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 赤神とは敵対関係になったと見て間違いないだろう。

 俺の目の前には赤神の力を具現化した巨人が立ち、敵意のこもった眼差しで俺を睨みつけていた。


「上から目線は俺の専売特許なんだがね」


 巨人の方がデカいから自然と俺を見下ろす形になる。

 大きさは10mくらいだろうか、まぁ細かいサイズはどうでもいいよね。


「お話しながら戦うかい? それとも──」


 俺が訊ねている最中に赤神の化身アバターが斬りかかってきた。

 巨体に似合わぬ俊敏さに加え、巨人は六本の腕を持ち、それぞれに剣を握っている。

 六本の腕の右手側の三本が一斉に振り下ろされ、線ではなく面で刃が俺に襲い掛かる。


「話しながらるのは好かないかい? じゃあ、そっちは黙ってろうか」


 言いながら俺は後ろに飛び退いて剣の間合いから逃れる。

 だが、俺の躱した刃は床にそのまま叩きつけられると同時に、叩きつけた場所から炎の波が広がり、後ろに下がった俺に向かってくる。


顕現せよアライズ、我がカルマ──」


 俺は業術の発動によって高熱を帯びた内力を放出して、炎の波をそれ以上の熱量で掻き消す。

 赤神と俺はどうやら系統が一見すると似てるようだ。向こうは『炎』で俺は『熱』だしね。


「もうちょっと熱くしてくれてもいいぜ?」


 俺が挑発的な言葉を投げかけると巨人は大きさから想像もできない身軽さで跳躍すると巨体を翻らせながら、俺に飛び掛かってくる。


駆動せよドライブ、我がカルマ──」


 思っていたよりも強いようなので俺は業術の駆動態を解禁。

 その瞬間、内力量が爆発的に膨れ上がり、俺はその内力を全て身体能力の強化に当て、跳躍しながら剣を振りかぶる巨人を迎え撃つ構えを取る。

 そして、飛び掛かる勢いを乗せて振り下ろされた剣を俺は両手で挟み込むようにして受け止めた。


「単純なサイズ差でパワーが決まるような戦いじゃないんでね」


 小さくても内力でゴリゴリに強化してる俺の方が力持ちだぜ。

 まぁ、内力量が互角なら、内力を込められる部分が多いから体が大きい方が有利なんだけどね。

 でも、赤神の力の化身と俺とじゃ、俺の方が内力量は遥かに上だ。


 俺に剣を止められた巨人だが、それに動じることもなく即座に続けての攻撃に移る。

 俺に振り下ろした剣に力を込め、受け止めた状態の俺を抑え込むと、残った五本の腕を振るい、動けない俺を残りの剣で叩き潰そうとする。


 流石に俺でも同時に何本も受け止めることは無理だ。

 俺は受け止めていた剣を放すと、一斉に襲い掛かってくる剣に対して拳を叩きつけて弾く。

 そうして両手の拳を振るい、俺は巨人が六本の腕に持つ六本の剣を二本の腕と二つの拳で防ぐ。


「パワーもスピードも俺の方が上みたいだね」


 俺の拳が叩きつけられるたびに巨人の剣は大きく弾かれる。

 そうしている内に別の腕の剣が振り下ろされるわけだが、その時には既に俺は次の拳を放つ準備を終えている。

 剣を弾けているのは俺のパワーの方が上だから、すぐに拳を出せるのは俺の攻撃のスピードが速いから──まぁ、それだけで防げてるわけでもないんだけどさ。


 単純に体の大きさに差があり過ぎてね。

 結局の所、巨人は剣を振るうにしても、足元にいる俺に当てるためには軌道が限られる。だから、太刀筋が読みやすいし、防ぎやすいってわけだ。

 俺に剣を当てるために必要な軌道が決まってるわけだから、その部分だけに警戒しておけばいいってわけ。

 それと六本の腕があるってのも良くないね。

 六本の腕があっても、それぞれが自由に動かせるわけじゃない。

 腕が多すぎて、それぞれの腕が干渉するから、六本の腕の可動域は限定される。そのせいで、それぞれの腕で剣を振るう軌道は決まってくるし、どの腕がどんな風に攻撃してくるか分かってれば、防御するのは簡単だ。

 正直な所、さっきの使徒の方が俺の相手としては良かったと思うぜ?


「こんなもんならさっさと終いにするぜ?」


 俺が力を込めて振り下ろされた剣を殴りつけると、剣が弾かれた勢いで巨人の体が揺らぐ。

 俺はその隙を逃さずに跳躍すると、巨人の顔面に拳を叩きつけた。サイズ差があるが、そんなのは大した問題にならず、俺の拳を食らった巨人は吹っ飛び、ダンジョンの床を転がっていく。


「俺とるにはタイミングが良くなかったね」


 ガイやラ゠ギィなんかの強い奴らと戦ったからか、戦闘の勘が戻ってきてるんだよね。

 自分でも気づかなかったけど、この世界に来るまではかなり鈍ってたみたいだ。ヌルい相手が多かったからかね。それが最近は手強い奴と戦えてるからか、全盛期と同じ──とまではいかないけど、今の俺はかなり調子がいい。

 自分の調子を上げるには相応の相手とるのが一番ってことだね。


「ま、戦う相手とタイミングは選べないからこそ楽しい面もあるんだけどさ」


 絶不調の時に絶好調の相手と戦うことなんて良くあるよ。スポーツの試合と違って日程が決まってるわけじゃないしね。


 俺の拳を食らって倒れた巨人が身軽な動きで起き上がる。

 流石に一発殴った程度じゃ沈まねぇようだ。とはいえ、それで警戒するほどでもねぇけどさ。

 一発で死なねぇなら、ノンビリと何千発と殴れば良いだけの話だしさ。


 巨人が駆け出し、俺との距離を詰める。

 巨体に見合わぬ素早い身のこなし──だけどまぁ、だから何だって気がするね。

 俺は巨人の動きだしに対して先回りするように既に動き出し、相手が距離を詰めるより先に距離を詰めている。そして、俺は巨人の足元に駆け寄りながら、その足を思いっきり蹴り飛ばす。

 サイズ差のせいで俺が足元をちょろちょろしていれば巨人は対応が難しいということは明らかだった。その上で、殴れば普通に聞く程度にパワーは互角なんだから、いくらでもやりようはある。


 俺が巨人の脛を蹴り飛ばすと、巨人は再び倒れこんだ。

 サイズに差はあってもパワーに差は無いんだから、当然そうなるよな。

 デカいってのが有利なのはパワー差があるからで、それが無い場合、自分は的として大きく、相手は的として小さくなるんだから不利だろ?


「デカくせず人間サイズの体にそのパワーとスピードを持たせた方が良かったね」


 俺は倒れた巨人の顔の上に飛び乗ると、腕を振り上げ、拳に莫大な量の内力を込めて圧縮する。

 すると、俺の拳に込められた内力が真紅の色を纏い始める。


「プロミネンス──」


 俺は終いにするって言ったぜ? だから、必殺で決めてやろうじゃないか。

 そう思って必殺の一撃を放とうとするが、赤神の力の化身である巨人は最後のあがきを見せる。

 倒れた巨人の体から炎が吹き上がり、俺はそれから逃げるために巨人の体から飛び降りて、距離を取る。

 そして、間合いを取って改めて見ると巨人は鎧のように全身に炎を纏っていた。


「炎の巨人ってのは分かりやすくていいけどさ」


 全身に炎を纏っているせいか巨人の実体は見えない。

 こうなると殴って倒せるか分かんねぇんだよな。もしかしたら、体が炎になってるかもしれないし──


「──流撃ロンジィア


 俺が巨人への対応を考えようとした矢先、この部屋に通じる三つの道の一つから部屋の中に向けて仙理術士の流撃りゅうげきが放たれる。

 それは一直線に巨人に向かい、直撃すると巨人が纏っていた炎を全て掻き消し、その姿を明らかにする。


「タイマンのつもりだったんだけど?」


 俺は通路から部屋へと現れた人影に向かって話しかける。

 その人影とは当然、ラ゠ギィであり、ラ゠ギィは俺に対して軽く頭を下げると──


「それは申し訳ありませんでした。難儀していると思い助力したのですが、必要なかったようですね」


「当然だろ。俺がこんな雑魚相手に苦戦するかよ」


 俺は失せろとラ゠ギィを追い払うように手を振るが、ラ゠ギィは気にせずに俺の隣に並び立つ。

 そんな俺達を見据えながら炎を掻き消された巨人は剣を構える。

 良いね、この状況でもる気とか、好きになりそうだぜ。俺とラ゠ギィの二人を相手にするとか正気とは思えねぇけど俺は正気じゃない奴が好きなんでね。


「俺が一人で倒したら、あの魔物カウントは俺の物で良いか?」


 俺は隣に立っているラ゠ギィに訊ねる。

 協力するからノーカウントって言いだしたら、先にこいつを始末しようと思うんだけどね。


「どうぞお譲りしますよ。先着順ということで」


「じゃあ、どっちが魔物を多く倒したかの勝負はどうする?」


 俺はカウントしてないし、そっちもカウントしてないだろ。


「おそらく同じくらいの魔物を倒したと思うので、アレを倒した方が勝ちでいいのではないでしょうか?」


「それはつまり俺に勝ちを譲るってことかい?」


 今更、あの巨人に負けるとは思えないしな。


「そう考えていただいて構いませんよ」


 そりゃどうも。御礼として今度キミとる時は全力でぶっ殺してやるよ。

 さて、それじゃあ話も済んだし、終わりにしようか。

 そう思って巨人を見ると、巨人は俺達に対して怒りを露に突っ込んできていた。


 俺が勝ち確信したように話をしているのが気に入らなかったんだろうかね?

 まぁ、どうでもいいか、俺が勝つのは確実なわけだしな。

 そんなことを考えながら俺は内力を込めた拳を突進してくる巨人に向けて突き出し──


「プロミネンス・ペネトレイト」


 突き出した拳から放出される真紅の内力の奔流が巨人の上半身を蒸発させて、その存在を消し飛ばした。


「言ったろ、さっさと終いにするってさ」


 言った通りにこれで終いだ。

 俺を倒したければ、もっと強い奴を送り込むんだったね。


「第三ラウンドをしたいなら別のを寄越しても良いぜ?」


 俺はこの結末を何処かで見ているだろう赤神に呼びかけるが、反応は無い。


「どうやら、このダンジョンで我々に何かを仕掛けるのは諦めたようです」


 ラ゠ギィも感じ取ったのか、ダンジョンの中に赤神の気配はない。

 もしかしたら、俺達が暴れたせいでこのダンジョンは見限ったとか、そんな感じだろうか。


「魔物を生まれるのが赤神の力によるものだとしたら、赤神が放棄したことでダンジョンに魔物が溢れるという事態は改善したかと」


 ラ゠ギィがどうでもいいことを俺に伝えてくる。

 まぁ、魔物が出なくなったのは良いことなのかな? 赤神あいつの気分次第で魔物が増えるってのは良くないしな。けど、そういうのは俺にとっては割とどうでも良いことなんだよね


「赤神自身が出てくるかと思ったけど、当てが外れたね」


 ま、そんなにこっちに都合よくはいかねぇか。

 当初の予定通り、コイン集めをするしかねぇってことだね。


 ──とはいえ、赤神には宣戦布告したんだ。

 向こうだってこっちを意識してるだろうし、何かしら仕掛けてくるかもね。

 そうなりゃ楽しくなりそうで最高だぜ。


 でもまぁ、今はダンジョンの魔物は減りましたよって報告するとしようじゃないか。

 それで、この仕事は完了だ。








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