アロンデイルの物語(1)
──さて、どこから話したもんかな。とりあえず、アロンデイルに向かう直前の事から話すとしようか。
あれはどれくらい昔のことだったかな? 100年とか200年くらい前の事だったか。まぁ、1000年も昔ってことはなかったと思う。
その頃の俺は──っていうか、その頃も俺は強い奴を探して、色んな世界を渡り歩き、あちこちで喧嘩を売り歩いていたんだよね。といっても、喧嘩を売る相手は基本的には源神──神としては俺と同格の存在だったけどさ。
一応言っておくけど、邪神とかは源神の中の分類の話で、俺も源神だっての忘れてないよね。
──まぁ、とにかく、俺は強いって噂されてる神の所に行っては、喧嘩を売り、最終的には滅ぼすってことをあちこちの世界でやってたわけ。
──で、アロンデイルに向かう直前も、俺は他の源神と喧嘩をしてたんだよね。
『──おいおい、つまんねぇなぁ。どうしたよ、達者なのは口だけかい?』
こんな風に煽りながら、戦ってたのさ。
まぁ、強いって噂されてても、大抵の源神は力があるだけのクソ雑魚で、本気の殺し合いになるとサッパリなのよ。
でも、その割に自分の強さに自信を持っている奴が多くてさ。アロンデイルに行く直前に戦った奴もそういう奴だったよ。
そいつの名前は忘れちまったな──というか、最初から覚える気も無かったね。
その時の俺はそいつの住んでいた神域にカチコミをかけたんだよ。
まぁ、神域の趣味が良かったことくらいは覚えているよ。
空を見上げれば満点の星空、そこにそいつが源神の力で創った世界が惑星として、いくつも浮かんでいる。でもって、下を見ると、地球みたいな星がある。
そいつの神域は宇宙空間に浮かんでいるみたいな感じでね、それが俺の好みだったんだよね。
ま、結局ぶっ壊したけど。
『マスター、ここは私にお任せを!』
『主よ、貴方の害する者は私が斬る!』
その源神はハーレムを作ってたみたいでね。
俺はそいつとだけ戦ろうと思ったのに、そいつの取り巻きの女が俺に襲い掛かって来たんだよね。
まぁ、指先一つで焼き払ったけどさ。
『男の喧嘩にオナホがしゃしゃり出てくるんじゃねぇよ!』
まぁ、割とキマってた頃だからね。ちょっと興奮するとこんな暴言も出ちゃったのよ。
『よくも!』
まぁ、お気に入りの女の子が殺されれば怒るのは当然だよね。
でも、当時の俺はそういう態度もなんだか気に入らなくてさ。
『そんなに大事なオナホなら、テメェのイカくせぇ部屋にでもしまってろや!』
……あんまり引いた顔をしないでくれる?
俺だって結構な黒歴史を恥を忍んで話してるんだぜ? そういう気持ちを汲んで欲しいね。
まぁ、俺がキミらの立場だったら、汲まないけどさ。
『本気で来いよ! 本気でさぁ! 本気で俺を殺そうとしなきゃ、テメェの創り上げたもんは全部ぶっ壊れるぜ!』
そんなことを叫んだ直後に、星空に惑星の形で浮かんでいた世界が真っ二つになったり、粉砕されたり、燃え上がったり。
覚えているかな? マー君も共犯だよね。その時に吹っ飛ばした世界の一つはマー君がやったんだよね。
『ほら見ろよ! 俺の使徒がテメェの使徒をぶっ殺して、テメェの創った世界をぶっ壊して回ってる。手下の強さは俺が上! となれば、テメェが出るしか、テメェの創ったものを守る手段はねぇんだよ! ほら、さっさと俺を倒すんだよっ! 俺をぶっ殺して見せろ! お前の強さを刻みつけてくれ!』
俺は使徒の連中も一緒に連れて来ててね。その源神が創った幾つもの世界に送り込んでおいたんだよ。で、一斉に制圧をした感じ。
『殺してやる! 貴様は絶対に殺す! 徹底的にやってやる!』
『いいぜ、その意気だ! 口だけじゃない所を見せてくれ! 俺を殺し、徹底的に痛めつけ、屈辱を刻み、絶望に沈めてくれよ! そして、俺に諦めることを教えてくれ!』
まぁ、こんな感じで戦闘は始まったんだけど──
『──はぁ、もういいや』
マトモな戦闘にもならず、俺の圧勝。
まぁ、実力差があるのは最初から分かってたけどさ。でも、大切な人や物を失った怒りで覚醒して、ご都合主義的に俺をぶっ殺せるくらいパワーアップするかもしれないじゃん。
どうして覚醒しないのか、なぜ新たな力に目覚めないのか、なんで奇跡は起きないのか。結局、順当に俺が勝って、その源神は消滅。
俺は萎えた気分で、その場に座り込んで、近くにあった瓦礫にもたれかかる。アンニュイな雰囲気を発しつつ、何もやる気が出ない感じを出しながらね。
上を見ると、星の残骸が宇宙を埋め尽くし、下を見れば、地球みたいな星が砕けて散らばってた。
『──ご満足いただけましタカ?』
なんもやる気が出ない時の俺に話しかける役はアダム・アップルシード。
使徒の序列は今は六位。まぁ、当時は七十二使徒じゃなかったし、序列もなかったけどさ。
アダムの事はマー君もセッシーも知ってるよな。セッシーに至ってはアダムからスカウトを受けたんだもん、当然だよね。
……キミらはアダムの話になると顔が明るくなるねぇ。
俺との好感度の差が凄まじいんだけど? え、なになに?
アダムは強くて、顔が良くて、優しいから好き?
へぇ、そうなの。俺も強くて、顔が良いんだけど。
キミらの評価基準の内の2/3を修めてるんだけど、どうしてか俺の好感度はアダムの2/3ににも届いてない気がするね。まぁ、どうでもいいけど。
それはさておき──
『はぁ……やっぱり、噂を鵜呑みにするのは良くないね。期待外れだったよ』
『お気持ちお察し申し上げマス。……ところで、この後はどうされまスカ?』
『もーどうでもいいよー、好きにしといて』
戦う前は熱くなってたけど、始まったら一気に冷めて、終わったら、もう何もやる気がなくなってしまうんだよね。期待外れの相手だといつもこうなる。
勝手に期待して、勝手に失望すんのはお行儀が悪いと思うけど、そういう性格なんだからどうしようもないね。
『承知しまシタ。では、いつものよウニ』
そう言うとアダムは宇宙に浮かぶ星の残骸に手を向けた。
すると、星の残骸が元々の場所に戻り、そして集まっていく。その様をボンヤリと眺めながら、俺は欠伸をしていたんだよね。だって、いつものことだし。
眺めていると、星の残骸は元の星の形に戻る。
そこから更にアダムが内力を送ると、星は逆再生するように元の姿に戻っていった。
自然も人工物も星が砕ける前の姿と同じ。アダムはその作業を同時に数百の星に対して行うことができる。
俺がぶっ壊した後に直すのは全部アダムの仕事なんで、これに関しても俺は特に何も思うことは無かった。
『後はよろしくお願いしマス』
『はぁ、めんどくせ』
俺が軽く指を振ると、アダムの直した星に全ての命が蘇る。
人間もそれ以外の生命体も星が壊れる直前の状態まで戻す感じで生き返らせ、これで俺と俺の使徒が壊した世界は元通り。
喧嘩の相手──源神を怒らせるためだけに壊したんだし、元に戻すのは当然だよね。遊んだ後はお片づけをしなきゃな。どんなに面倒でもさ。
『……それで、キミらはどうすんの?』
俺らが殺した奴らを生き返らせたら、この世界群を創った源神の手下も生き返らせることになるわけで、俺が殺した源神の仕える女達も生き返った。源神は自力で復活するしかないんで、生き返ってない。
『俺に復讐したいなら、そのうち殺しに来てよ。相手してやるからさ』
そうしてくれた方が嬉しいんだよ、俺はね。
俺が期待を込めた眼差しで女たちを見ると、そいつらは怯えた表情で逃げてしまった。
そういえば、あの女達はどうしたんだろうね? 結局、俺の所には来てないけどさ。
自分の所の源神も復活してる頃だし、そいつとよろしくやってるのかな?
『あぁ、つまんねぇなぁ。死にたくなってくるぜ。……シストラぁ!』
俺が名前を呼ぶと執事服を着た銀髪の男が空間移動を使って出てきた。
セッシーは知らないと思うけど、システラの前の『倉庫番』だよ。
シストラ・シニストラ──俺と敵対して廃棄された奴だ。まぁ、この時は味方だったよ。
『飲み物』
俺が注文すると、シストラは何も言わず、虚空からエナジードリンクの缶を出すとプルタブを開けてくれて、そこにストローを差して、俺に差し出してきた。
俺は缶をシストラに持たせたまま、ストローを咥えた。だって、自分の手で持つのも面倒くさかったしさ。
『お休みのところ、失礼します』
ダラダラしてると、空間移動を使って執事服を着た金髪の男が姿を現した。
こっちはデストラ・デクストラ。俺の『庭師』──まぁ、ぶっちゃけると闘獄陣の管理を任せている人造生命体で、今も現役。
『ナハトセーレ様から、お便りが届いております』
『ナっちゃんからかぁ』
ナっちゃん──ナハトセーレってのは俺の友達の邪神ね。
純粋な神様としての力は俺と互角かナっちゃんの方がちょっと上だけど、性格とかが戦闘向きじゃないし、戦っても面白い相手じゃないし俺が絶対に勝つのが分かってるから、友達として付き合ってる神様ね。
『また、ウザがらみをしてくる雑魚源神を殺してきてってお願いだろ? そういう気分じゃないんだよねぇ。デストラ、中身を読んで、内容だけ教えてくれよ』
まぁ、結論を先に言ってしまうと、そんなお願いじゃなかったんだよね。
『……どうやら、今回は違うようです。純粋な情報提供のようで──』
『どんな情報?』
『グラブラガルという源神が治めている、とある世界のアロンデイルという国に何か面白いものがあるそうです』
『……期待できねぇけど、今より退屈になることはないだろうし、行ってみようかな』
そんなわけで俺はアロンデイルに行くことにしたんだよね。
──長いって?
自分で話しておいてなんだけど、話す必要が無いことも多かったね。
まぁ、次は俺と嫁さんの出会いの話をするからさ、それで勘弁してよ。




