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こっちの本気

 


駆動ドライブ! 星よ耀け、スターレイジ・魂に火を点けてイグニションッ!」


 俺は業術カルマ・マギアの駆動態を発動する。

 周りに人はいねぇから、もう加減する必要もねぇ。

 シャルマーとヴィルダリオには、散々、好き勝手やった報いを受けて貰おうじゃないか。

 無限大に上昇し続ける俺の内力にあてられたのか、全身鎧の人馬騎士ケンタウロスとなったヴィルダリオの巨大な体が後ずさる。対して、そのヴィルダリオの肩に乗っているシャルマーは力の差が分かっていないのか、なおも俺を侮るような表情で見下しながら──


「大丈夫、ヴィル。アイツの業術は結局ただの身体能力強化だ。恐れるようなものじゃない」


 何処で聞いたのか、シャルマーは俺の業術について知っているようだ。

 確かに内力量が無限になっても、それを全てを身体能力の強化に回してるから、結局はただの身体能力強化だって言われても間違いじゃない。だけどな──


「聞いただけの知識で俺を判断するんじゃねぇよ」


 そのただの身体能力強化に勝てなかった奴どれくらいいると思う?

 それをテメェらの身を身体に教えてやるよ。


「ぶっ潰す」


 手は抜かなくていい。

 相手は仙理術士だ。生かしておくことも考えなくていい──ということは本気で拳を握って良いってことだ。


「やれ、ヴィル!」

おうっ!」


 シャルマーの指示に従うようにヴィルダリオが数メートルはある今の奴にとっては普通の剣のサイズの大剣を振り上げ、そしてすぐさま振り下ろす。だが──


おせぇっ!」


 既に踏みだしていた俺は弾丸のような速度で跳躍し、砲弾のような勢いで突進し、ヴィルダリオの顔面を殴りつけていた。ヴィルダリオが振り下ろそうとした大剣は途中で止まり、ヴィルダリオはたたらを踏んで後ずさる。


「ぐぅっ!?」


 隙間の無い全身鎧その頭部が俺の拳で陥没していた。

 まだ、手を抜いている感じがするぜ。もっと本気で拳を固めて殴り殺してやるぜ。


「ちっ、お前たち!」


 シャルマーはヴィルダリオの肩にしがみつきながら、自分が産み出した今となっては家よりも巨大になった蛭たちに向かって呼びかける。すると、蛭たちが一斉に動き、軟体の身体を鞭のようにしならせ、俺へと襲い掛かるが、今の俺にとってはその動きは止まってるのと同じくらい遅い。


 俺は襲い掛かってくる巨大な蛭を躱すと、後ずさったまま、更に俺から距離を取ろうと飛び退くヴィルダリオを見据え──


「──プロミネンス・チャージッ!」


 俺は全身に真紅の内力を纏い、ヴィルダリオに向かって全力での突進からの体当たりを叩き込んだ。

 傍から見れば俺は真紅の砲弾って感じだっただろう。そんな俺の激突を受けたヴィルダリオは全身鎧を身に纏っている甲斐も無く、俺の威力によって上半身が消し飛ぶ。


「ふざけんな、あの野郎! 身体能力強化だけではないじゃないか!」


 俺の一撃を食らって死んだヴィルダリオに対し、シャルマーは俺がヴィルダリオに直撃する直前にヴィルダリオの肩から飛び降りていた。そのため俺の攻撃の直撃は免れた──と、本人は思っているんだろうがね。


「プロミネンス・アロゥ──」


 俺は指先に灯した真紅の内力を俺から逃げたシャルマーに向けて投げつける。

 指先程の大きさの真紅の弾丸は高速で飛翔し、跳躍して逃げようとしたシャルマーを背中から撃ち抜き、その命を奪う。


「俺の業術はただの身体能力強化なんだろ? その程度の能力に勝てねぇっていうテメェらはいったいどの程度のレベルの雑魚なんですかねぇ?」


 近くにあった建物の屋根の上に飛び移り、俺は死んだシャルマーとヴィルダリオを見下みくだす。

 その最中にも死んだ二人の肉体は再生しているので、俺の声は聞こえたはずだ。


「シャル……身体能力強化だけではないぞ、コイツの業術は」


「クソッ、イザリアの奴め、適当な情報を寄越して──」


 ……まぁ、実際の所、『プロミネンス・〇〇』って技は業術は関係ないんだけどね。

 業術の効果で内力量が増えているから使えているってだけで、業術との関連性は無いから、これを食らって身体能力強化だけじゃないって思われるのも間違いなんだけどさ。


「来いよ、俺にビビったか?」


 まぁ、別に俺の業術に関して細かく教えてやる必要も無いから、こいつらには言わないけどね。


「──行け、ヴィル!」


 シャルマーが命令するとヴィルダリオが再生したばかりの半人半馬の巨体を躍らせ、俺に斬りかかってくるが、俺はその一撃を左手だけで軽く受け止める。

 大剣の大きさは俺の身長の三倍くらい、そしてヴィルダリオは俺の身長の五倍以上の大きさ。だけど、そんなサイズ差など問題にならない。そして、俺は空いている右手で──


「プロミネンス・ペネトレイト──」


 真紅の内力を込めた右ストレートを放ち、突き出された拳に合わせて放出された内力が、再びヴィルダリオの上半身を蒸発させて一瞬で命を奪う。


「今だ、やれ!」


 攻撃を放った瞬間に合わせて、シャルマーの命令に合わせて巨大な蛭が俺に襲い掛かる。

 俺は即座に左の掌に真紅の内力を圧縮した球体を生み出し──


「無駄だよ。その子たちは内力だけの攻撃は効かない」


 どうやらシャルマーは俺が学習しない奴だと思ってるようだ。

 まぁ、学ばないってのは間違ってないけれど、それと戦闘における判断は違うぜ。


「アルヴェン・インパルス──」


 俺は右の拳で左の掌を殴りつけ、作り出した真紅の内力の球体を叩き潰す。

 その瞬間、俺の周囲に強烈な衝撃波が発生し、周囲の建物を粉砕すると同時に、俺に襲い掛かった蛭たちを、その衝撃波と──


「内力はともかく熱には弱いみたいだな」


 ──衝撃波と共に放たれた熱風で始末する。

 この技は内力じゃなく物理的な衝撃をぶつける技だから内力には耐性があっても耐えられない。まぁ、効果のほどを見るまで、効くかは分かんなかったけどね。


「ヴィル!」


 蛭を失ったシャルマーが唯一残った味方のヴィルダリオに速やかな復帰を要請する呼びかけをする。だが、無駄だ。

 ヴィルダリオがしたような仙理術士の変身は一見すると圧倒的なパワーアップに見えるが、その分、膨大な量の内力を消費する。

 それは死んだ自分を復活させるための残機すら使うレベル。仮にそのままなら二桁以上の回数の再生が可能であったとしても、変身をしてしまえば9回を超える再生は難しい。それだけ、仙理術士の全力形態──真体しんたいは消耗が激しい。


「後はテメェだ」


 残機が残り少なけりゃ再生は遅くなる。

 ヴィルダリオはすぐには復帰できない。その間にシャルマーを徹底的に殺す。シャルマーの残機が幾つかは知らねぇが、この戦闘能力なら100は言ってないはず。戦って強い奴ほど、残機が多いっていう俺の経験則から言えばシャルマーなら20回殺せば殺し切れる筈。そう考え、俺は再生中のヴィルダリオを無視し、シャルマーに向かって飛び掛かろうとする。だが──


「いや、まだテメェら・・・・だな」


 動き出そうとした俺に再生を終えたヴィルダリオが起き上がり剣を振り下ろしてきた。

 俺は防御もせずに受ける。そうしても結果はヴィルダリオの大剣の刃が欠けただけだった。


「あぁん?」


 内力量的に即時再生は不可能だと思ったが、どういうわけだ?

 でもまぁ、良いやと思い俺は──


「プロミネンス・ランページ」


 真紅の内力の奔流でヴィルダリオの巨体を蒸発させて引き裂いた。だが、そうしてもヴィルダリオの体は瞬時に再生し、シャルマーに向かおうとする俺の行く手を遮る。

 その様を見れば、シャルマーとヴィルダリオのどちらかが何かをしてるのは間違いない。俺は即座にその現象について思考を巡らせ、予想を口にする。


「さっきの蛭が何かしたな」


 俺の勘は蛭を殺したことが引き金だと言っている。すると、俺の予想に対しシャルマーは──


「その通り。たっぷり内力を吸って大きくなった僕の|子供(蛭)たちは。死ぬと最後の親孝行として僕に内力をくれる。そして僕からヴィルダリオに内力を渡しヴィルダリオは蘇る」


「手の内をベラベラと良く喋るぜ」


 まぁ、喋る理由は分かるけどね。

 シャルマーは俺の創った世界の出身。ということは俺──アスラカーズの加護は持っているわけで、そんな俺の加護はというと──


「そりゃあ、自分が不利な状況になるほど強くなるっていうアスラカーズの加護があるんだから、自分の能力を喋って、自分が不利になるようにはするよ」


 まぁ、その通りだ。ピンチになればなるほど強くなるってのが俺の神としての加護。

 シャルマーはそれを理解し、利用するために自分の能力について教えてきたってことか。


「──つっても、苦し紛れに俺の加護で自分の強化を図る奴の末路なんかは、たかが知れてるけどな」


「ほざけ!」


 ヴィルダリオが俺に向かって大剣を振り下ろす。

 俺は無造作にその大剣に拳を合わせて叩きつけ──


「プロミネンス・ブロゥ」


 真紅の内力を纏った拳と大剣がぶつかり合うが、瞬時に大剣が消し飛び、ヴィルダリオも飛び退く。

 家よりも大きな巨体のヴィルダリオがそんな動きをして着地をすれば地響きがする。だが、それも当然と俺は気にも留めず、シャルマーを見据え、シャルマーに向かって飛び掛かる。

 俺を撃ち落とそうとナイフを投げつけてくるが、莫大な量の内力で強化した俺の体にナイフは刺さらない。シャルマーは迎撃を諦め、即座に防御および回避の態勢を取るが──


「遅いって言わなかったか?」


 俺はシャルマーの頭を跳び越しながら、サッカーボールを蹴るようにその頭を蹴り飛ばす。

 首から千切れ落ちるに留まらず、千切れるよりも先に粉砕されて血と脳漿を撒き散らすシャルマー。

 だが、そんな有様も一瞬でシャルマーは即座に復活し、接近した俺を見据える。


「この脳筋め」

「そりゃ誉め言葉だね」


 考えるだけで何もしてくれない素晴らしい脳神経と、求める動きの補助を即座にしてくれる筋肉。

 脳味噌を構成する要素として世の中の人間が求めるものはどちらだろうか。

 脳筋ってのは、筋肉のように積極的に動いてくれるし、鍛えれば鍛えるだけ伸びてくれる素晴らしい脳だと思わないかい? まぁ、そんなことを言っても、俺の脳も普通の人間と同じで神経細胞の塊でしかないんだけどね。


「──降参する!」


 後ろ手にナイフを持ちながら言う台詞じゃないだろ?

 黙らせるためのプロミネンス・ブロゥ──シャルマーの頭が消し飛ぶ。


「──待って」


 キミとキミの産み出したものに殺された人間はそんな台詞を言えたんだろうかね?

 背を向けて逃げようとするシャルマーにプロミネンス・ペネトレイト──全身が消し飛ぶ。


「──降参してるのに酷い」


 プロミネンス・エッジ──なおも逃げようとするシャルマーに向けて真紅の内力を帯びた手刀を俺は振り下ろす。だが、そこまでで俺の攻撃のリズムを見極めていたのかシャルマーは、俺の手刀をギリギリで躱す。しかし、俺の攻撃は僅かにシャルマーの服を掠めており──


「なんだ、その腹は」


 攻撃が掠めた服が切れ、シャルマーの上半身が露になる。

 そうして露になったシャルマーの腹部は男という性別にしては不自然に膨らんでいる。

 ゆったりとしたカソックのシルエットのせいで俺も体形に意識が向いていなかった。というか、男の腹が、なんというか、あんな風に(・・・・・膨らむのは予想外で──


「妊娠してるんだよ」


 シャルマーの腹は妊娠初期の妊婦のようなシルエットに膨らんでいた。

 そして、その状態を指して、シャルマーはこともなげに言う。


「──は?」


 俺は思わず間の抜けた声を出す。

 男でも妊娠する種族かとシャルマーについて考えそうになったが、俺は即座に俺の創った世界の人型生命体に自然に妊娠できる男性型の生命体はいないと判断し、攻撃に移ろうとするが──


「逆に言わせてもらうよ。遅いって」


 一瞬の判断の遅れ、その隙にシャルマーは、ぽっこりと膨らんだ自分の腹にナイフを突き立て──


独尊太母ママー──霧羅蜘蛛むらくもぉ!」


 シャルマーは自分の腹に突き刺したナイフを横に引き裂き、膨らんだ自分の腹をさばく。そうして切り裂かれた腹から零れ落ちるのは、血や内臓ではなく──


「蜘蛛?」


 切腹するように自分の腹を裂いてシャルマーが産み出したの蜘蛛。

 それがシャルマーの腹から無数に湧いて出る。シャルマーの細身の体のどれだけ収まっていたのか、数えきれないくらい大量の蜘蛛が這い出る。

 俺は思いもしなかった状況に一瞬、反応が遅れ、産まれたばかりの蜘蛛がシャルマーの腹から這い出て辺りへと散っていくのを見過ごしてしまう。だが──


ひるでやべぇのに、蜘蛛がヤバくねぇはずがねぇだろうが!」


 俺はイグナシスの街へと散って行こうとする蜘蛛たちに意識を向けようとするが、どういうわけか蜘蛛は、遠くへ散ることもできずに、その場でひっくり返っていた。見ると、蜘蛛たちは内側から毒のような何かで溶けているようで──


「かかった」


 シャルマーの声が聞こえたと同時に死にかけだった蜘蛛の体が弾け飛び、その体液が霧のように辺りに撒き散らされる。そして、それを認識した瞬間、俺の全身から力が失われ、込み上がる吐き気と共に俺はどす黒い血を吐き散らす。


「──毒か」


 辺りに弾け飛んだ蜘蛛の体液が霧のようになって漂う。

 その霧が体内に入ったように感じた瞬間、俺の全身を激痛が襲う。


「その通り。ここまでの戦いの中でアンタが流した血をコッソリ採取し、僕の体内で作り上げた特効薬ならぬ特効毒。僕の子供たちとの絆の共同制作さ」


 声は聞こえるが、想像を絶するレベルでキツイ。これは俺を構成する細胞や遺伝子自体を侵すような毒だ。

 特定の相手以外は全く効かなくても構わないが、標的である特定の相手は絶対に殺すという類。ご丁寧にというかなんというか、肉体的な部分だけじゃなく、内力のような超自然的な部分まで侵食してくる毒だ。


「僕の究竟アルス・マグナ独尊太母ママーは僕が取り込んだ存在を触媒に僕の子供を生み出す。そして、その子供たちは僕が体内で育てた時間に応じて強力になる」


 タイミングを逃さず自分の能力の説明をし、自分を不利な状況に追い込むことで俺の加護を発動させる。なるほど隙がねぇな。


「自分の子供って言う割には愛が感じられねぇけどな」


 テメェの子供の筈の蜘蛛は毒が強すぎて自家中毒で死んでるじゃねぇか。

 毒で溶けだしてるし、それを知っていて自分の子供と言えるのかよ。それに産み出したとかいう蛭も蜘蛛もテメェが徹底的に管理し、何の自由もねぇけど、それに対して言うことは?


「愛? なんで自分の子供に愛を与えなければいけないんだ? 僕の子供達は僕が産まなければ存在できないんだから、産み出した僕に対しては絶対服従であるべきだろう?」


 シャルマーは自然な口調で俺に言葉を返してくる。

 なるほど、そういう性格だから、こういう瑜伽法なのね。理解したぜ。

 まぁ、理解しても対処のしようがないってことも分かったけどさ。


「産んでもらったという恩がある以上、子供はこの世界に産み落としてもらった恩を返すために親に従わなければいけない。僕はママにそう教わったよ。子供は親に逆らってはいけない。だから、親は子供を自由にしていいってこともね」


『だから』の繋がりが良く分かんねぇよ。

 まぁ、とにかくシャルマーはロクでもない思想の持ち主だってことは分かる。


「だから、僕の子供たちも僕に尽くさなければいけないんだよ。だって、僕は産んであげたんだからね。この世に作ってあげたって時点で、産まれてきた子供は親に最大級の感謝をしなければいけないし、産んでもらった恩を返さなきゃいけない。だから、恩を返すためには親のどんな命令にも従わなければならない──」


 その結果が、毒で自家中毒を起こして死ぬ蜘蛛たちかい?

 なるほど、産んであげるんだから産まれる前にシャルマーの体内で改造されるのも仕方ないってか?


「OK、理解したぜ」


 俺は立ち上がり、俺のそばに無警戒に立っていたシャルマーの顔面を思いっきり殴りつけた。

 その拍子にシャルマーの首が吹き飛び、一発で死ぬ。吹き飛んだ頭を治したシャルマーが驚愕の表情で俺を見る。


「なんで、毒は──」


 言い終わる前に拳を叩き込み、シャルマーの胸から心臓を抉り取る。

 俺は心臓を抉り取ったシャルマーの死体を蹴り飛ばすと、即座に心臓を再生したシャルマーが復活する。


「毒を食らった程度で俺が止まるかよ」


 態勢を整えようとするシャルマーの頭を掴み、握り潰す。

 瞬時に再生し、反撃しようとしたシャルマーの身体に蹴りを入れて押しのけ、間合いを調整するとシャルマーが態勢を整えようとするより先に頭を殴り砕く。

 その拍子に俺は毒に侵されて爛れた内臓からせり上がってくる血を吐き出す。視界はぼやけてるし、息を吸うたびに肺に激痛が走り、内臓は一秒ごとに腐っていく感じがするが、だからといって俺のは止まらない。


「ま、待──」


 何か言いたい? でも、残念。キミの物語を聞くのは俺の仕事じゃない。

 俺にとってキミは只の倒すべき敵。それ以上でも、それ以下でもない。

 キミがキミの物語を語りたかったなら、俺以外の誰かにするべきだったね。


「俺はテメェにそこまで興味がないんだよなぁ」


「ふざけんな、僕は──」


 いい気になり過ぎだったぜ、キミは。

 俺の口から血が溢れる。毒のせいだ。でも、だから何? 相手をぶん殴る拳に力は入る。なら、それ以上はいらねぇよ。

 俺は力の限りシャルマーを殴りつけた。その衝撃で大きく吹き飛び、内臓が破裂した衝撃でシャルマーは血を吐く。


「っクソが!」


「テメェの究竟アルス・マグナは準備に時間がかかるタイプだろ? この状況を打開する手段はねぇよな」


「ヴィル! 時間を稼げ! 次の子供を作る!」


 その声が放たれた瞬間、ヴィルダリオが俺に向かって大剣を振り下ろす。俺とシャルマーが近すぎて、シャルマーが巻き添えになるのを避けるため攻撃を控えていたヴィルダリオの、シャルマーに言われての咄嗟の動きだ。丁寧さなんてものは欠片も無い。俺は躱すまでも無く、片手で巨大な剣を受け止める。

 その間にシャルマーは俺に背を向け、この場から距離を取ろうとしていた。


「やらせんっ!」


 ヴィルダリオの意気込みが聞こえてくる。

 なんでコイツはそんなにシャルマーのために動くか。

 まぁ、どうでもいいか、俺はこいつの物語にも興味はない。

 俺にとって、コイツもシャルマーもただ単に倒す敵というだけだ。

 だから、俺はこいつの出自などに全く関心は持たず──


「プロミネンス・ゲイザー」


 俺の足の裏から、ヴィリダリオの真下まで伸ばした真紅の内力が吹き上がり、ヴィルダリオの身体を焼きながら打ち上げる。


「チマチマ殺してたらキリがねぇ。一気に始末させてもらうぜ」


 俺は言いながら、掌に小さな幾つもの内力の玉を作り出し、それを眼で追えない程の速度で、円の軌道を取らせながら回転させる。すると、俺の掌で幾つもの円周が重なり球の形を取る。そうして作り上げた内力の球を俺は打ち上げられ、高く宙を舞うヴィルダリオに投げつけた。


「──フォトスフィア・アクセラレート」


 俺の投げた内力の球が直撃した瞬間にヴィルダリオを中心に膨大なエネルギーの奔流が球形に広がり、空に新たな太陽を作り出す。現時点での俺が使える最強の威力の攻撃だ。これを食らって生きていられるとは思えない。

 そんな俺の推測通り、空に生み出された光球が消えた時、その中心にいた筈のヴィルダリオは塵一つ残っていない。俺のこの技は殺し続ける技。並の奴が食らえば、残機が完全になくなるまで超高熱の光球の中で死に続け、そして消滅する。


「──でも、まだ終わってねぇんだよなぁ」


 俺はそう言いながら、逃げようとしたシャルマーに内力を放出し叩きつける。

 プロミネンス・ペネトレイト──その真紅の内力の奔流は俺に背を向けていたシャルマーを呑み込み、消し飛ばすが──


「逃げられたかな」


 俺の放った真紅の奔流に呑み込まれたシャルマーは跡形もなく、その場で再生する気配もない。だが、シャルマーに関しては死に切るまで殺せたという手応えはなかった。

 完全に消滅したヴィルダリオに関しては殺し切ったという確信があるのに対し、シャルマーについてはそれが無い。


「──ま、今日はここまでか」


 とりあえず、今日は片割れのヴィルダリオの方を仕留めることができたっだけでも良いとしとこう。消えたシャルマーに関しては、ここから追い込んでいけばいい。


「さて、俺もさっさと消えるとしよう」


 段々と人が集まってくる気配がする。

 そいつらに事情を説明するべきかもしれないが、面倒くさくてね。

 そういうのは、俺の好きな面倒事じゃないのさ。だから、俺はこの場はお暇させてもらうぜ?


 じゃ、後のことはよろしく──





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