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思わぬ再会

 

 ラ゠ギィと協力の約束をした俺は帰って、ゼティ達にそのことを伝えた。

 その反応はというと、案の定と言うか何と言うべきか……

 とりあえず、ゼティ以外は「まぁ、良いんじゃない?」って感じだけど、ゼティはラ゠ギィとの協力することに関しては否定的な立場だった。

 ゼティが嫌がるのはラ゠ギィが嫌というよりは仙理術士が嫌ってだけの話だ。

 まぁ、ゼティにとってはそれだけでも大きな理由ではあるんだけどさ。

 一応、適当に利用して最後は切り捨てるということを伝えたら、不満はありそうだったけど、納得してくれた。


 そうして白神教会の連中と協力体制を取るって話をしたうえで、俺は剣神祭の話とそれに出場するためにはコインを集めないといけないという話をした。参加して勝たないと赤神に会うのは難しいって話もすると、全員が面倒臭そうな顔をしたのが印象的だったね。


 いや、俺だって面倒くせぇなぁって思うよ。

 でも、それくらいしか手段が無いんだから仕方ないじゃん。


「とにかく今はどうやったら、コインが手に入るのかって情報収集をするべきだね」


 俺がそう言って、とりあえずの方針は決まった。

 全員でコインの入手方法を調べて、一番効率の良い方法を見つける。

 それが第一だ。放っておいても、ラ゠ギィあたりが良いのを見つけてくれそうな気もするが、ラ゠ギィに主導権イニシアティブを取られるのはよろしくねぇと俺は思うのよね。


 そうして、ラ゠ギィと会った翌日、俺達は行動を開始することになった。

 やることは全員で情報収集だ。イグナシスの街中を歩いて、どうすりゃコインが手に入れられるのか具体的な方法を把握しないといけないんでね。

 そういうわけで、イグナシスを探索するわけだが──


「なんで、一緒なんだい?」


 俺とゼティが一緒に行動することになった。


「俺がいなければ、お前は何をするか分からないからな」


 ゼティは俺の監視として一緒についてくるようだ。

 信用ねぇなぁ。誰の同意も得ずに仙理術士の連中と手を組んだのが気に食わないんだろうね。

 また、勝手をされたら嫌だってことでゼティは俺を見張るつもりなんだろう。

 まぁ、いいけどね。今日は勝手なことはしないつもりなんで、見られてても何も困らねぇからさ。


「まず、何から調べる?」


 街の中に入るなりゼティは俺に訊ねてくる。

 キミも少しは考えて欲しいんだけどね。

 ゼティはカッコつけてるけど、脳筋だから、こういう仕事をする相棒としては頼りない。

 リィナちゃん辺りと一緒に行動できれば一番だったんだけど、リィナちゃんはセレシア、システラと情報収集してるからなぁ……。


「冒険者ギルドでも行ってみるかな」


 ラ゠ギィの話ではイグナシスに貢献したり、戦士としての技量を証明すればコインが貰えるらしいから、ギルド辺りに行くのが適当だと思う。

 冒険者としてイグナシスに貢献すれば貰えるだろうし、貰えなければギルドにいる冒険者をぶちのめして、俺の強さを証明すればいい。

 なので、最初は冒険者ギルドに行くのが無難だと思うね。


「……しかし、行ったところでどうにもならないような気もするがな」


 俺と一緒にイグナシスの街中を歩きながら、ゼティは街の様子を見て言う。

 まぁ、俺も改めて街の様子を見たら、ゼティと同じ気持ちになってるけどさ。


 イグナシスの街中は一か月後に迫った剣神祭の話題で持ちきりだった。

 通りすぎていく人々の会話を盗み聞きしている限りでは、出場者はほぼ確定しているような雰囲気だ。

 そりゃまぁ、そうだろうなぁ。どうやら剣神祭ってのは一年かけて準備するのが普通らしいしさ。

 その場限りの強さの証明ではなく、一年間コンスタントに自分の強さを証明してきた奴が選ばれるってのが剣神祭の趣旨のようだから、俺達のように一ヵ月でなんとかしようとしている奴らの方が邪道のようだ。


「俺はこういうは好かないな」


 ゼティは街中に貼られた剣神祭の張り紙を見ながら言う。

 こういう武術の大会というか、そもそも試合自体が好きじゃねぇもんな、ゼティはさ。

 まぁ、自分の好き嫌いの問題だけで留めてるんだから分別はあるほうだと思うぜ。


「これに出なければいけないのだろう? しかし、既に出場者は決定しているようにも見えるが……」


 言いながらゼティが見るのは通りに並ぶ露店で、そこには剣神祭の出場者らしき人が描かれた姿絵が並んでいる。

 それを見ると、もう決定したようにも見えるが──


「ラ゠ギィの話じゃ、コインの枚数の集計を終えて、その獲得上位が出場資格を得られるらしいから、現時点では決まってないはずだぜ?」


 まぁ、それだって本当の所はどうか怪しいけどさ。

 コインの枚数関係なしに出場が内定してる可能性だって無くはないからな。


「ま、こっちは公正に行われているのを信じて、頑張るしかねぇのよ」


 俺がそんな結論を口にすると、ちょうど冒険者ギルドに到着した。

 フェルムほどではないが随分としっかりした建物だ。

 どうやら、イグナシスは公営の冒険者ギルドしかないみたいだ。

 冒険者ギルドを公共の利益のために設置される機関とみなしてるのかもね。

 ま、そこら辺はどうでもいいことだ。

 俺達にとって重要なのは、コインが貰えるかどうかってこと。


 俺とゼティは躊躇わずにギルドの中に入る。

 そうして入ったギルドの中は活気に溢れ、入ってきた俺達にわざわざ目を止める奴らはいない。

 どうやら冒険者達は自分達のことで精一杯のようだ。依頼書の貼られた掲示板の前にたむろしたり、受付に並んでいたりと忙しそうにしている。


「嫌だねぇ」


 余裕がないってのは好みじゃないね。

 もっと冒険者ってのは気楽に余裕を持って生きる仕事じゃないのかい?

 そう訊ねたい気持ちだけれども、話しかけるような相手はいない。

 仕方ないので、俺はゼティを伴い、受付へと向かうことにした。

 とりあえず、ちゃっちゃと質問してコインの入手法をハッキリさせておきたい。


「ちょっと良いかい?」


 俺は空いている受付に向かうと、そこには機嫌の悪そうな受付嬢が。

 俺は機嫌の悪い女の子の機嫌を更に悪くすることに関して定評のある男なわけだが、俺は嫌な思いはしないんで話しかける。


「休憩中です」


 そう言いながら受付嬢は自分の前に置かれた『休憩中』の札を指差す。

 俺はその札を見えない位置にずらすと話を続ける。


「悪いね、字が読めないのよ」


「休憩中です」


「いいじゃない、ちょっとで済むからさ」


「休憩中です」


「そこの張り紙を読むと休憩終わりまで、もう少しじゃない。ちょっと早めたって良いだろ?」


「……字が読めないと言いませんでしたか?」


「言ったかもしれないけど、この一瞬で読めるようになったかもしれないだろ」


 受付嬢が俺を面倒臭い奴と睨みつける。

 いいね、面倒臭くなってきた? じゃあ、ここからが本題だ。

 答えてくれないと、ずっとキミに話しかけ続けるぜ?


「剣神祭に出場するためのコインが欲しいんだけど、どうやったら手に入る?」


 俺が訊ねると受付嬢はギルドに置かれた掲示板を指差し──


「あそこにある依頼をこなせば、依頼に応じたコインをギルドが報酬として渡します」


 やっぱりラ゠ギィの言う通りだね。

 依頼に応じた──ってことは一律じゃないってことだから、難易度の高そうな依頼ほど多くコインが貰えるとか、そういうことがあるんだろうか?


 俺は受付の女の子に御礼を言いつつ、その場から離れると掲示板に向かう。

 ゼティは俺とは違う受付の列に普通に並んでいたので、とりあえず放っておくことにした。


 掲示板の前には人だかりが出来ていたので、それをかき分けて掲示板の前に出る。

 すると、そこに貼られていた依頼書にはご丁寧に貰えるコインの枚数まで記載されていた。

 どうやら、冒険者達もそれを重要視しているようで、掲示板の前に立っている冒険者達の視線が向かうのはコインの枚数が多い依頼が書かれた紙だ。


 俺はその中から特に何も考えず貰えるコインの枚数が多い依頼を選ぶ。

 掲示板に貼られていた紙を剥がそうと手を伸ばそうとすると、俺が伸ばした手が誰かの手とぶつかる。

 同じ依頼を取ろうとした奴だ。俺はそいつの顔を見ようと、隣を振り向くと、そこにいたのは──


「──カイル君?」


 イクサスでもフェルムでいた冒険者のカイル君だった。


「げ、アッシュ・カラーズ?」


 カイル君は露骨に嫌そうな顔を俺に向けてくる。

 久しぶりの再会なんだから、もっと嬉しそうな顔をしろよ。

 俺は伸ばしていた手を依頼書からカイル君に向けると、その肩を掴み、そして自分の方に引き寄せてカイル君と肩を組んだ。


「久しぶりじゃん、元気してた?」


「あ、あのちょっと──」


 俺は依頼書に伸びていたカイル君の手を叩き落とす。

 俺と会ったのに、仕事を優先するとよろしくねぇなぁ。


「お仲間は? 元気してる?」


 積もる話もあるだろう?

 俺はねぇけど、キミはあるんじゃない?

 せっかくだから、話を聞いてやっても良いぜ?


「あの、依頼を──」


「いいじゃん、仕事なんてさ。そんなことより再開を祝おうぜ」


 コイン集めは明日からでも良くねぇかな?

 今日はキミの仲間と一緒にメシ食ったり酒を飲んで、お祝いしようぜ?

 そう思って、俺は肩を組んだカイル君を掲示板の前から連れ出す。


「じゃあ、仲間の所へ行って──」


 俺がカイル君に案内を促そうとしたした、その時だった。

 俺は気配を感じて、自分の背後を振り向くと、そこにいたのは──


「やぁ──」


 ゆるく波打つ長い黒髪を持った絶世の美男子だった。

 俺は思わず、そいつの名を口にする。


「ルゥ゠リィ・ヘイズ」


 俺の使徒の序列七十二位ルゥ゠リィ・ヘイズ。

 その男が何故か、この場にいたのだった。





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