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見知らぬ世界の空気

 

 人が遠ざかった頃合いを見計らって俺は地下室を出る。


 祭壇の置かれた部屋の出口はそのまま階段になっていて、見上げた階段の終わりから外の光が入ってきている。俺は階段を登り、外を目指した。

 外へ出ても特にやることは思いつかないが、とりあえず人がいる所を探してみるのも良いかもしれない。俺はこの世界のことを知らないんで、もしかしたら楽しい世界の可能性だってあるんだから、脱出にこだわって、この世界を楽しまないっての勿体ない。


 そんな感じで、俺はこれからのことを考えて、地下から外へと出る。

 —―だが、その直後、俺は立ち眩みを起こした。


 原因は何か?

 空気が悪いってそれだけだ。つっても、大気汚染されてるわけじゃなく、空気中にある魔力と気とかのエネルギーが澱んでいるんで空気が悪いって感じるんだ。

 澱んだ魔力とかに汚染されると生物は特殊かつ急激な進化を遂げて、そういうのは世界によって呼ばれ方は変わるが、多くの場合で魔物とか呼ばれたりする。

 普通は特殊な条件の場所に澱んだ魔力なんかは溜まるんだが、どういうわけかこの世界は普通の空気の時点で相当に汚染されていて、魔物なんかは簡単に生まれる下地がある。


「こりゃあ、ぶっ殺すしかねぇな」


 この世界を管理してる神がどんな奴かは知らねぇけど、魔力なんかの世界に満ちるエネルギーの管理は神の仕事だ。

 意図を持ってやっているなら、まぁ情状酌量の余地はあるが、単にサボっているだけの可能性も高い。仕事を全うできない神には反省を促してやらないとな。


 俺は呼吸を整える。

 空気が悪いって言っても耐えられないわけじゃない。っていうか耐える必要もない。

 予想外だったから立ち眩みを起こしただけで、俺は澱んだ魔力の中でも特に問題なく過ごせるんで、気にするようなことは無いんだよな。


 俺は地下の出口から一歩を踏み出し、辺りを見回す。

 俺が出てきたのは、どうやら廃墟の地下だったようで、周囲には石壁が崩れて散乱しているのが見える。

 石壁の見た目から元は城だったんだろう。戦でもあって、ぶっ壊されたんだろうな。


「ご愁傷さん」


 冥福を祈るくらいはしてやろう。

 廃墟の様子から数百年前のものだろう。誰からも忘れられて、やってくるのは城の地下に入り浸る怪しげな宗教団体。そんな有様じゃ、この城の持ち主たちも浮かばれないよな。


 俺がちょっと感傷的な気分になっていると、俺の視界の端で何かがちらつく。

 まぁ、別に何かって言っても正体不明な物じゃなくて、人間の魂なんだけどな。

 俺は魂自体には驚かないけど、この城で死んだ奴の魂が、なんの処置も無く漫然と放置されているのには驚いた。


 マジでこの世界の神は何を考えているんだろうか?

 俺とか他の神の感覚だと魂ってのは世界を構築する資源リソースの塊だ。

 人間なんかの生命を動かす魂ってのは極めて強力なエネルギーの塊なんで基本的に放置はしない。魂が残っていて幽霊みたいな存在になって漂っていたとしても、それが持つエネルギー自体は回収している。

 でもって、俺達はその魂のエネルギーをリサイクルして新たな生命を誕生させたり、世界を再生させたりする。そうでもしないと世界に生命を誕生させたり、世界を維持できるほどのエネルギーを確保できないからだ。

 神々(俺達)自身も世界を維持したりするエネルギーが無いわけじゃないが、それで全て賄うのは実際には難しいんで、色々と節約したりなんだりしないといけないんだよな。


 ――となれば、そのエネルギーの回収をしていないこの世界はどうなるかというと、それはもう今のままでは滅びる運命しかない。

 命を生み出せない上に、世界がダメになっても作り直せないし、維持し運営していくエネルギーを回収も出来ずに消費だけを続けているんだから滅びるしかないだろ?


 この世界について詳しく知らないから、なんとも言えないが、統計でも取れば出生率が下がっているって分かるんじゃないか? 新しい命を生み出す力が無くなるってのは、そういう所にも表れてくるからな。


「これはもう、マジで殺した方がいい奴だな」


 完全に何もしていないタイプの神だ。

 真っ当な神ってのは管理はしっかりやるから、こんな状況にはならない。

 邪神だって自分の世界の管理はする。戯れに滅ぼす世界でも、せっかくの遊び場なんだから修理して何度だって使うんだろ? そんな感じで邪神は自分の玩具である世界はなんだかんだで面倒を見てる。

 それなのに、ここの世界の奴はなんにもせずに放置なんで、考えようによっては邪神より性質タチが悪い。一体何をしてるのか俺は知る由もないんで、とやかくは言わないが、この状況は良くねぇよ。


 このまま放置されるよりかは、この世界の神をぶっ殺して、この世界の管理権を奪って適当なやつに渡した方がマシだし、場合によっては俺が管理しても良い。管理する世界が多いほど神々(俺達)は力を増すからな。


 ――とりあえず、やることは決まった。

 まずは、この世界を管理する神を見つけ出して、ぶっ殺す。次に、この世界を脱出する。この二つを目標にこれから俺は行動していくことにする。その間、この世界で面白そうなことがあれば首を突っ込む。戦って楽しそうな相手がいれば戦う。まぁ、こんな感じか?


 そうと決まれば、人がいるところを目指さないとな。

 この世界の宗教なんかを知れば、この世界を管理する神のことも分かるだろうし、そのためには人が多い所で情報を集めないといけない。


 俺は今後の方針を決めて廃墟を出る。

 元は城門であったことがうかがえる場所を通り抜けると、遠く地平線まで広がる草原が目に入った。どうやら、この廃墟は丘の上にあるようで、周囲を一望することができた。


 俺は周囲の地形を見下ろし、人の居そうな場所を探すと、それはすぐに見つかった。

 見つけたのは城壁に囲まれた都市で、その場所はここからそう離れてはいない。

 俺はとりあえずそこを目指すことにして、足を踏み出した。



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