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薄っぺらい協力関係

 

 お互いの目的のために手を組もうというラ゠ギィの申し出。

 それに対する、俺の答えはというと──


「いいぜ、協力しようか」


 赤神と会うためには剣神祭って武術大会に出ないといけない。

 そのためには協力しようって話だ。

 相手がムカつく奴で、そのうえ何が狙いかは分からねぇけど、俺は協力することに不満はねぇよ。


 ──まぁ、協力というよりは利用するつもりしかねぇけどさ。

 ラ゠ギィが言うには剣神祭に出るための資格を手にするのが大変らしいし、それを手にするためにラ゠ギィは協力して欲しいと言ってきた。

 だからって、ラ゠ギィと俺とで仲良く資格を分け合うのってのも馬鹿らしいだろ?

 出場資格さえ手に入ったらラ゠ギィは用済みだし、その時にラ゠ギィは始末する。ラ゠ギィも同じことを考えていると思うぜ?

 赤神に会うのは自分だけで良いと俺もラ゠ギィも思ってる。

 目的は同じでも、その目的は先着順な以上は邪魔者は排除しなきゃな。


「では、握手でもしましょうか?」


 ラ゠ギィの顔に浮かぶのは薄っぺらく顔に張り付いた微笑みだ。

 嫌だねぇ。どのタイミングで俺を切り捨てるか考えてる顔だぜ。

 まぁ、俺も他人の事を言えねぇけどさ。


 そんなことを思いつつ、俺はラ゠ギィの手を取り握手する。

 今だけは協力しておこうじゃないか。剣神祭ってのに出るまでの間はさ。


「お互いの歩み寄りも済んだことだし、どうやって剣神祭に参加するのか教えてくれるかい?」


 世間話をしたい関係でもないんでね。

 俺は単刀直入に肝心の話題を切り出す。

 するとラ゠ギィは声を潜め──


「ここで話をするのも難ですから、場所を変えましょう」


 良いね、人気ひとけの無い所に俺を連れてく気かい?

 怖いなぁ、お持ち帰りされちまうぜ。


 ──まぁ、俺もそっちの方が好都合だけどさ。

 ラ゠ギィから剣神祭の話を聞き、出場するための策ってのも聞けたなら、そこでラ゠ギィを切り捨てても良い場合だってある。ラ゠ギィの策を俺と俺の身内だけで実行できるなら、ラ゠ギィはその時点でいらなくなるし、始末して良くなるだろ?

 そういう時は人気ひとけの無い所の方が助かる。まぁ、ラ゠ギィの方も俺がそういう行動をした際に始末しやすいから人気の無い場所を選んでるんだろうけどさ。


 俺は拒否する理由も無いんで、ラ゠ギィの案内に従って闘技場から移動する。

 闘技場はまだ沸き立っているが、さて、あの勝った剣士はどうなったんだろうね?

 赤神の所に行ったとして、その後はどうなるんだろうか。気にはなるけど、今はそれよりもラ゠ギィの話を聞かねぇとな。


「ここでなら良いでしょう」


 ラ゠ギィが俺を案内した先はラ゠ギィが泊まっている宿だった。

 高級感を感じさせる宿で、白神教会の宣教師っての地位の高さを感じさせるね。

 聖職者なのに清貧とは無縁とも思うけどさ。

 まぁ、ラ゠ギィは立場上、都合が良いから宣教師をやっているだけで、信仰心なんてものは無いだろうから、別に問題ないのかね?


「自分のねぐらに案内する神経が信じらんねぇなぁ」


 ぶっちゃけどうでもいいんだけどね。

 罠に嵌めやすい場所だけど、罠ならむしろ望む所だしさ。


「信用を得るために、こちらの拠点を明らかにしたと考えられては如何ですか?」


 まぁ、寝込みを襲うのにはラ゠ギィの寝床を把握してるのは好都合だけどね。

 でも、俺はそういうことはしないから、意味がないよね。

 ま、ゴチャゴチャ言うのはやめにして本題に移ろうか。


 俺は宿のラウンジの隅にあった席に案内されるとラ゠ギィは俺の目の前に座る。

 宿の中には他の客もいて、それぞれに会話をしているので、俺達が目に付くということは無い。


「──それで? 剣神祭ってのにはどうやって出場するんだい?」


 俺は世間話をしたい気分でもないんで、単刀直入にラ゠ギィに訊ねる。

 するとラ゠ギィは自分の服のポケットを探り、そこから取り出した物を俺の前にあった机の上に置く。


「これを集めます」


 ラ゠ギィが机に置いたのは赤く輝く金属のコインだった。

 コインから感じられるのは微弱な神の気配で、その気配の特徴は闘技場で感じた赤神の物と同じだった。そのことから、このコインは赤神が作り出したものであることを察することができる。


「このコインの獲得枚数の上位が剣神祭への出場資格を得られます」


 ゲームみたいだなぁ。まぁ、いいけどさ、分かりやすくて。

 ただ、分かりやすくてもラ゠ギィが俺への協力を頼む程度には面倒臭い事情があるんだろう。


「どうやったら手に入る?」


 おそらく、手に入れる方法が問題なんだろう。

 ただ、獲得枚数の上位が出場資格を得るっていう条件からすれば、一枚二枚は簡単に手に入るんじゃないだろうか?

 獲得枚数が最大でも一桁に収まるとかだったら、同数が多くなるだろうし、差をつけるためには二桁か三桁くらいの枚数は簡単に獲得できないと上位から順番を付けづらいしな。

 1問1点で10点満点のテストだと同じ点数の奴が増えて上位から順番をつけるのに困るのに対して、1問1点で100点満点のテストだと点数にばらつきが出て、上位から順番をつけやすいのと同じ感じだと、思うんだけど、どうだろうか?


「手に入れる方法はいくらでも。イグナシスで開かれる武術の大会で活躍すれば大会の運営から渡されますし、イグナシスの平和に貢献する冒険者として活躍してもコインは冒険者ギルドから渡されます」


「コインの出どころは?」


「赤神を祀る神殿の神官がイグナシスの各組織に配っています」


 あぁ、なるほどね。

 赤神がコインを作って、それを自分の神官に与え、神官は神のためにコインを配る。

 その目的は赤神のお眼鏡に叶う戦士を見つけるためとか、そんな感じか。


「神が直接じゃなく人間を介して配ってるとなると不正がありそうだね」


 赤神は人間の都合を気にしないかもしれないけど、その下につく神官は人間だから人間同士の都合を気にするかもね。例えばイグナシスの有力者にコインを直接、渡していたりとかさ。


「実際、イグナシスにおいて名を馳せる武門の家には直接渡しているようです。もっとも、それぞれの家が出場を願い、そのうえで腕の立つ戦士がいる場合に限りますが」


 なるほどね。

 ズルしてると言いたいところだけど、昨日今日、この街に来たはずのラ゠ギィが知ることができる程度には知られているんだろうし、それを容認してる文化もあるんだろうから、それに関しては俺がとやかく言うことじゃねぇな。


 まぁ、シード枠って考えておこうか。

 その話を聞く限りだと、出場資格の上位の枠は既に埋まっているんだろう。

 赤神の神官から出場するのに困らない量のコインは渡されているだろうから、その量を超えるのは現実的じゃないかな。


「剣神祭はイグナシス以外から武に優れた者を広く募るという趣旨がある以上、多くの武芸者にチャンスが用意されているので、神官が直接、コインを手渡しているのは少ない筈です」


「それに関しては俺も心配はしてないよ。ただ、問題は他の連中は一年をかけてコインを集めてるんだろ?」


 昨日今日、イグナシスに来た俺達とは違って一年分のコインの貯えがある。

 それを一月で追いぬかなきゃいけないんだろ? そりゃあラ゠ギィも俺に助けを求めるわけだ。


「何か策があるんだろ?」


 何のプランも無しに俺に助けを求めはしないだろうと思い、俺はラ゠ギィに訊ねる。

 するとラ゠ギィは「多少は──」と言い、俺に自分の考えを伝えてくる。


「コインの譲渡は禁止されていないので、白神教会の聖騎士を使いコインを集めることを考えています」


 まぁ、それも手だよな。

 でもなぁ、その聖騎士ってナサニルとかだろ?


「確認しておきたいんだけど、コインを獲得する手段って武芸者としての力を示すか、冒険者として活躍するかだろ?」


「それに加えてイグナシスに貢献するかくらいですね」


 おそらくあの聖騎士とかじゃ、いくらも稼げねぇよ。

 俺がフェルムで会ったイグナスとかの七番隊の聖騎士連中だったら、頼りにできる程度には稼げると思うけど、この地にいる六番隊の連中じゃ、弱いし活躍しようにもどうにもならないと思うぜ?

 そんな俺の考えを察したのかラ゠ギィは言う。


「だから、貴方に頼っているのです。聖騎士達では足りない分を貴方がたの協力で補う」


「そして最終的に全員で集まったコインを分け合って剣神祭に出場資格を得ると」


 まぁ、なんとなくは分かったぜ。

 俺らの方は数が足りない。対してラ゠ギィの方は質が足りない。

 互いに補い合って、コインを確保し、それを山分けね。


 話を聞いた限りでこの場でラ゠ギィを始末するメリットは薄い。

 聖騎士達を自由に使えるラ゠ギィの権力は貴重だしな。

 まぁ、必要なコインの枚数を確保したら、その瞬間に俺達が協力する理由は無くなるし、その時点でラ゠ギィ達は裏切るけどさ。


「コインの複製、もしくは配布するコインを保管している神殿を襲撃するのは?」


 無理だと思いながら、俺は可能性を考えラ゠ギィに訊ねる。

 だって、このコインは一応は神が作ってるんだぜ? 

 俺が作ったとしても、そういう不正は防止する仕組みはあると思うね。


「私が聞いた限りでは盗んだコイン、複製したコインは判別がつくそうで、数にカウントはされないそうです」


 それもどこまで適用されるか噂じゃなく自分達で調べる必要はあると思うね。

 例えば、盗んだコインを譲渡した場合は大丈夫なのかとか。そして、どうやって盗んだ物と複製した物を判別してるのかとかさ。


「何か思いつきましたか?」


「まぁ、それなりにね」


 こちとら、10代から反社会的な行為に手を染めて来てるんだぜ? なんとかなるさ。

 ま、なんとかならないにしても幾らでも方法は思いつく。


「とりあえず最初は真面目にやるとするさ」


 真面目に冒険者をやったり、武芸者をやったりだろ?

 それをゼティとかセレシアにもやらせてコインを稼ぐ。

 赤神の神殿がコインを配ってるのなら、大元からくすねるってことも考える。


 赤神に会うためとはいえ、面倒臭いことが多いのはウンザリするね。

 ま、遊びと考えてノンビリとやろうじゃないか。


 ──ただ、最終的に赤神に会うのは俺の方だけどな。

 そのために、いつどうやってラ゠ギィを出し抜くか、それが問題だぜ。





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