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魔鏖剣まおうけん一の型、炎星一迅えんせいいちじん


 柄頭に全力のプロミネンス・ブロゥを叩き込んで撃ち出した俺の刀は強烈な真紅の光を纏い、ラ゠ギィに向かって弾丸のような速度で飛翔する。

 俺流のアレンジを加えた魔鏖剣だ。本来は剣に纏わせた内力を空気中の魔力や気に反発させて加速させる技だが、俺の場合はぶん殴った衝撃で加速させる。俺はゼティほど剣が達者じゃないんで、威力と速度を出すにはこうするしかない。


 俺の撃ち出した刀は一直線にラ゠ギィへと向かう。

 ラ゠ギィはダメージの蓄積のせいか、動きが鈍い。

 俺は直撃を確信し、その瞬間を見届けるためにラ゠ギィを見据える。

 そして次の瞬間、刀はラ゠ギィに直撃、それと同時に刀に込められた俺の内力が炸裂し、真紅の内力の奔流がラ゠ギィを呑み込んだ。


「……ちょっとやり過ぎたか?」


 内力を込め過ぎたかもな。

 思っていたよりも直撃と同時に起きる爆発の規模が大きい。

 アリーナに張られた結界が軋んでいるし、爆発でラ゠ギィの姿が見えない。

 ここで「やったか」とか言うとお約束の展開になりそうだね。だから、俺は何も言わないようにしたわけだが──


「──まだだ……っ!」


 俺が何も言わずともラ゠ギィは爆発の中から飛び出してきた。

 体の大半が炭化してはいるが、手足を失うことも無くラ゠ギィは俺に向かって突進してくる。

 そうして走ているうちにラ゠ギィの傷は癒え、俺に向かって棍を突き出してくる。

 だが、再生に内力を使いすぎたせいか、身体能力の強化に内力を割けていないようで、その動きは容易く見切れる遅さだ。

 俺は突き出された棍を手で弾いて防ぎ、反撃の前蹴りをラ゠ギィに向けて放つ。

 その蹴りを鳩尾に受けてラ゠ギィは衝撃で後ずさる。


「そろそろ限界かい?」


 下がったラ゠ギィを追って俺は前に出る。

 すると、都合よく俺の刀が目の前に落ちてきたので、俺はそれを掴み取り、刀を携えてラ゠ギィとの距離を詰める。


「まだ──と言ったはずです」


 そうみたいだね。俺を見るラ゠ギィの眼にはまだ力があり、言葉にも諦めは感じられない。

 まったく、やめてくれよ。こんだけぶちのめしても、戦る気が萎えないとか、好きになり過ぎてぶっ殺したくなっちまうだろ?

 俺は刀を振りかぶり、ラ゠ギィの首筋に目掛けて、真正直に刀を振るう。


 変則的な動きの中にこうしてスタンダードな攻撃を混ぜるのが良く効くんだ。

 まさか、何の仕掛けも無いとは思わなかったって感じにな。実際、ラ゠ギィも俺の作戦に嵌まり、明らかに反応が遅れる。太刀筋が変化すると思い込んで、ギリギリまで見極めようとすれば、そうしている内に躱すのが不可能なタイミングに陥る。


 ──だが、ラ゠ギィは迫る俺の刃を予想外の方法で回避した。

 ラ゠ギィは普通の方法では回避が不可能と見るや、自分の胸を拳で叩き、自分自身に流撃を叩き込んだ。

 その衝撃でラ゠ギィの体は吹き飛び、俺の刃の間合いから逃れる。


「なるほどね。さっきの俺の技も、そうやって耐えたのかな?」


 実際はどうだか分かんないけどさ。

 おそらく、俺の魔鏖剣が当たる直前に足元に流撃を叩き込み、自分を中心に衝撃波を発生させて、それを障壁にすることで、俺の技を耐えたんだろう。ただまぁ、そんな真似をすれば自分の放った流撃に巻き込まれてダメージを受けるだろうけどさ。


「だけど、そんなことをしても一時しのぎだ」


 俺は自分の技でダメージを受けて吹き飛びながらも、結果として俺の間合いから逃れることに成功したラ゠ギィを見据えて構えを取る。

 右手で持った刀の刃を左手で握り締めた居合いあいの構え。

 そして、自分の手を鞘に見立てた居合抜きを行う。


「魔鏖剣五の型、灼過五光しゃっかごこう


 手の中を走り、抜き放たれた刃の軌跡に沿う形で真紅の内力がラ゠ギィに向かって駆ける。

 それに対してラ゠ギィは棍を構えると──


「流撃・羅穿らせん


 棍を突き出して流撃を放つ。

 捻りを加えた突きに伴って放たれた流撃は俺の放った真紅の内力を相殺する。

 だが、それは俺にとっては囮みたいなもんだ。俺は技を放った直後に既にラ゠ギィに向かって駆け出していた。


「トドメといこうか」


 刀を手に持ち、距離を詰める俺に対してラ゠ギィは即座に反応し、足元を薙ぐように棍を振るう。

 俺はその一撃を刀で払いのけようとするが、そうして防いだ瞬間にラ゠ギィは棍で俺の刀を巻き上げて、真上に弾き飛ばす。


「まだまだ元気だね」


 刀を失った俺は後ろに下がる──ようなそぶりを見せるが、その動きを見せた瞬間、ラ゠ギィの棍が閃いて俺の側頭部を打つ。

 衝撃で俺の体がぐらりと揺れる。だが、俺は堪えることはせずに、受けた衝撃に身を任せてその場に倒れこむ──と見せかけて、地面に手を突いて逆立ちをする。


 すると、逆立ちして天にまっすぐ伸びた足に刀が落ちてきて、俺は刀を右足の指で掴もうとする──だが、その足をラ゠ギィの棍で叩き落とされる。

 左足は靴を履いている。だから、足の指で刀を掴むということはできない──なんてことはない。刀は左の足裏に落ちると、そこへ接着剤でもついているかのうように張り付いた。

 俺は刀が張り付いた足を逆立ち状態でラ゠ギィの顔面に向かって足を振るう。足に張り付いた刀がラ゠ギィの眼を掠め、その視界を奪う。


「言ったろ? この刀は手に馴染むってさ。それこそ吸い付くように馴染むのさ」


 俺の内力を流すと、俺の体から離れなくなるのさ。俺の刀はね。

 俺は起き上がって足を振り上げる。すると、刀がその勢いで足から離れて宙を舞う。

 そして俺は落ちてきた刀を手で掴み取ると、再び刃を左手で握り締める。


「魔鏖剣五の型──」


 危険な一撃が来ると予感したんだろう。

 視界が奪われているのに気配だけでラ゠ギィは俺に向かって棍を突き出し、俺の技を妨害しようとする。もっとも──最初から俺は撃つ気は無かったんだけどね。


 俺は左手で刃を握りしめた状態のまま刀を突き出す。

 柄頭がラ゠ギィの胸元を突き、棍が俺に当たるより先にラ゠ギィの体勢を崩す。

 そうした上で俺は刃を握りしめた左手だけで刀を持つと、そのまま振り抜き、ラ゠ギィの頭を刀の鍔部分で殴りつけた。


 思いもがけない衝撃にラ゠ギィの体勢が更に崩れる。

 俺はそれを見届け、刀の柄を右手で持つ。


「言ったろ、トドメを刺すってさ」


 既にラ゠ギィの残機はゼロに近いだろう。

 俺はトドメを刺すために刀を振り抜き、ラ゠ギィの首を刎ねる。

 刎ね飛んだ首は宙を舞い、その間に俺は残ったラ゠ギィの胴体を袈裟がけに斬り裂く。

 胴体が地面へと崩れ落ちると同時に、ラ゠ギィの首も地面へと落ちる。


 ──すぐさま再生する気配は無い。

 残機を完全に使い切ったか、それとも諦めて死んだふりをしてるのか。

 まぁ、それを確かめる時間も無いんだけどね。


「──し、勝者アッシュ・カラーズ!」


 審判がひきつったような声で俺の勝利を宣言する。

 審判がいるの忘れてなかったかい? 復活しないのが分かれば審判だって試合を終わりにするさ。

 でもって、試合が終わった後で完全に死んだかを確かめるために追い打ちをかけるのは、人の目もあるから、ちょっとやりたくない。


 俺は刀を収め、アリーナを後にする。

 歓声もブーイングも何も無い。感じられるのは俺に対する観客の恐怖だけ。

 ちょっと派手にやり過ぎてしまったようだね。




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