即席チーム
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剣神祭に出るためのコイン集めの一環でダンジョンの魔物退治を請け負った俺。
しかし、ダンジョンだという遺跡にやって来るとラ゠ギィが先回りしていた。
「勝手に動くのはどうかと思いますよ?」
顔に薄く張り付いたような笑みを浮かべたラ゠ギィの狐のような顔には感情の色は浮かんでいない。
参ったね、ラ゠ギィに知られずにコインを稼ごうと思ったんだけどな。
「終わってから報告しようと思ったんだよ」
そんなことは全く思っていないが、俺は思っても無いことを口に出すのに全く抵抗がない男なんでね。
まぁ、俺の狙いなんてラ゠ギィは予想していただろうし、嘘を吐くことに意味は無いんだけどね。
「そうでしたか、では私に知られずにコインを集めておいて、最後に出し抜こうなどと思っているのは私の杞憂でしょうか?」
「傷つくなぁ、俺が協力者であるキミを裏切るわけないだろ? もうちょっと俺の事を信用してくれよ」
ちなみに俺はキミのことは全く信用してないけどね。
最後はみんなで集めたコインを山分けして仲良く剣神祭に出場するなんてラ゠ギィは言ったけど、最後は山分けしたコインに隠し持っていたコインを上積みして、俺達より枚数を増やそうとか考えてそうだよね。ちなみに俺はそうしようと考えてた。
「それは失礼をいたしました。お詫びに、貴方の仕事をお手伝いしましょう」
ま、そうなるよな。
手伝いなんて言ってるけど、要は俺がズルをしないように監視するってことだ。
断ることもできるけど、さてどうしたもんかね。
「まぁ、いいか。じゃあ、働いてもらおうか」
既に俺がやろうとしてることは知られてるんだから、隠してもしょうがない。
それだったら、手伝ってもらった方が得かなって思ったんで、俺はラ゠ギィの申し出を受け入れる。
「──さて、さっさと魔物を駆除しようか」
俺はラ゠ギィの後ろにある遺跡の入り口を見る。
正確には遺跡と言うか神殿跡って感じだな。
修行場所として有名なのか神殿の周りは野営地になってるし、少し遠くには住居らしきものも見える。
俺がそちらに目をやるとラ゠ギィが──
「入る前に話をつけてきた方がいいかもしれませんね」
遺跡というかダンジョンの入場を管理してる奴がいるってことだろうか?
面倒くせぇなぁ。そういうことはラ゠ギィに任せよう。手伝うとか言った以上、そういう手続きだってやってくれるんだろ?
そう思って俺はラ゠ギィに頼もうとしたら、俺が頼むより先にラ゠ギィは動き出し、遺跡の近くに立っていた建物に向かっていった。
おそらく、それがダンジョンの管理事務所なんだろう。まぁ、管理って言っても入った奴の人数の管理とかをしてるだけだろうけどさ。
ラ゠ギィが戻ってくるまでさほど時間はかからなかった。
俺は遺跡の入り口に腰掛けてボンヤリと景色を眺めていたら、ラ゠ギィが戻ってきた。
だが、戻ってきたラ゠ギィは一人ではなく──
「げっ」
そんな声を上げたのは俺ではないし、ラ゠ギィでもない。
じゃあ、誰かというと──
「カイル君じゃないか、さっきぶりだね」
カイル君と仲間たちがラ゠ギィと一緒に俺の元に戻ってきた。
当然というべきか予想外というべきか、その中にはヘイズもいる。
「やぁ、思いがけずの再会だね」
そう言ってヘイズが俺に笑いかける。
耐性の無い奴だったら、一瞬で魅了される笑顔だ。
顔が良すぎるってのも限度が無いと凶器にしかならねぇな。
「おっす」
「久しぶりね」
「……元気だった……?」
ギド、、クロエ、コリスの三人が俺を見つけると次々と挨拶をしてくる。
いいね、キミらは愛想が良くてさ。キミらのリーダーは俺を見ると第一声が「げっ」なんだぜ?
キミらの事を見習ってカイル君も俺に好意的な態度を見せて欲しいもんだぜ。
「倒した魔物の確認と魔物から出る魔石の回収のために、別の冒険者パーティーも同行するそうです」
ラ゠ギィがカイル君たちを連れてきた理由を俺に説明する。
まぁ、単独のパーティーだけで潜らせて、虚偽の報告でもされたら困るし、別のパーティーも同行するってのはおかしくはないね。でも、それは面識が無いパーティーじゃないと駄目だと思うけどさ。顔見知り同士だと口裏を合わせることになるだろうし。
「ええと、一応、僕達もついていきます。よろしくお願いします」
カイル君は引き攣った顔で俺によろしくしてくる。
もっと笑顔を見せて欲しいもんだね。俺はキミにそんなに酷いことをしてないだろ?
「こちらこそ、よろしくね。とりあえず、俺の後ろをノンビリついてくればいいから」
正確には俺とラ゠ギィだけどな。
あぁでも、どうだろうかと考えなおして俺はヘイズを見た。
「キミはどうするんだい?」
俺とラ゠ギィとヘイズの三人で先頭を歩くかい?
それでも俺は構わないぜっていうか、そっちの方が良いね。
この機会にヘイズの能力を見定めさせてもらうからさ。
「ボクは遠慮させてもらいますよ。戦うのは好きじゃないし、ボクがいなくとも充分すぎる戦力でしょう」
しかし、俺の期待に反してヘイズはそう言うと俺とラ゠ギィを見る。
へぇ、ラ゠ギィも戦力に勘定しているんだ。見た目はただの僧侶なのに良く分かるもんだ。
見る目はあるようだね。まぁ、もしくはこの世界の宣教師ってのはどういうものか周知されているからかな。
ま、どうでもいいや。
俺は世間話をしにきたわけじゃないんだ。
さっさと魔物退治をしようか。
俺はカイル君たちを引き連れて、遺跡の中に入る。
遺跡の中は頻繁に人が訪れるのか埃っぽさは無い。それどころか、掃除すらしてるようだった。
「皆さんは、このダンジョンには頻繁に来られるのですか?」
ラ゠ギィがカイル君たちに訊ねる。
「それなりには来ていました。魔物が増える前までですけど」
それはつまり最近、魔物が増えたってことかな?
カイル君たちは最近イグナシスに来たみたいだしね。
「でも、そんなには詳しくは無いんです。浅い階層でダンジョンに慣れるのと修業をしていただけなんで」
カイル君の答えはラ゠ギィにとっては期待外れだっただろうか?
情報を得られなかったラ゠ギィは表情を変えずにカイル君に微笑を向けたままだった。
「ダンジョンには遺跡の中にある階段をおりて入ります」
カイル君の案内について階段を降りると遺跡の地下には大きな扉があった。
飾り気のない武骨な扉だ。カイル君とギドがそれを押して開け、ダンジョンの入り口を解き放つ。
「このダンジョンは罠も無く単純なつくりになっています。ただし魔物は強いですけど」
まぁ、修行の場にされるくらいだからね。
あんまり罠があったら何の修行に来てるのかわかんなくなっちまうしな。
「じゃ、行こうか」
俺は開けられた扉の中に先頭を切って乗り込む。
その後に続くのはラ゠ギィ、カイル君たちだ。
最後尾にヘイズがいるのは後ろを警戒しているのか、それとも戦闘に参加する意思が全く無いからだろうか? まぁ、別にいらねぇけどさ。俺とラ゠ギィがいれば充分さ。
「ダンジョンというものには初めて入りましたが、このような景色なのですね」
中に入るなり、ラ゠ギィがノンビリとしたことを言いだす。
石の壁と床に一本道のダンジョンで、道を抜ければ大部屋だろうか?
扉の先にはそんな空間が広がっている。
「こんな感じの場所ばっかりじゃねぇけどな」
もっと機械的な所もあれば自然に溢れた所もある。
そこら辺は世界によって変わるもんだから、一概にこうとは言えねぇんだよな。
ま、そんなに変わらないものもあるけどさ。その変わらないものっていうのは──
「……魔物」
斥候役のコリスちゃんが通路の奥からやってくる魔物の気配を察知し、俺に伝える。
何処のダンジョンも魔物やそれに準ずる侵入者の迎撃を行う存在がいるのさ。
「さっそくのお出ましで嬉しいね。どうやら歓迎してくれてるようだ」
俺は先陣を切るように前に出る。
そして、そんな俺に追随しラ゠ギィが俺の隣に立つ。
「あの、後ろにいた方が……」
カイル君が魔物を迎え撃つように前に出たラ゠ギィに声をかける。
なるほどカイル君たちからすればラ゠ギィは僧侶だもんな。
戦闘とか無理そうに見えるんだろう。でも、それは違うんだよなぁ。
「手伝ってもよろしいですか?」
ラ゠ギィは拳を構えながら俺に訊ねる。
以前に見たのと同じ腰の位置が高い、ボクシングやムエタイを思わせる構えだ。
「邪魔をしなけりゃいいぜ」
答えながら俺は拳を構える。
俺の構えは足を開き、僅かに腰を落とした構え。
俺とラ゠ギィは戦闘態勢を取りながら、近づいてくる魔物の気配を感じ、通路の奥を見据え──
「さぁ、それじゃあ、駆除していこうか」
──そして、俺とラ゠ギィは敵に向かって駆け出した。




