道草道中
シルヴァリオ・ゴールドとの戦闘から一晩も経たず、村を後にして王都へと旅立った俺達。
その旅路は比較的順調なもので、具体的に何があったかというと──
「ていっ」
村を旅立ってから数日後、俺は小高い丘くらいの大きさがある大蛇の首を刀で灼き斬り、刎ね飛ばした。なんで、そんなことがあったのかというと、立ち寄った村で村の守り神に生贄を差し出す儀式の真っ最中で、そこの村長に騙されてミルフィが生贄にされてしまったので、守り神──というか実際は只の大蛇の魔物を俺がぶっ殺す羽目になってしまったというわけ。
俺は話が通じない生物を殺す事に躊躇いは無いんで、問答無用でぶっ殺しました。
村長は大蛇が只の魔物であるってのは知っていたようだけど、村の安全のために生贄を差し出していたんだってさ。生贄は村人の時もあれば、偶然立ち寄った旅人だったりしたんだとさ。で、今回は幸か不幸か、俺達が生贄になったけど、まぁ魔物は殺したんで問題解決。
「村のためだってのは分かるけど、こういうことするのは良くないから、もうやめてね」
俺は反省を促すために村長を何発か殴った。
まぁ、色々と理由はあるんだろうし、そもそも人殺しは好きじゃないんで半殺し程度にしておきました。
で、その次には──
「とりゃ」
山道を進んでいたら山賊に襲われたんで撃退した。で、うっかりミルフィが攫われてしまったんで、山賊のアジトに乗り込んで全員半殺しにしてやりました。
山賊のアジトには大量の財宝があって、相当に悪さをしてるんだろうなぁってことは明らかだったけど、俺は人間を殺すのが好きではないんで、悪人であっても殴るだけで済ませてやる。つーか、悪人だったら殺しても良いってのは下品な考えだし、俺好みじゃないんだよね。
「あまり悪いことはしないようにね。真面目に働くのが一番だと思うよ」
その次は民に重税を課し、圧政を布いている悪徳貴族の領地を通り過ぎようとしたんだけど、ラスティーナが正義感を発揮したり、ミルフィが悪徳貴族に見初められて拉致られたりしました。とはいえ、特に問題は無かったけどさ。
悪徳貴族のおじさんはクソ野郎で最低のゴミなのは間違いなかったけど、個人的には面白い奴だったし、俺とも話が合って仲良くなれたんでね。
「もうちょっと自分の領民には優しくしてくれた方が俺も嬉しいね」
悪徳貴族のおじさんと友達になったんで、友達として忠告がてらそんなことを言うと、「それもそうだな」って納得してくれました。
暴力を使わずに話し合いで解決するのもたまには良いよね。まぁ、善人になったわけではないんで、これからも領民は苦しむかもしれないけど、それは領民の人たちが何とかするべきことだと思うんだよね。
ちなみに、ミルフィは特に何事も無く回収できました。
さて、ここまで色々とあったら、そろそろ何事も無い平穏な旅になるかと思いきや──
「プロミネンス・ブロゥ」
森を抜けようとしたらエルフの隠れ里に足を踏み入れてしまい、そこにいた神獣──真っ白い毛皮の巨大な狼の頭を俺の必殺技で消し飛ばす羽目になった。
エルフの連中はアウルム王家に恨みを抱いているらしくて、ラスティーナとミルフィの姿を確認するなり神獣を問答無用でけしかけてきたんだよね。
まぁ、俺は動物嫌いだから、なんの抵抗も感じず、ぶっ殺しました。関わりあいになる動物なんて人間だけで充分なんだよね。
自分達から神獣というか狼をけしかけてきたくせにグチグチ言ってきたエルフ共。俺はエルフは人間の範疇に入れていないんで、あんまり煩くてこっちに殺意を持ってる奴は始末して黙らせた。
エルフはどんだけ長生きしてても、そこまで強くならないから好きじゃないんだよね。つーか、自我が弱いから業術も瑜伽法も習得できないし、生かしておいても人間ほど俺の利益にはならないから、生かしておく気が起きないんだよね。
どこの世界のエルフも復讐とかに積極的じゃないし、それも生かしておくメリットに繋がらない。俺が
殺しを避けるのは俺に復讐しに来てほしいからで、それが無いのに敵を生かしておく理由も無いだろ。
エルフの隠れ里と大揉めしてから数日後、ようやく俺達は王都に近くまで辿り着いたわけだが、そこでもトラブル。
暗殺者ギルドとかいう連中がラスティーナとミルフィを襲撃してきたので、返り討ちにしてやった。ついでに、そいつらのアジトまで乗り込んでそこにいた全員を半殺しにして暗殺者ギルドを崩壊させてやった。
「人殺しは良くないからこういうことはやめようね。あぁ、俺を憎むなら是非とも復讐に来てね。復讐に来ても殺さないで帰してやるから、ビビらずに襲ってきてね」
人殺し連中だからって俺がそいつらを殺さなきゃいけない理由はないよね。
俺は人間を殺すのが好きじゃないから、なるべく殺しませんよ。まぁ、必要に迫られたら殺すけどさ。
──まぁ、こんな感じで順調に旅をして俺達はようやく王都に到着しました。
トラブルと言うほどのトラブルもなく──俺一人だったら、もっとヤバい出来事に巻き込まれたか、自分でヤバい出来事を起こしていたから、相対的には問題の無い旅だったね。
さて、文句のありそうなラスティーナに旅の感想でも聞いてみようか?
そう思ってラスティーナの方を見ると、ラスティーナは──
「なぜ、貴様は悪を見逃す?」
俺は旅の感想を聞いているのであって、キミの疑問に答える時間をとったわけじゃないんだけど。
まぁ、答えなきゃ文句が続きそうだし、素直に答えてやろう。ただ、キミのお城に着くまでの間だけね。
「俺が悪人を殺さなかったことが不満なのかな?」
嫌だねぇ、悪党だから殺しても良いとか野蛮人過ぎて俺みたいな都会育ちはドン引きだぜ。
「善と悪ってどこで線引きをすればいいのかね? そもそも俺は彼らの悪事を全て見聞きしてるわけでもないのに、自分が受けた直接の被害だけで、相手を悪人と断じるって、お行儀がよろしくないと思うけどね」
俺らには酷いことをする奴でも、俺ら以外には善人である可能性もあるし、そういう可能性を無視して裁くってのは独善であるし、独善ってのは善悪の線引きをした場合、善と悪のどっちの側に立つんだろうね?
「キミがどういう考えを持ってるかは知らんけど、自分が裁く側に立たなければいけないって思うのは相当に傲慢だと思うね。俺らが殺さなくても、俺が見逃した連中が悪であるならば、いずれは何処かの誰かの正義に殺されるんじゃない?」
放っておいても良いとも俺は思うんだよね。本当に我慢が出来なくなった奴が何とかすればいいのさ。
それは俺自身にも言えることで、まぁ、俺は今回我慢できる感じだったので殺さなかったけど、俺も我慢が出来なかったから殺してたと思うよ。
「……どんなにクソみたいな悪人であっても許してやることは必要だと思うよ。悪もそれを生み出す弱さや愚かさを許し、弱者も愚者も許してやれる寛容さがないと、世の中ってのはどんどん生きづらくなると思うんだよね。だから、俺だけは許してやるように努力するのさ。ま、それを押しつける気も無いし、他の誰かが、弱者も愚者も許さなかったとしても、それはそいつの自由だし文句は言わないけどね」
だから、俺が見逃した奴が俺以外の誰かに殺されても俺は何も思わない。
俺にとって重要なのは、俺が見逃してやったっていう、俺が自分の生き方を貫いたという事実だけだ。
「俺としては人の上に立つ奴ほど許す心を持ってほしいんだけどね。まぁ、それを押しつけるのは良くないんだけどさ」
俺の言っていることも極端だしなぁ。
ま、文句が出るのは仕方ないよ。でも、俺はそういう生き方を選んでるわけだしさ。
そもそも、生かしておくのは復讐しに来てくれねぇかなぁっていう俺の都合でもあるしね。
俺は善悪の価値観で見逃してるわけじゃなく、好き嫌いと自分の利益を天秤にかけて判断してるわけだしさ。
「何か言いたそうだね。御自由に発言をどうぞ」
ただし、お城に着くまでね。それはつまり、もう質問タイムは終わりってこと。
だって、俺達の目の前には王様が住む城の門が目の前にあるからさ。




