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城からの脱出

 

 領主の息子(シウス)のご機嫌取りのために戦うことになった俺とギース。といっても、ギースの方は仕方なくって感じではなく、積極的に俺をりたいようだがな。

 まぁ、それも当然か。伯爵の隠し子を見つけるって手柄を挙げられると思ったら、当てが外れて恥をかき、シウスの不興も買っちまったからな。シウスから俺を殺せば許してもらえると言われれば必死にもなるだろう。


 ギースは俺への殺意を隠そうともせず、腰に帯びた鞘から片手剣を抜き放ち構える。ギースの見た目は鎧を着こんだ騎士のそれだが、手にした片手剣は騎士の使う武器という感じではなく、構えもまた騎士らしくない。


「恨みはないが、私のために死んでくれ」


 恨みが無いってことはないだろ。俺のせいでこんな状況になってんだからさ。ついでに、お前は恨みとか理由が無くても人が殺せる人間だろうから、申し訳ないみたいな雰囲気を出さなくても良いぜ?



「ごちゃごちゃ言わずにかかってこいよ。飼い主様が退屈されてるぜ?」


 俺の言葉にギースがスッと目を細める。

 さて、俺の言葉の何が気に食わなかったのか。犬みたいに媚びへつらってるくせに犬扱いされるのが嫌なのかね。だとしたら、そんなストレスの多そうな生き方はやめたほうが良い。

 そう思って俺が忠告しようとするが、俺が口を開いた瞬間、ギースは片手剣を前に突き出した構えで、俺の方に突っ込んできた。


 ギースの構えはフェンシングのように片手剣を前に突き出したものだが、フェンシングとは異なり突くのではなく斬りつけてくる。

 そうなると腰の回転などを使えないので、どうしても手や腕だけの力で剣を振り回すことになるので一撃が軽くなる。代わりに剣と壁のように前に突き出した状態になるため、相手から少しは遠ざかることができる。


「もう少し積極的にやろうぜ?」


 俺がギースの腕だけで振り回した剣を避けると、ギースは即座に距離を取るが、その間合いが遠すぎた。

 先ほどのギースの踏み込みを思い出すと、全力で距離を詰めたとして、刃は俺の胴体を狙ったとしても皮膚を掠めるくらいしかできない。


 しかし、それでもギースは前に出て、腰を入れない、手だけで振り回す剣を俺に向けて放つ。その軌道はとにかく、俺の体に触れれば良いという物で致命傷を与えるなど全く考えていない様子だった。

 しかし、そういう露骨なことをされれば、何を考えているか気づくもので──


「剣に毒を塗ってるな?」


 ギースの振るう剣を躱しながら、俺は仕掛けを看破する。

 致死性の毒でも剣に塗っているなら、かすめるだけで充分だ。相手に深く切り込む必要はない。


「く、気づかれたか」


 そりゃあ分かるよ──そう言おうと思った瞬間、ギースが身に着けていた籠手の左手首から俺に向けて矢が放たれる。

 籠手の中に超小型の絡繰からくり仕掛けの弓を仕込んでいたんだろう。それによって放たれた矢が俺に迫るが、俺はそれを普通に手で掴む。

 そんなに速い矢でもないから掴むのは問題ない。しかし、ギースの狙いはそれだけではなく、矢が放たれるのとほぼ同時にギースの口から含み針が放たれていたので、それも指で掴み取る。


「なんだと!?」


 ここに来てギースは本気で驚いた様子を俺に見せる。

 どうやら、この一連の手管はギースにとって必勝のパターンだったようだ。そうでなければ、本気で驚いたりはしないからな。

 毒を塗った剣という仕掛けを看破し、優位に立った気になった相手に仕込み弓を射かけて不意打ち。それと同時に視認が難しい針を口から吹き出して相手に突き刺す。

 剣に限らず、矢にも針にも毒を塗っているという周到さもあり、ギースはこの手で何人もの相手を仕留めてきたことから、この一連の手管に自信を持っていたようだ。


「小細工はもう良いかい?」


 小細工ばっかりなのは気に入らないが、勝つために必死なのは評価できる。

 なんだか、ちょっと好きになってきたぞ。


「ひっ」


 俺がゆっくりと距離を詰めるとギースは怯えた表情を浮かべる。

 さっきの攻撃以上のことはできないのか、それを防がれた以上は勝つ術がない戦意をなくしたようで、ギースは剣を落として、俺に向かって跪く。


「参った、私の負けだ。許してくれ」


 いわゆる土下座の姿勢になってギースは俺に頭を下げる。

 許すと言ってもさて、どうしたものか? 俺がどういうつもりなのか、聞こうと思ってギースに少しずつ近づくと──


「隙あり!」


 土下座の体勢だったギースが流れるような動きで俺に襲い掛かってくる

 その手にはいつのまにか短剣が握られており、見たところ表面が濡れているため、御多分にもれず毒が塗ってあるようだった。


「隙なんかねぇよ」


 俺は、短剣を手に襲い掛かろうとした瞬間のギースの顔面にカウンター気味の蹴りを叩き込む。

 俺の不意を突こうとしたんだろうが、それをするには、もう少し殺気を消さなきゃな。いやまぁ、普通の奴だったら気づかないレベルなんだけどね。


「このゴロツキがぁ!」


 俺に蹴飛ばされてもギースはすぐさま体勢を立て直し、手に持った短剣を俺に投げつけてくる。滴るほど毒液にまみれた短剣を触りたくない俺は身を反らして躱すが、ギースはそれを狙っていたようだった。


「死に腐れ!」


 ギースの掌に魔力が集うのが見える。恐らく魔術か何かを撃ってくるつもりなんだろう。

 それはそれで良いな。ちょっとくらいヤバい攻撃でも食らわないと楽しくないぜ。

 そう思って発動を見守っていると、すぐに魔術は完成し、ギースは風の刃の魔術を俺に投げつけてくる。


「そんなもんじゃあなぁ」


 時間をかけて放った魔術の割には大した威力がない。

 俺が魔力を纏った腕を振って払いのけるだけで、ギースの魔術は簡単に消え去る。


「その程度の魔力じゃ俺の守りは抜けねぇな」


 俺は無駄だと伝えながら、一気に距離を詰めてギースの顔面を殴りつける。

 魔力や闘気なんかを身にまとえるくらいには手加減の呪いが弱まるんだから、ギースだって弱くないが、俺の方が遥かに強いのは間違いない。


 俺に殴り飛ばされ、ギースが謁見の間の床を転がる。

 ちらりとシウスの方を見ると、吹っ飛んだギースを眺めながらシウスはニヤニヤと笑っていた。


「ちくしょう、ちくしょう! ふざけやがってチンピラが!」


 悪態をつきながらギースは顔を押さえて立ち上がる。

 口の中を切ったことで溜まった血を吹き出すと、血に紛れて白い物が床の上を跳ねる。

 どうやら歯が折れたようで、大量に血が出るのも、それが原因だろう。


「もう、許さねぇ! ぶち殺してやる!」


 最初に会った時の騎士らしい態度は何処へ行ったのか、言葉もそうだが雰囲気も街のゴロツキと大差ない物に変わってしまったギースだが、案外これが本性なのかもしれない。


「ぶち殺すって、どうやって?」


 口だけじゃないだろ? 根性を見せてくれるのかな?

 ちょっと確かめてやろうと俺が近づいていくと、ギースは「ひっ」という小さな悲鳴を漏らして、俺の踏み出した一歩に合わせて後ずさる。


「ま、待てよ! 俺に近づいたら、お前の仲間がどうなっても知らねぇぞ」


 情けない台詞を吐くんじゃねぇよ。もう心が折れちまったのか?

 良いセンスしてやがるのに残念だ。きっと、今まで楽勝に勝てる相手としか()ってないせいで、苦境に耐性がないんだろう。

 勝てる相手、勝てそうだと思った相手には強く出るが、勝てない相手には弱気になるとか情けなさ過ぎる。でもまぁ、そういう奴も人間らしくて俺は好きよ。


「止まれって言ってんだよ! 後ろを見ろ!」


 後ろを見ろって何だよ。

 まぁ、何かあるんだろうと思って、言われた通りに後ろを振り向くと、そこではカイル達が領主の兵士達に剣を突きつけられていた。


「へへ、動くんじゃねぇぞ。動いたら、テメェの仲間の命はねぇ」


 人質を取ったつもりかよ? おいおい、随分とまぁチンピラみたいなことをやるなぁ。

 初めて会った時のギースはどこにいってしまったのか? でもまぁ、俺は今の方が好きだね。


「ははは、いいぞギース。みっともなくて最高だ」


 シウスが心から愉快そうに笑い、ギースを褒めている。俺もギースを褒めたいところだぜ。

 なりふり構わず必死で勝ちに行く姿勢とか俺は好きだし、俺もギースのことが好きになってきたね。


「動くんじゃねぇぞ」


 ギースが剣を拾い上げて、慎重に俺に近づいてくる。

 俺は剣を突きつけられて人質になっている連中の方を見る。カイル達は目まぐるしく動く状況についていけず困惑しているようだった。

 しかし、同じように人質になっているゼティは別で、「もういいか?」と俺に目で問いかけてくるが、それに対して俺は「まだ駄目だ」と視線で答える。ゼティは茶番にウンザリしているようで、この場の全員を倒して、さっさとこの場から立ち去りたいようだ。


「へへ、手間をかけさせやがって」


 俺がゼティと視線を交わしていたため動かなかったのを、俺が抵抗しないことにしたのだと勘違いしたギースが俺に向けて剣を振りかぶる。


「死ねよ!」


 そりゃ無理だ。そもそも、俺は抵抗しないなんて一言も言っていないんだぜ?

 俺はギースの振り下ろした剣に対して、その刃を横に避けて躱し、そのままギースの背後に回り込む。

 俺の動きを追って、後ろを振り向こうとするが、ギースの動きは間に合わない。

 俺はギースの背後を取ると、その首に両腕を回して締め上げる。いわゆる裸絞チョークスリーパーだ。

 腕に力を入れた瞬間、ギースは手に持った剣を手放し、両腕で俺の腕を引き剥がそうと力を込めるが、既に技の形は出来上がっている。まれば裸絞は抜け出すことは困難であり、力だけではギースは抜け出すことができない。


「こ、殺せ──」


 振り絞るような声でギースはカイル達を人質にしている兵士達に命令するが、俺もそいつらに伝えることがある。


「そいつらから離れろ。でないとこいつを殺すぞ」


 そっちはカイル達を人質に取った。

 俺もギースを人質に取った。さて、どうする?

 これで膠着状態を作れるかと俺は思ったんだが──


「ギースは死んでも構わん」


 そう言ったのはシウスだった。

 主にそう言われれば兵士は、俺が人質に取っているギースのことなど気にする必要もなくなるので、俺の要求にも従う必要は無くなり、カイル達に突きつけた武器を下ろすということもしなくて良い。

 主に見捨てられたとギースが絶望の表情に変わり、それを見てシウスがニヤニヤと嗤う。どうやらシウスにとってギースは重要な存在ではないようだ。となれば人質として俺が大切に取り扱う必要も無いわけで──


「よっと」


 俺はギースの首に回した両腕に力を込めて、ギースを絞め落とす。

 殺すつもりはないので、気道を圧迫して窒息させるんではなく、頸動脈を圧迫して脳への血流を止めて意識を失わせる程度に済ませる。

 ただまぁ、その結果、意識を失い脱力したギースが失禁してしまったわけだが、それは俺にも予測できなかった。ビビったのか、それとも気が抜けて漏れたのか、それは俺にも分からない。


「それでどうするんだ?」


 ギースから離れた俺にシウスが問う。

 ギースが命じた時のまま、兵士たちはまだカイル達に剣を突きつけている。

 状況的にはそんなに変わってはいないが、よくよく考えてみて欲しい。カイル達を人質にする必要があったのは、それによって俺の動きを封じようとしていたギースだけで、シウスにカイル達を人質にする必要もない。


「そっちこそどうするんだ?」


 人質を取る必要もないのに、この状況を続ける意味も無いだろうと俺はシウスに質問を返す。

 俺の質問に対し、シウスは肩を竦めて仕方ないという感じで口を開く。


「お家騒動の話を外に漏らされても困るんだよなぁ」


 お前の兄貴のことだろ?

 そのことを知っている奴がいると困るってのは分からなくはないし、口封じに殺しておくのもアリだろうね。となれば、俺達を見逃す必要も無いわけで、最初から俺達を殺すつもりだったんだろう。

 シウスの眼が細くなり、睨むような眼でシウスは俺を見る。


る気かよ?」


 俺の問いにシウスは答えず、俺を睨みつける。

 謁見の間の中に戦いの直前の緊張感と静寂に包まれる。だが、その時だった──


「火急の用件ゆえ失礼いたします! ドレガン殿に謀反の兆し有り! 兵を募り、この地に向かってきております!」


 扉が力強く開き、謁見の間に兵士が飛び込んできて、静寂が破られる。

 そして、それを切っ掛けに俺達は動き出す。


「アッシュ!」


 声をあげたのは人質になっていたゼティだった。

 ゼティは自分に剣を突きつけていた兵士を殴り倒し、一瞬で剣を奪うと俺のもとに走り寄ってくる。


「あぁ!」


 俺はゼティが何をしたいのか、即座に察して、俺に走り寄ってくるゼティに合わせて俺も走る。


「させるか」


 俺達の動き出しに僅かに遅れてシウスも走り出す。

 俺とゼティの合流して何かをしようとしていると読んで、それを防ごうとしているんだろうが、それをするには動き出しが遅かったな。


 俺は走りながら拳に振りかぶる。対するゼティも同じように剣を振りかぶる。

 互いの拳と剣には膨大な量の闘気が宿っている。手加減の呪いがあるため、そこらの奴に俺達は闘気を纏ったこの拳や剣をぶつけられないが、別に敵にぶつけなくとも良い。

 俺達が力をぶつけあう相手は俺達でいい。俺はゼティほどの相手だったら力を出せるし、ゼティも俺が相手だったら呪いは発動しない。


「伏せろ!」


 ゼティはカイル達に向けて叫ぶ。咄嗟のことだったが、カイル達は弾かれたようにその場にうずくまってくれたので、これで俺達は心置きなくやれる。


「うおぉぉぉぉらっ!」


 俺達はお互いに向かって走りながら拳と剣を振り上げ、お互いに向けて全力の一撃を放つ。しかし、それは相手の体に当てることを狙ったものではなく、互いに放った拳と剣は交差する軌道を描く。だが、それでいい。


 俺とゼティの一撃が激突する。その瞬間、二つの破壊力がぶつかり合った衝撃が周囲に拡散。衝撃波となって俺とゼティの周囲を吹き飛ばした。

 放たれた衝撃波は謁見の間全体に行き渡る。壁にヒビが入り、砕けて穴が開き、窓ガラスを叩き割れ、部屋の中にあった物が壁に叩きつけられる


 俺達を止めようと動きだしていたシウスが衝撃波によって吹き飛ばされ床の上を転がる。

 カイル達を人質にしようとしていた兵士達が吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。カイル達はギリギリで伏せるのが間に合ったようで、壁には叩きつけられずには済んだものの、吹き飛ばされてはいるようでバラバラの場所に散ってしまっていた。


「アッシュ!」


 この隙に逃げようと思ったのかゼティが俺に声をかけてくる。

 そのゼティはいつの間にかカイルを肩に担ぎあげていた。


「逃がすと思っているのか?」


 声がした方を見るとシウスが起きあがっている。他の連中は失神しているって言うのにタフな奴だぜ。こんな奴と今は戦ってられねぇな。

 俺はゼティに目配せすると、外へ通じている窓ガラスに視線を向けて、俺達はそちらに体を向けて動き出す。だが、シウスは俺達の視線や体の向きなどを全て無視して俺に向かって駆け出す。


「いいね」


 フェイントをかけたつもりだけど見切るか。

 俺達の行く手を阻むような動きを取った瞬間、逃げるのをやめてシウスを不意打ちしようと思っていたんだけど、この程度の考えは見切ってくれる程度にはセンスがあるようだ。

 ちょっと、好きになって来たぜ。


「ジョンだ!」


 俺はゼティにそれだけ伝えると、俺に向かって来るシウスを迎え撃つためにシウスの方に向かう。

 言葉の意図を察してくれたようで、ゼティはカイルに続けてジョンも肩に担いで、シウスを無視して窓へと駆け出す。

 その瞬間、シウスの視線が僅かにゼティの方に向き、俺はその隙を見逃さず、一気に距離を詰めて、シウスの顔面に向けて拳を突き出す。


 だが、シウスは上体を前に屈めて潜り込むような動きで俺の拳を躱しながら俺の懐に飛び込む。

 そして、懐に飛び込むと同時に俺の顎先に向けてアッパーカットを放つが、俺は咄嗟にバックステップでそれを躱す。

 後ろに下がった俺を追って、シウスが前に出てくる。その構えは、両の拳を顔の前で構えるもので、どう見てもボクシングのそれだ。

 ガッチリと守りを固めながらステップワークで俺との距離を詰めてくるシウスに対して、俺は体の重心を後ろに傾け、バックステップで距離を取るように見せかけながら前蹴りを放つ。

 相手を押しのけるように真っ直ぐ放った蹴りはシウスのガードをこじ開けることこそできなかったものの、前進を止めることには成功した。


顕現せよ(アライズ)、我がカルマ。遥かなそらに至るため」


 詠唱が可能なんじゃないかと思って業術カルマ・マギアを発動してみると、問題無く発動できた。

 業術を発動できる相手ということはシウスの強さはエルディエル程度にはあるってことだ。良い相手じゃないか、好きになってきたぜ。

 ここまでの動きを見る限りでは、シウスの戦闘技術のベースはボクシングだ。ダッキングでパンチを躱してアッパーカットの動きとかな。

 なんで異世界の人間がボクシングの技術を修めてるのかは知らねぇが、とにかく強けりゃなんでも良いや。

 俺も人間だった頃にはボクサーと何度もってきたから分かるが、フットワークを見ただけでボクサーとしてシウスは相当なレベルにいるのが分かる。強いボクサーとるのは久しぶりだから否が応でも気分が高まるってもんだ。


「だけど、今はゼティも待ってるんだよな」


 待たせるのも悪いから、今日はお預けだ。

 俺は業術によって熱を帯びた闘気をシウスに向けて投げつける。

 高熱の気弾はシウスへ真っ直ぐ飛んでいくが、シウスは拳で簡単に叩き落とす。

 その間に俺はゼティが出て行った窓に向かっており、シウスが俺を追いかけようとした時には、既に俺は窓枠に手をかけていた。


「次はもっとちゃんとろう」


 俺がシウスの方を振り向くとシウスは足を止め、笑みを浮かべながら、口がゆっくりと動かす。

 声は出ていない。だが、その口の動きは──


『アスラカーズ』


 窓から飛び降りる瞬間に捉えたシウスの口の動き。

 それは確かに俺の名を唱えていた。





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