術を使ってくれた。

 そうして明るくなると、部屋の全容がハッキリと分かってくる。


「うっ……」


 リィナちゃんが部屋の中を見渡して身構える。

 俺もリィナちゃんの気持ちが分からないわけじゃない。なにせ、部屋が明るくなった瞬間、視界に飛び込んできたのは足の踏み場も無いほどに散乱した人骨と、部屋の奥にうず高く積み上げられた人骨の山だったからね。流石にそんな有様を見れば、ちょっとは思う所があるぜ。

 まぁ、だからといって、そっちに気を取られてばかりもいられないんだけどね。


「そこに何かいるぜ?」


 人骨が散乱した部屋の中央に瘴気を吹き出す何かがあった。

 それは瘴気を纏っているようでハッキリとした輪郭までは把握できない。

 もっとも、正体が分からなくても、それが瘴気の発生源であることは間違いないだろう。


「ぶっ壊すか?」


 それともぶっ殺すか?

 おそらく怨霊とかそんな類の物だろうとは思う。そうなると死んでいるから殺せないか?

 まぁ、何でも良いや。

 俺は気負わずに瘴気の塊に近づく。だが、それに向かって俺が一歩を踏み出した、その時だった。


「オォォォォォォォ……ッ!」


 瘴気の塊から唸り声があがり、塊はゆっくりと形を変えていく。

 球体に近い状態から手が伸び、そして段々と輪郭がハッキリして人型に近い悪霊が現れる。

 その姿は下半身のない人型の巨大な骸骨が宙に浮かんでいるというものだった。もっとも、腕が大きすぎるうえに本数が四本だったりで、人間に近い部分は多いけど基本的には人間離れしている。ついでに悪霊は骸骨の体に真っ黒い瘴気をボロ布のように纏わせていて、その外見は死神のようにも見える。


「リッチ……!?」


 リィナちゃんが呆然とした表情で呟く声が聞こえた。

 リッチ──色々と定義はあるが強いアンデッドをそう言うよな。この世界でもそういう名称があるんだね。

 生きていた時にに優れた魔術師だったりする奴とか、何かしらの強い恨みがある奴がなったりするパターンが多いが、この世界でもそうなんだろうか?


「オォォォオオオオッ!」


 リッチが唸り声をあげ、邪悪な性質を帯びた魔力を解き放つ。

 いいね、強そうだ。知性は怪しいが、スペックは高そうだから楽しくれそうだぜ。

 俺が好戦的な気分になっている中、リィナちゃんはどうやら俺と同じ気分にはなれないようで、焦った様子で俺の肩を掴んできた。


「何か用かい?」


 俺は肩を掴んできたリィナちゃんの方を振り向き、あえて場違いに暢気な調子で訊ねた。

 俺の態度に怒るかと思ったけど、どうやらそんな余裕はないようで、リィナちゃんは青い顔で俺に訴えかける。


「あれは無理! 絶対に無理!」


 なんで?

 強そうなのは分かるぜ? でも、それが良いんじゃないか。

 俺はリィナちゃんの気持ちが分からないわけじゃないけど、分からないふりをして首を傾げる。


「あんなの二人で相手を出来る存在じゃない!」


 じゃあ、一人で相手をするからリィナちゃんは帰っても良いぜ?

 確かにあのリッチから感じる力は凄いと思うぜ? 百年以上もの恨みを濃縮させたアンデッドなわけだし、そういうのが弱いわけはないからな。そういうのと戦ったら死ぬとか思ってんだろ?

 分かる、分かる。強い奴と戦う時はそういう気持ちになるよな。まぁ、俺はそれが楽しいんだけどね。


「オォォォ──」


 まぁ、戦いたくない奴は戦わなくても良いとは思うぜ?

 誰もが俺みたいな精神性メンタリティを持つのは無理だし、それを強制するのも違うような気もするからさ。だけども、戦いたくないからって逃げられるってわけじゃない、戦わないから逃げられるってわけじゃないってことも理解しているかい。

 世の中には否が応でも戦わざるを得ない時があってだな──


「え?」


 ──今もその時だね。

 リィナちゃんが部屋の入り口を振り返ると、入り口の扉は何時の間にか閉ざされていた。

 慌ててリィナちゃんが扉に駆け寄り、それを開けようとするが──


「開かない!?」


 向こうは俺らを見逃すつもりはないようだ。


「こうなったら戦うしかないよなぁ」


 俺がリィナちゃんを励まそうとにこやかに話しかけると、リィナちゃんは鬼のような形相で俺を睨みつけてきた。しかし、この場を生きて切り抜ける方法が一つしかないと察し、即座に思考を切り替え、俺の方を見て大きく溜息を吐く。

 いいね、そういう切り替えの早さは好きだぜ。俺のことは気に食わないけど、俺と協力して頑張った方が良いって分かったんだろ? 我慢できるところも気に入ったぜ。


「生きて帰れたら、ぶん殴る」


「ぶっ殺すと言わないだけ優しいね」


 俺のせいでこんな状況になったって文句を言いたいんだろ?

 リィナちゃんの気持ちは分からないでもないんで、好きなだけ文句を言ってくれていいぜ。

 殴られるのも許してやろうじゃない。何だったら一回くらい殺してくれても良いぜ。もっとも、その時はリィナちゃんと戦うけどさ。俺としては殺しに来てくれる方が嬉しいね、正当防衛ってことでリィナちゃんとれるからさ。


「集中して!」


 おっと、怒られちまったぜ。

 そうだね、今は目の前の敵に集中しておこうか。

 他のことを考えるのはそれからだ。


「さぁ、楽しくろうぜ、骸骨野郎!」






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