vsシルヴァリオ(ラウンド2)
「誰か、人を呼んで! 大司教様が襲われているわ!」
俺とシルヴァリオを取り囲む野次馬の中からそんな叫び声が聞こえてきた。
さすがに王都の大聖堂の真ん前で喧嘩をしてたら騒ぎにもなるよな。
別に声だけなら、どうだっていいんだけどね。でも邪魔をされるのは困るんだよなぁ。
「──新たな支配者を讃えよう。黄金とは最も公正であり公平な寛容なる王である」
そんなことを考えているうちにもシルヴァリオの詠唱は続く。
そっちに関しては邪魔しようって気持ちはないし、さっさと発動させてくんねぇかなとさえ思う。だって、このまま戦っていても面白くもないしさ。
「──我ら人、王の支配のもと、その寵愛を受けるべく黄金の地平を開拓する。万民、一つの旗のもと、王の名を呼び、その一生を尽くす」
とはいえ、何もせずに待っているのもね。
邪魔をする気はないけど、邪魔をされそうになったら、シルヴァリオはどういう対応を取ってくるのか見たくなったので、俺はシルヴァリオに蹴りを放つ。
前蹴り気味に放った俺の足をシルヴァリオは詠唱を続けながら金貨を放り投げ、それを盾にして防ぐ。
「──見よ、黄金郷はここにあり。虚ろな支配は終わりを告げて、確かな王の名のもとに、栄華の時代の幕が開く」
俺は刀を振り上げ、金貨の盾を切り裂こうとするが、それより速く、シルヴァリオは後ろに飛び退き、詠唱を続けながら、銀貨の弾を投げつけてくる。俺がそれを刀で弾いて防いだときには、すでにシルヴァリオは俺の刀の間合いから離れており、同時に詠唱が完了――
「駆動──金世界秩序──銀枝編」
――シルヴァリオが業術を発動する。
段階としては駆動段階。すでに俺は一度、見ているし、くらってもいる。効果が何かまでは分からねぇけど、前に戦った時は、こっちが業術を駆動させた状態であっても関係なしに、素手の一発をぶちこんできやがった。
「駆動 星よ耀け(スターレイジ)、魂に火を点けて(イグニション)」
俺も業術を発動。シルヴァリオの業術はおそらくだが、俺と同じように自分を強化する方向性に偏ったものだろう。そうじゃなきゃ、シルヴァリオの技量で格闘戦おいて俺の隙を突くのは不可能に近い。
「切った張ったがお好みかい?」
俺は刀を構えて訊ねる。
「まさか」
その言葉が聞こえたと同時にシルヴァリオの姿が俺の視界から消える。
俺は直感に従い、振り返りながら刀を構えて守りを固めた。直後、刀に感じる強い衝撃、俺は耐えきれずにたたらを踏んで後ずさる。
高速で動いたシルヴァリオは俺を飛び越えながら、空中で銀貨弾を撃ってきたようだ。防げたのは運以外の何物でもない。
「いいね」
速いし、重くなっている。
明らかに強くなっててうれしくなってくるね。
「好きになっちまいそうだぜ」
俺の気持ちが高ぶってくる。それに合わせて内力量が膨れ上がる。
これが俺の駆動の効果。精神状態に応じて内力が無限に増加する。
そんでもって、その内力を身体能力の強化に振るのが俺のセオリー。
「何を笑ってんだ。気持ち悪い奴やな」
「俺は気持ち良くなってるんだけどね」
俺は距離を詰めるために前へ出るーーと同時にシルヴァリオも前に出る。そして、俺以上の速さで前に出て、自分の間合いに俺を捉え、高速のジャブが俺の顔面に叩き込まれた。
「そんなソフトタッチ、愛撫してるつもりかい?」
効いてねぇ、効いてねぇ、全然効かねぇよ。
さらに何発かが俺の顔に当たる。何発当たろうが、俺は止まらない。なので、何発あたったか数える必要もない。
「もっと強くしてくんなきゃ気持ちよくなれねぇぜ」
「ウザっ」
そりゃどうも。
俺はお返しに、刀を持っていない方の手でシルヴァリオの脇腹に拳をねじ込んだ。
衝撃で体勢が崩れ、よろめくシルヴァリオに向けて俺は首を刈る軌道で刀を振り抜いた。
けれど、シルヴァリオは素早く後ろに跳んで躱すと、さらにそこから大きく跳躍し、近くの建物の屋上へと飛び乗った。
「前にも言ったやろ? 俺はアンタには勝てないって」
屋上から俺を見下ろしながらシルヴァリオが言う。
対して、俺はシルヴァリオを見上げ訊ねる。
「まだ勝算がないのかい?」
「そういうことや。だから、見逃してほしいんやけど? そうしたら、いつかはアンタの望む最高の俺と戦えるで?」
そりゃあ魅力的な話だね。キミを見逃したら、後でもっと楽しくなる? でも、遠慮しておこう。俺は楽しみを後に取っておくのも嫌いじゃないが、今を楽しむの大事だと思っているんだ。だから──
「最高のキミと戦るのは俺の望みではあるけど、今のキミもなかなかに良いんだよね。だから、今のキミと戦って、半殺しにしてから逃がせばいいんじゃないかな? そうすると今も楽しいし、後のお楽しみも残ると思わないかい?」
「全然、思わんわ」
「そりゃあ、俺とキミは考え方が違うからね」
俺はシルヴァリオを追いかけて屋上へと飛び乗る。
屋根の上に着地したと同時に、金貨の弾が俺の額に向かって撃ち出される。
それを首を振って躱すと、弾を追いかけてシルヴァリオの本体が続けざまに俺に襲いかかる。
新たに取り出した金貨を握りしめたシルヴァリオの拳が黄金の光をまとい、輝く拳が折れに向かって繰り出される。その一撃を俺は咄嗟に出した左の掌で受け止める。可能な限りの内力を込めて強化した俺の手だが、しかしシルヴァリオの打撃を受け止めきれずに骨が砕ける。
「もう一発!」
もう片方の拳も同様に黄金の輝きを纏い俺に向かって放たれる。
防ぐための腕が砕かれたという事実。その事実が俺を興奮させる。
「良い攻撃力じゃねぇか!」
俺の感情の昂ぶりに呼応して一気に増えた内力を用い、砕けた左手の再生能力を向上させると、もう一度、左手でシルヴァリオの拳を受け止め、今度は防ぎきった。
「単純な能力のくせに」
「シンプルが最強さ」
俺は左手でシルヴァリオの拳をつかんだまま、刀を振るう。
首筋を狙った一太刀、けれどもそれはシルヴァリオが指先に挟んだ紙幣で受け止められる。
紙が俺の刀を受け止められるくらい強力になるのはスゲーけど、所詮は紙だ。
俺の内力の影響を受けて、俺の刀が真紅の光と高熱を帯びる。刃物としての切れ味は、並を遙かに下回る俺の刀は切断ではなく溶断する。紙で防げる訳がないーー
「――よいしょっと」
そう思った矢先、俺の刀はシルヴァリオの紙幣によって受け流された。
は? と思うより先に俺は掴んでいたシルヴァリオの拳を離し、即座に左の拳で殴りつけた。けれど、俺が拳を放った時にはすでにシルヴァリオは後ろに大きく跳躍し、俺と距離を取ろうとしていた。
俺は後ろに下がったシルヴァリオに向けて刀を投げつける。
その刀を紙幣で弾いたシルヴァリオだが、俺の攻撃はまだ終わらない。
投げた刀には紅糸をより合わせた紐が巻き付けてある。俺は紐を握りしめて振り回し、長く伸びた紐の先にある刀をシルヴァリオに叩きつける。
もっとも、その攻撃もシルヴァリオが指先に挟んだ紙幣で簡単に防がれる。
俺は諦めず、紐の先についた刀を振り回して仕掛けるが、シルヴァリオは両手の指先に挟んだ紙幣でこともなげ防いでみせる。
「キミにそんな技量はなかったと思うけどな」
ほんの僅か前まではシルヴァリオの紙幣は切れ味のある只の紙って感じだったのが、今や立派な剣として、術理をもって振るわれているように見える。
俺は紐を引っ張り、紐の先についた刀を手元に戻す。何度攻撃しても無駄なんだから、諦めよう。
そうして俺が刀を手元に戻したタイミングでシルヴァリオが前に出てくる──と同時に、俺は紐を振り回した。刀は手で握っているので、飛んでいかない。
じゃあ、何が飛んでいくのかというと、腰に差していた刀の鞘が勢いよくシルヴァリオに向かって飛んでいった。鞘にも真紅の紐をくくりつけてあるので、手元で操ることができる。
不意打ち気味に放たれた俺の鞘だが、シルヴァリオはそれも動じることなく、指先に挟んだ紙幣で弾いて防ぐ。
「業術の効果で技量を上げてんのかな?」
そうじゃなきゃ、こんなに見事に防げねぇだろ。
とはいえ、技量を上げるってのは何か違う気もする。
ま、判断材料が少ないし考えても仕方ない。兎にも角にも続けていこう、戦闘を。
俺は不意打ちも無駄だと分かったので鞘も手元に戻す。
そして俺は手に持った刀を鞘の中に収め、居合いの構えを取り、接近してくるシルヴァリオを迎え撃つ。
街中なので周囲の被害を考えるとランページやペネトレイトは使えない。
となればプロミネンス・ブロゥとかになる。だが今の俺は刀を持っており、刀を使用したブロゥに代わる技も持っている。
俺は迫るシルヴァリオに向けて、その技を放った。
「プロミネンス・ザッパー」
鞘の中に溜めた内力を炸裂させ、加速させた抜刀は真紅の残像を残して振り抜かれた。
俺の持つ最速に近い技。だが、シルヴァリオは俺の技に合わせて──
「瞬過五光」
今度こそ「は?」と思う。
シルヴァリオが指先に挟んだ紙幣で放ったのはゼルティうすの用いる剣の技。
なぜ、こいつが使えるのかと思った瞬間、俺の最速の斬撃と、ゼルティウスの用いる高速の剣技が交錯し、その刃がぶつかり合う。
互いの攻撃の威力を受けて、俺とシルヴァリオはどちらも吹っ飛ぶ。
俺は空中で身を翻して、着地するとシルヴァリオを見据える。
どこで、その技をなんて聞くつもりはない。
魔鏖剣を使えるのは俺とぜティ、後は・・・使徒の序列1位の奴が少し使えるだけ。使う奴が少ないのは技を編み出す時点で俺とゼルティウス向けに調整しているせいであり、教わってもできるようになるものじゃないからだ。
それが使えるようになってる時点で何かしらの仕掛けがあるとは思うんだが──
「剣星一迅」
考えるまもなく、シルヴァリオが紙幣を投擲する。
今までのように、ただ投げるのではなく、明確な技術を持って放たれた飛剣の技。
「プロミネンス・バッシュ」
俺は真紅の内力を帯びた刀を全力で振り下ろし、放たれた紙幣をたたき落とす。
シルヴァリオの放った攻撃の威力はそれまでと比べものにならないが、技が未熟であるせいか、本来の魔鏖剣の威力ではない。
俺はシルヴァリオの必殺の一撃を必殺の一撃をたたきつけることで防いだ。だが──
「遅い」
技を放ったと同時に動き出していたシルヴァリオが必殺の一撃を放って硬直していた俺の頭上を飛び越える。そして、すれ違いざまに指先に挟んだ紙幣を振り抜いた。俺の肩口が切り裂かれ、おびただしい量の血が吹き出る。
俺は俺の背後へと回り込んだシルヴァリオの姿を追って、振り向く。
そして振り向いた先でシルヴァリオは銅貨を宙に浮かべ──
「赤雷塵敵」
宙に浮いた銅貨を触媒とし、魔術によって生み出された真っ赤な雷が俺に襲いかかる。
今度はマー君の魔術かよ。
俺は腰に巻いていた紅衣を手に取り、マントの形まで広げ、迫る雷撃を紅衣で弾いた。
「放出するタイプは効かんか。なら、これはどうや」
次にシルヴァリオが使った魔術は「アダマントの槍」、これもマー君の魔術。
魔力で作られた黄金の槍が俺に向かって飛んでくる。俺はそれを刀で弾いて防ぎながら、シルヴァリオの懐へと飛び込む。
「小細工は良いけど、付け焼き刃は良くないと思うぜ?」
俺は袈裟懸けに刀を振り下ろす。
これで真っ二つ。と思いきや、俺の刀はシルヴァリオの肌に食い込まず、その肌をしたたかに打ち、体勢を崩させることしかできなかった。
「かたいやろ? アンタの攻撃はーーぶへっ」
固くても堅くても硬くても、ガイ・ブラックウッドほどじゃない。
俺は余裕ぶったシルヴァリオの顔面に拳を叩き込み、その体を吹っ飛ばした。
「硬いって言ってもガイほどじゃねぇんだよなぁ。知ってる? 俺の使徒のガイ・ブラックウッド。あいつの場合、筋力も化け物じみてるから、攻撃食らっても微動だにしないんだぜ?」
俺は悠然と歩きながら、刀を鞘に収める。
そして立ち上がろうとしたシルヴァリオの顔面を踏みつけるように蹴り、自力で起き上がるタイミングを奪うと、俺はシルヴァリオの胸ぐらを掴み、その状態で全力の拳をシルヴァリオの顔面にたたきつけた。
「プロミネンス・ブロゥ」
たたき付けたのは真紅の内力をまとった拳。
それはシルヴァリオの頭を消し飛ばし、その命を奪う。
もっとも、俺らは一回殺した位じゃ死なないわけだが──
「くそ! だから嫌やったんや! アンタとはまだ戦う時じゃない言うとったやろが!」
復活したシルヴァリオが悪態を吐く。
その体は死んだ瞬間に光の粒子となって霧散し、直後に死んだ場所から数メートルの位置で光の粒子が集まり、シルヴァリオの形をなしたのだった。
「色々できて、キミは楽しい奴だなぁ。好きになってしまいそうだぜ」
けっこう楽しく戦えてるから気分が良い。
互角とはいわないし、戦いの流れがどっちかに傾くと、一気に押し切られそうな感じは互いにあるが、まぁそれはそれで。
「もうちょっとパワーをあげていこうか」
俺は感情の高ぶりに比例して増加する内力をさらに身体能力の強化に回す。
「いや、かんべ──」
シルヴァリオが言い終わるより先に俺はシルヴァリオの懐に飛び込み、その脇腹を右の拳でえぐり混むように打っていた。打撃の威力で吹っ飛んだシルヴァリオの体がいくつもの屋根の上を跳ねていく。
「色々できるのは良いけど、前提としてシンプルな能力の高さがないとだめだと思うんだよね、俺は」
吹っ飛んだシルヴァリオを追って、俺は屋根の上を飛び移りながら移動する。
なんとか体勢を立て直したシルヴァリオは起き上がり、ゼルティウスの技を使って、紙幣を投げつけてくる。さっきは刀を使ってようやく防いだのだが、今回は俺は素手でつかみ取った。
「キミにゼティと同じ程度の技量があれば、こんな風には防げないんだろうけどね」
シルヴァリオが続けて魔術を放とうとするが、その発動より素早く距離を詰めた俺はシルヴァリオの鳩尾に拳を叩き込む。普通の奴だったら、これで終わりだが、シルヴァリオは倒れず、反撃を行ってきた。
指先に挟んだ紙幣の刃が俺に迫るが、それが俺に届くよりも先に俺の拳がシルヴァリオの顔面を打ち抜く。
「技術があっても基本能力の差があると、どうしようもねぇなぁ」
たたらを踏みながらも体勢を立て直し、攻撃を仕掛けてくるシルヴァリオ。
紙幣の刃がまっすぐに俺に迫るが、それはフェイント。軌道を変えた刃が俺に襲いかかるが、それも罠。本命はもう片方の手にいつの間にか用意されていた紙幣の刃。
もっとも、その攻撃を俺は手刀でシルヴァリオの手を叩き落として防ぎ、同時にシルヴァリオの足を蹴りで払って転倒させる。
「技量が上がってると言っても、その程度じゃステータスの差を覆すほどじゃねぇんだよなぁ」
「この──」
シルヴァリオは仰向けのまま、俺に向かって金貨の弾を撃つ。それを俺は手で簡単に受け止める。
「さぁ、どうする? まだ何かあるだろ? キミのツラにはまだ余裕がある。出し惜しみしてたら、もったいないぜ? このまま死ぬかもしれないんだしさ」
「だから、俺はまだアンタと戦う準備はできとらんと言うとるやろ。出し惜しみしてるわけじゃなく奥の手の準備ができてないだけや」
「常在戦場って言葉を知ってるかい? いつでも使える切り札くらいは持っていようね」
奥の手は無しか。そりゃつまらんね。
まぁ、完全に萎えるほどではないけどさ。
「機会を改めるってのはどうや? 今の俺を倒しても面白くないやろ」
「それはまぁ、その通りだけど、今のキミも面白くないわけではないから、今ここで俺は戦ろうと思うね」
「話が通じへん」
通じてるよ。ただ、俺はキミの意見に寄り添うつもりがないだけ。
俺が近づくと、シルヴァリオはとうとう諦めたのか肩を竦め──
「しゃあない。手の内は見せたくなかったんやけど」
シルヴァリオは懐から取り出した金貨を屋根の上から通行人のいる大通りにばらまいた。
金貨の雨が降り注いだことで通行人は足をとめ、突然、頭の上から落ちた金貨を拾い集めようとしている。そんな中でシルヴァリオは──
「俺に力を貸せや!」
どういうことだ? そう思った瞬間、俺はぶっ飛ばされていた。
衝撃で屋根から転げ落ち、通行人のど真ん中に落ちた俺を屋根の上から見下ろすシルヴァリオ。
「なるほど、なるほど」
なんとなく能力が読めてきたぞ。
シルヴァリオがパワーアップしたのは金貨をばらまいてから。
じゃあ、ばらまくのが大事? いや、違うだろう。
金貨を受け取ってもらうのが大事なんだ。そして、受け取ってもらった上での「力を貸せ」という言葉。
「能力を金で取引するって感じかな?」
正確には違うだろうけどイメージはあってると思う。
俺は予想を口にしながらシルヴァリオのいる屋根の上へと飛び乗る。
シルヴァリオは逃げようとしていたようだが、追いかけてきた俺を見て足を止めると、ウンザリした表情で向き直る。
「取引というか、金で能力を買うか借りて自分の物として扱うって感じか」
「ちょっと見せただけで分析されるとか、戦い慣れしすぎやろ」
自分の能力を分析してくる俺を見て嫌そうな顔を浮かべるシルヴァリオ。
けれど腹をくくったのか──
「ま、その通りや。俺が金を払ったら、俺から金を受け取った奴の持ってる『力』が俺に加算される」
ってことは──
「あんたも察しとるように、俺はゼルティウスとマーク、それにガイへ金を払って能力をもらっとる。ゼルティウスからは剣術、マークからは魔術、ガイからは防御力ってな感じや」
「じゃあアイツらにあったの?」
「ああ会ったで。アイツら金に困ってたから、金を貸して、代わりに力を貸してくれと言ったんや。それだけで、俺は多少なりともアンタの使徒の力が使えるし、それに──」
シルヴァリオの姿がかき消えたと思った瞬間、シルヴァリオが俺の目に前に現れ、拳を突き出してくる。とりあえずガード。
そう判断し、腕を体の前で壁にするが、俺の判断は間違っていた。シルヴァリオの腕力はそれまでと比べものにならず、ガードした腕を砕かれ、俺は後ずさる。
「さっき、ばらまいた俺の金を受け取った奴らの身体能力が俺に加算されるんや。数にして100人くらいやろうな。今の俺はそれくらいの人数分の力がある」
「100人程度の力が上乗せされたところで、俺に勝てるとでも?」
「そもそも勝てると思うとらんよ」
あっそう。でも、逃げずに戦る気あるんだね。
じゃあ、俺も気合いを入れていこう。
俺は全力で駆け出す。同時にシルヴァリオも動き出し、俺たちは一瞬でお互いを間合いに捉え、そして互いに相手の顔面に拳を叩き込んだ。
頭が吹っ飛びそうになって最高に気分が良いぜ。
もっと、俺を殴ってくれてもいいんだぜ? 俺もキミを殴るから楽しく戦ろうじゃないか。
俺はその場から動かずにこらえ、追撃の拳を繰り出す。シルヴァリオの方も同様に一発を俺の胴体に叩き込んだ。
「うーん、最高」
胴体が軋み、コレ何発も食らったら死ぬなって気分になってくると脳みその奥がハッピーハッピーになり、そこに一発パンチを食らってマジで飛んだ。
脳の奥の方からハッピーな気分になる物質が無限に湧き出てきて、いけるところまでいってやろうって感じになりながら、俺はシルヴァリオの顎をアッパーでかちあげる。
「もういっちょ!」
脇腹をえぐりこむように打つ。シルヴァリオの体がくの字に曲がる。
俺は手を止めずにワンツーのジャブ。それから右フックをこめかみにあてる。
よろめいたシルヴァリオが俺に組み付いてこようとするが、頭をつかんで逆に俺の方へと引き込みながら、膝を跳ね上げ、顔面に膝をぶち込む。
「ちょっと待っ──」
さらにもう一度アッパー。
それを食らったシルヴァリオが大きく後ずさる。
気分が上がってるから待つなんてしないぜ。
このままけりをつけようじゃないか。
俺は腰の鞘から刀を抜き放ち、前に踏み込みながら、首を狙う軌道で刀を振り抜いた。
俺の放った刃は吸い込まれるようにシルヴァリオの首筋を捉え、その首をはねとばす。
そして胴体と切り離された頭部は放物線を描きながら、屋根の上から大通りへと落ち、通行人の悲鳴が屋根の上にいる俺にまで届く。
さて、俺も降りて、決着をつけにいこうとするか──




