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不正合戦

 

 ダンジョンの最深部に辿り着いた先着16名が剣神祭の本戦に出場できる。

 そんなルールのもと堂々とフライングした俺は一番乗りでダンジョンの中へと乗り込むことに成功した。

 このダンジョンは以前、ラ゠ギィやカイル君たちと一緒に潜ったダンジョンだ。なので、中の様子や雰囲気は何となく分かっているし、奥へ進む道も分かっている。そのつもりだったが──


「あの野郎、中を作り替えやがったな」


 ダンジョンの中は以前に訪れた時とは全く異なっていた。

 通路の幅は広くなっているが、以前よりも入り組んでいる。

 おそらく最深部までの道順を知っている奴とそうでない奴の間で不公平が生じないようにしているんだろう。

 そのうえ参加者同士の潰し合いをお望みなのか、ダンジョンの魔物の気配は感じられない。神官の雑さに対して、そいつらの仕えている赤神の配慮の随分とまぁ行き届いていること。


「どうしたもんかねぇ」


 ダンジョンが迷路になっているとは思わなかったね。いや、本来ダンジョンってそういうもんか。

 この迷路ってのは参加者を迷わせ、迷路の中で互いに遭遇させることで戦闘もしくは潰し合いを誘発するもんだと思うけど……


「闇雲に進んで、先行しているアドバンテージを失うのもつまらねぇな」


 迷わせるために作っている迷路でこういうことをするのも申し訳ねぇんだけど、ちょっとズルをさせてもらおう。そう考えて、俺は内力を放出し、枝分かれしている通路の先まで延々と伸ばし、それでもって通路の先の様子を把握する。

 内力の消耗も激しいし、この迷路を作った赤神の意図から外れて申し訳ないけど、俺の目的は本戦出場なんでね。

 触手のように伸ばした内力で通路の先まで探知した結果、何処を通っても最終的には一つの道に辿り着くようになっていることを俺は把握する。


 以前と比べて複雑にはなっているが、通路と大部屋で構成されているのは変わらないし、大部屋に入った際に自分が通った通路と違う通路を通れば、自然と最深部に辿り着けるようになってるみたいだね。

 そこら辺も親切と言えば親切か。まぁ、赤神が求めているのはダンジョンを攻略する能力じゃなくて強さなんだから、頭を使わないといけない要素は排除しているんだろうね。


 俺は魔物も人もいないダンジョンの中を走る。

 背後からは参加者の近づいてくる気配がしていた。

 きっと、そいつらは俺を見つけたら、問答無用で攻撃を仕掛けてくるだろう。

 俺はスゲェ評判悪いからね。イグナシスの街中で色んな連中に喧嘩を売ってたり、地味に色んな剣術道場に殴り込みかけてたり、まぁ色んな事をやってたからさ。俺への恨みつらみって奴が無い奴はいないんじゃないってくらい影響を与えてんだよね。

 そういう連中と会ったら面倒なことになりそうなんで、俺は少し急ぐことにする。


 入り組んだ迷路になっているとは言っても、それ自体はそこまでの難易度じゃない。難易度が高くなるのは、迷路で遭遇した参加者同士が戦闘になるからだ。なので、戦う相手がまだ来ていない俺は最低難易度で迷路を突破し、階段を下りて次の階層に向かう。最も深いと書いて最深部だから、下へと降りて行くんだろうね。

 そうして、降りた先もやはり迷路。なんともまぁ、バリエーションが無い。そのうえ迷路づくりに飽きたのか、上の階層よりも入り組んだ通路は減って、代わりに通路の合流点となる大部屋が増えているようだった。

 だが、一つだけ上の階層と明らかに違う点がある。内力を走らせ、階層の様子を探っている中で俺はそれに気づいた。それは魔物ではない生物の気配──というか、明らかに人間の気配で、俺はその気配がする方へと向かってダンジョンの中を歩き出した。


「俺より先に進んでいる奴がいる筈はねぇしな」


 となれば、何者だ? まぁ、なんとなくは想像がつくんだけどさ。

 そして、俺は既に見当のついている何者かがいる大部屋へと辿り着く。

 すると、部屋に入った瞬間──


「待て! ここは通さん!」


 フルフェイスの兜と全身鎧を身に纏った十人ほどの集団が俺を待ち構えていた。

 魔物とかそういうのじゃない。顔を隠して素性がバレないようにしているが全員、ただの人間だ。


「何やってんの、キミら?」


 俺は特に驚くことも無く訊ねる。まぁ、いるってことは察知できてたしね。

 そんな俺の態度を見て、逆に鎧姿の連中の方が狼狽する。その中でも特に豪華な鎧を着た奴の態度が顕著で、俺はそいつにもう一度訊ねることにした──そいつの名前も敢えて口にしながら。


「何やってんの、ナサニル君?」


 ナサニル・アルマンド──白神教会の聖騎士団の六番隊の隊長。

 俺は豪華な鎧を着ている奴をそいつと決めつけて名前を呼んだ。

 それに対する鎧姿の連中の反応はというと──


「く、やはり気付かれたか」


 すっとぼけりゃ良いのにナサニルは兜のバイザーを上げ、素顔を晒す。

 そして、兜を脱ぎ捨て、完全に素性を明らかにしてしまった。

 別に俺はばらすつもりも無いんだし、今後の事を考えたら、そのまま隠しておく方が良いと思うよ?


「それでキミらは何やってんの? 待ち伏せなんかしてさぁ」


「そのものズバリそれが答えです。私たちは参加者の足止めをするために此処にいるのです。ラ゠ギィ殿の命で予選が始まる前から、ダンジョン内に潜入しておりました」


 赤神神殿の神官連中はダンジョンの中を確認してなかったんだろうか?

 まぁ、おそらく先にダンジョンの中に潜り込んでちゃいけないとかはルールに明文化されてないだろうけどさ。あの慌ただしい感じだと、そこまでルールを煮詰めることが出来てないだろうしね。


「ラ゠ギィの命令でやってんのか」


 あの野郎も先を予測して自分の手下を配置してたってことか。

 俺の方が一枚上手だと思ったけど、この状況を見るにそれは何とも言えねぇな。

 俺よりも周到な準備をしてたってことだしな。ただ、仕込みは良くても結果はどうだろうね。


「で? キミらはどうするつもりなんだい? 俺はラ゠ギィと協力関係にあるんだけどね。仮に、そうじゃなかったとしても、キミらも俺の実力は知ってるだろ? それでも俺を足止めしようとか考えてんのかい?」


 俺とラ゠ギィの協力関係が表面的なもんだってことはこいつらは知らねぇだろうから、協力者である俺を通した方が良いってのを暗に伝える。

 そんででもって、それに加えて通さないって方で考えた場合、俺と戦闘になるんだけど、どうするんだいって疑問を投げかける。

 俺と戦った場合、キミらはそこで終わりだぜ?

 俺一人の足止めをして全滅をするよりも、俺の後から来る奴らを何人も足止めした方がラ゠ギィの希望に沿うんじゃなかろうか?


「そこんところ、どう思うよ? 前に俺にぶっ飛ばされたナサニル君はさ」


 ナサニルの顔色が僅かに青くなる。

 ここで俺を足止めするより、俺の次に来る奴らを足止めした方が良い。

 そのことはナサニルも分かっているはずだ。だから、ナサニルは何も言わず、その後ろにいる素性を隠した聖騎士達もナサニルの反応を伺い、自分から行動を起こすということはしない。


「通してくれるってことかな? じゃあ、失礼するぜ」


 聖騎士達は何の反応も見せず、俺を見なかったことにしてくれるようだ。

 俺は俺の事を無視して、その場に突っ立っている聖騎士達の間をすり抜け、ダンジョンの深部へと続く大部屋の出口へと向かう。

 だが、そうして出口へと差し掛かったその時だった。背を向けた俺へと矢が放たれたのは──


「──何してんの?」


 俺は後ろを振り向くこともせず背中に飛んできた矢を掴み取る。

 俺が掴み取った矢はクロスボウのボルトで、振り返って見てみるとナサニルが俺にクロスボウを向けていた。


「俺の事を見逃してくれるんじゃなかったのかい?」


 そう思っていたのに、俺が背を向けたら撃ってくるなんてひどいじゃないか。

 俺は非難するような表情をわざとらしく作って同情を誘って見るが、ナサニルは毅然とした表情のまま手に持っていたクロスボウを隣に立つ聖騎士に渡し、自分は腰に帯びた剣の柄に手を伸ばす。


「ラ゠ギィ殿からは誰も通すなと言われています」


 じゃあ、最初から通すつもりは無かったってことね。

 見逃してくれたように見えたのは俺を不意打ちするためか。


「いいね、そういう命令を果たすために一生懸命なところは嫌いじゃないぜ」


 正々堂々で無理なら汚い手を使ってでもって考え方は俺の好みだぜ。

 もっとも、無理であっても正々堂々と戦って玉砕する方が好みではあるんだけどね。

 つまり、俺としては俺とってくれるなら何でも良いってことだ。


「以前と同じだと思うなよ」

「本当にそう思っていたら、らねぇよ」


 全く同じ相手と二度も戦う趣味はないからね。

 何かしらの俺対策は持ってきてんだろ? そいつを見せてくれよ!


 俺はナサニルと聖騎士達に向かって駆け出す。

 時間はかけてたら後ろに追い抜かれちまうから、さっさと決着つけないとな。

 そう考える俺の前にナサニルを守るように盾を構えた三人の聖騎士が立ちふさがる。

 俺は構わず盾の上から殴りつけようと拳を握りしめるが、それと同時に盾を持った聖騎士達が叫ぶ。


「連結聖術、ホーリーウォール!」


 その瞬間、スクラムを組んだように並ぶ三人の聖騎士の持つ盾が光を帯び、そして俺の前に巨大な光の壁が形成される。俺は構わずに拳を振り抜き、光の壁を殴りつけるが、俺の一撃を受けても壁はビクともしなかった。


「ホーリージャベリン!」


 直後に盾を構えた聖騎士達の背後に立っている長剣を片手に持った二人の聖騎士が空いた手に光の槍を生み出し、それを俺に投げつけてくる。

 光の槍が光の壁をすり抜け、俺へと迫ってくる。俺はそれを横に跳んで躱すが、躱した瞬間、二本のボルトが飛来し、俺は拳でそれを叩き落とす。

 俺が矢が飛んで来た方をを見ると、そこにはクロスボウを持った聖騎士が二人いて、そいつらが俺を狙っていた。


「俺を袋叩きにしようってのかい?」


 盾の兵士が三人、長剣と魔術が二人、クロスボウが二人、それと今の攻防には加わってないけど槍持ちが二人、そしてナサニル。

 1対10ってのは普通に考えればまず勝ち目はねぇな。

 こいつらは俺だけを待っていたわけじゃないから、俺以外にもこの編成で足止めしようとしてたんだろう。こいつらいたら、誰も最深部まで通過できないんじゃねぇかな?

 おそらく、ダンジョン内にいる聖騎士はこいつらだけじゃないだろうしさ。


「手段は選ぶなと言われている」


「そう言われて、マジで手段を選ばない奴は少ないけどね」


 1対10で袋叩きが手段を選んでないのか、どうなのかは判断が分かれるところだけどさ。

 もっとも、それは普通の相手に対しての話。俺相手の場合なら──


「俺相手にそれは手段を選んでいるとしか言いようがないぜ?」


 言いながら、動き出そうとした瞬間、ボルトが飛んでくる。

 俺はそれを掴み取り、即座にクロスボウを持った騎士に投げ返す。その瞬間、盾を持った騎士の一人が小さな光の壁を作り出し、俺の投げ返した矢から味方を守る。


「仲間意識が強いのはご立派だね」


 さっきの攻防から、こいつらの能力は予想できている。

 盾を持った聖騎士達は同時に魔術を発動することで、強力な壁を作れる。

 だけど、それは三人がいての場合だ。果たして二人で壁は作れるのかい? 作れてもどんだけ硬いんだろうね? それを試させてくれよ。


「来るぞ、迎撃!」


 ナサニルの声に合わせて盾を持った二人の聖騎士が光の壁を作り出し、先に発動していた騎士が後ろに下がってナサニルを守る。


 良く連携が取れてやがる。

 だけど、連携だけじゃ俺には勝てねぇってことを教えてやろうじゃないか。







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