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待ち伏せ

 

「まぁ、どうでもいいか」


 ダンジョンマスターの少年とそのお守りの女の子の処遇を決めるにあたり、俺は放置って結論を出した。

 だって、どうでもいいからな。あんまり興味が無いのよ、こいつらに関してはさ。

 これから先もダンジョンを使って何かやっていくつもりなら、それでも良いんじゃない? 俺が口を出すようなことじゃないよ。


「邪魔したね、俺は帰るよ」


 色々と状況の把握に困っている二人を放って置いて俺はゼティに、ここから出て行くための道を用意するように促す。ゼティは俺の決定に不満があるようで、呆れたように溜息をつきつつも、仕方ないと言った感じで次元の壁を斬り裂いて、部屋から出る道を作る。


「直通の道でも作ってくれると助かるんだけど」


 状況の変化についていけず呆然としているダンジョンマスターの男の子にそう言って、俺達は部屋から出て行き、来た時と同じように世界の外側を通って、ダンジョンのコアがあった場所に戻る。


「じゃあ、帰るか」


 なんだかイマイチ気分が戻らねぇし、さっさと帰って寝ようと思う。

 俺は睡眠が必要ない体だけど、寝ること自体に意味が無いわけじゃないからな。

 そういうことでダンジョンを出ようって話を、ゼティにしようと後ろを振り返るが、どういうわけかゼティがいない。

 はて? さっきまでは俺の後ろを歩いていたような気がするが──


「まぁ、待ってりゃ戻ってくるだろ」


 俺がそう結論を出して十分程待っているとゼティが次元の壁を斬り裂いて姿を現す。

 姿を現した時のゼティは仏頂面で近寄りがたい気配を出しているが、俺はそんなことは気にせずゼティに訊ねる。


「殺して来たのか?」


 ゼティの性格から考えるに、この状況でゼティが俺から離れてまでやることと言ったら、さっきのダンジョンマスターの少年の処遇についてのことだろう。


「生かしておいても仕方ない連中だ。放っておけば、何も知らん奴らが命を奪われる」


 そりゃあそうだろうねぇ。

 彼らは生かしておけばダンジョンは再開されるだろうし、そうなればダンジョンに入ってくる奴らはあの少年が操る魔物に殺されることになる。将来の人的被害を減らすってこと考えれば、それも仕方ないよね。

 俺はそれに関してどうでもいいやと思ったけど、ゼティはどうでも良いと思わなかったってそれだけの話なんで、ゼティのやったことに関してとやかく言うつもりは無い。ただ──


 あの部屋にいたのって二人だけじゃないと思うんだが、もう一人はどうしたんだろうか?

 プリンは三つあった。ついでに誰が見るのか映像ソフトに幼児向けのがあったりもしたんだが、さてゼティ君はどんな相手を何人斬って来たんだろうか?

 わざわざ、聞くような真似はしないけど。ストレスになることは避けてほしいねって思う。体感はどうなのか分からねぇけど、実時間では1000年以上生きているんだからさ。上手い生き方ってものを学習して欲しいよ。

 生かしておいたら他の人間に被害が出る連中であったとしても、別にゼティが始末する必要はねぇよ。ゼティ自身が許せないって理由だったとしても、ストレスを感じるくらいならやらない方が良いんじゃないかと俺は思うけどね。


「何か言いたそうだな」

「別に。俺はお前の行動に対してとやかく言うようなことはしないよ」


 俺は俺の使徒の行動に関しては自主性に任せているし、俺の頼みを聞けば、後は好きに生きて良いって約束してるんだから、好きにすればいい。思う所はあっても口出しはしないさ。


 その後、俺達は特に何か話すことも無く、ダンジョンの来た道を戻る。

 そうして、ダンジョンの入り口──帰り道なんで今は出口だが、その場所に辿り着く。


「結局、この世界から出る手がかりは無かったな」

「そんなに期待もしてなかったさ」


 そんな風に成果を話しながら俺達はダンジョンから出る。

 ダンジョンから出れば、ジョン達が待っているだろうし、ゼティが救出したらしいカイル達も待っている筈なんで、とりあえずカイルから話を聞いて、今後の事はそれから考えようか──


「随分と早い帰還だな」


 ──そんな出迎えの言葉を放ったのはカイル達ではなかった。

 ダンジョンを出た俺達の目に真っ先に飛び込んできたのは、無数の兵士達とそれを率いる騎士ギースレインの姿であり、ギースレインはカイルを踏みつけながら、皮肉気な笑みを浮かべながら俺に声をかけ出迎えの言葉を言ったのだった。


「何をしてるんだ?」


 状況を確認すると、カイルの仲間たちに加えてジョンも兵士達に拘束されている。

 争った形跡が無いにも関わらず、ジョンやギドの顔に痣があることから奇襲を受けて、多勢に無勢ですぐに降伏したという感じだろう。


「何をしてる? まさか、そんなことを分かり切ったことを聞かれるとは思わなかった」


「俺がカイル達を探して動いたから、何かあると思って兵を率いてついてきたって所だろ? そしたらカイル達を見つけて、怪しいと思ったから捕まえた。そんな感じじゃないか?」


 分かり切った質問を答えるのが嫌そうだったから先に答えてやったんだが、それならわざわざ質問することもなかったね。

 でもまぁ、本音では何か言いたかったらしく、それを遮られたせいでギースレインは面白くなさそうな気配を出してくる。


「貴様はこんな奴が伯爵の隠し子だとでも思っているのか?」


 ギースはカイルを踏みつける足に力を込め、カイルが呻き声をあげる。

 相手が騎士だからって遠慮してるのか、それとも仲間が捉えられているから抵抗しないのか、どっちにしろギースレインにされるがままだ。


「調子に乗るなよ」


 カイルの状況を見かねたゼティが前に出ようとする。

 誰かが一方的に痛めつけられている状況が気に食わないんだろうけど、今はやめろって。

 俺もイマイチ気合いが入ってない状況だし、あんまり手助けできないんだからさ。


「おっと、やめてくれよ? 少しでも私に近づいた瞬間、兵士たちがそこの冒険者たちを始末するぞ?」


「それよりも速く、この場の全員の首を落とすと言ったら?」


 ハッタリの言い合いはカッコ悪いからやめろよ。

 ゼティ君もさぁ、ちょっと冷静じゃなくなってるぜ? なんか悪い物でも斬ったか?


「私の首を落とされるなら、それは困るがな。だが、私からの連絡が少しでも途絶えたら、近くにある村の人間を皆殺しにするように兵士達には命令を下しているぞ? それでも私を斬るというのか?」


「やめとけ、ゼティ。状況が良くねぇよ」


「状況が悪いなら、さっさと本気を出せ。こんな奴らに良いようにされてて平気なのか?」


 本気を出すのは無理だなぁ。どうにも気分が乗らねぇんだよ。

 カイル達の身の安全は守ってやろうって気分ではあるから、どうにも抵抗しようって気にならないしさ。


「どうやら、アッシュ殿は状況を理解してくれているようだ。なに、命までは取らないさ」


 そいつは有難いねぇ。


「でも、その代わり俺に何かしてほしいんだろう?」


「その通り、話が早くて助かるよ」


「アッシュ!」


 言いなりになるなってか? 黙ってろゼティ。

 俺が睨みつけると、ゼティは黙る。俺に考えがあると思ってくれたんで余計なことは言わないようにしてくれたんだろう。それくらいは分かる程度に長い付き合いなのさ。


「そちらの……確か勇者殿だったかな? 勇者殿は不服そうだが、さてどうするかな?」


「勇者は廃業したよ」


「それなら一般人だな。そこの一般人は私に何か文句がありそうだが、アッシュ殿はどうかね?」


「俺の方は特にねぇよ」


 ゼティも少し冷静になってくれたようで何よりだ。

 正義感が強いのは良いけど、今はちょっと控えてくれると助かるぜ。

 流石に、この場にいるカイル達を助けるのは何とか出来ても、村の方にも兵士がいるっていうなら、そっちの方はどうにもならねぇから我慢する方が良い。

 何にも知らねぇ人間が死んでも俺は困らねぇけど、ちょっと可哀想かなって感じはあるしさ。

 ……そういえば、リィナちゃんがいねぇな。ジョンと一緒にいるはずなんだけど、捕まっているのはジョンだけだ。


「心配せずとも、危害を加えるようなことはしない。キミたちにはどうして、この冒険者が伯爵の隠し子だと思ったのか、その根拠をシウス様に話してもらいたいだけだ。あの方は確証のない情報をというのを嫌うからね」


 俺がリィナちゃんのことを考えている様を見て勘違いしたのか、ギースレインが心配いらないと俺への頼み事を明らかにする。

 どうやら、これから俺はこの地の実質的な支配者である領主子息に会いに行くことになるようだ。願ってもない展開に、ちょっと楽しくなってきたぜ。






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