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ダンジョン攻略(ゼルティウスルート)

 

 アッシュと別れてゼルティウスは右の通路を進む。

 鞘から抜いた剣を右手に持ってあるくが、その様子は極めて自然体で、気負った様子や警戒心などは欠片も見られない。


 ダンジョンを奥へ進んでいくとゴブリンの一団がゼルティウスの行く手を遮る。

 それを視界に収めた瞬間ゼルティウスは一気に加速し、立ちはだかる魔物へ瞬時に接近すると右手に持つ剣を閃かせ、先頭に立っていたゴブリンの首を刎ねる。


「最初からこの数とは幸先が良い。どうやら、こちらが当たりだったようだ」


 ゴブリンの数自体はアッシュの通路と変わらないのだが、そんなことは知る由も無いゼルティウスは無邪気に喜ぶ。ゼルティウスに先手を取られたゴブリン側も武器を構えてゼルティウスに仕掛けようとするが──


「遅い」


 態勢を整えようとした、二体のゴブリンの腕が斬り飛ばされ、武器を握る手が宙を舞う。

 他のゴブリンはその隙にゼルティウスを取り囲むように動き、その内の一匹が背後からゼルティウスに剣で斬りかかるが、ゼルティウスはその相手を見ることもせずにその剣を弾き飛ばし、返す刀で前方から斬りかかってきた相手を斬り伏せる。

 攻撃直後の隙をついたつもりで二匹のゴブリンが短剣を構えて突撃するが、動こうとした瞬間にゼルティウスには既に捉えられている。剣の間合いのギリギリ、ゼルティウスの持つ剣の切っ先が襲い掛かろうとした片方のゴブリンの喉笛を斬り裂き、もう片方の両目を水平の斬り払っていた。

 ゼルティウスに背後から斬りかかり、剣を弾き飛ばされたゴブリンが剣を拾い上げ、再びゼルティウスに斬りかかるが、ゼルティウスは既に振り向き、敵を捕らえ剣を振るっていた。

 垂直に振り下ろされたゼルティウスの剣がゴブリンを真っ二つに断ち切る。

 残りっている目を潰したゴブリンの首を刎ね、ゼルティウスは通路を奥へと進んでいく。


 この世界に来たときは勇者などと名乗っていたが、本来のゼルティウスは剣士である。

 それもただの剣士ではなく、アスラカーズの使徒として百以上の世界を渡り歩き、それぞれの世界の剣技を修めた達人である。

 純粋な剣の腕前だけであれば、アスラカーズの他の使徒でも及ぶものはなく、主であるアスラカーズすら凌駕する『最強の剣士』がゼルティウスである。もっとも、ゼルティウス自身は最強と呼ばれることを好まない。それは、ゼルティウスが強さなどは剣術の一要素でしかないという哲学を持っているからであり、ゼルティウスは強さだけではない全てを兼ね備える『最高の剣士』と呼ばれることを望んでいる。

 とはいえ、その剣士としての実力と、ありとあらゆる世界を旅し、学ぶこともあれば、盗むこともあり、そして編み出すこともあった剣術は本物である。


 通路を進むと、ゼルティウスは三体の巨人が待ち受ける部屋に辿り着く。

 その敵の構成もアッシュと同じだが、ゼルティウスは知る由も無い。


 侵入者を発見した巨人たちは棍棒を振り上げ、ゼルティウスに襲い掛かり、それに対してゼルティウスは一歩も引かず、逆に剣を構えて前に踏み出す。

 先頭を切って飛び出した巨人が無謀にも近づいてくる小さな人間を見据え、それに対して巨大な棍棒を躊躇いも無く振り下ろした。普段通りならば、それで終わりだ。しかし、今回は――


「軽い」


 ゼルティウスは真正面から自分の身の丈の数倍はある棍棒を受け止め、弾いていた。

 何が起きたのか分からない巨人は再び、棍棒を振り下ろしてゼルティウスを叩き潰そうとする。しかし、ゼルティウスの剣はまたしても巨人の棍棒を弾いて防いだ。

 受け流すのではなく、受け止め防ぎながら、その衝撃を相手に返す。そうしてゼルティウスは巨人の攻撃を防いでいる。

 他の二体の巨人が加勢し、三体の巨人が同時に巨大な棍棒をゼルティウスに叩きつけるが、それでもゼルティウスの防御は揺るがない。


 数回、十数回と数を重ね、三本の棍棒が滅茶苦茶に振り回される。城壁すら崩す勢いで叩き込まれるそれをゼルティウスは涼しい顔で防いでいる。たった一本の剣が城壁よりも堅く分厚く、巨人たちの攻撃を阻む。

 そのうち、段々と攻撃している巨人の側に余裕がなくなっていく、ゼルティウスを取り囲んで攻撃していたはずが、振り回した棍棒を防がれ弾かれる度に体勢が崩れ、少しずつ一方向に動かされていき、巨人たちが気づいたころには、取り囲んでいた状況は崩れて、ゼルティウスの正面に三体の巨人が並んでゼルティウスに攻撃を仕掛けていた。

 正面から三体の巨人の棍棒が続けざまに迫りくるがゼルティウスは一歩も引かず、それどころか前に踏み出していく。

 連続して叩きつけられる棍棒を弾きながら前進するゼルティウスの圧力に巨人たちは攻撃をしながらも、無意識に後ずさる。そうして、ついには巨人たちの背中が部屋の壁につく。

 その瞬間、ゼルティウスの剣が閃き、斬撃の軌跡を描いた気の刃が飛翔して、巨人たちを斬り裂いた。


「聞こえているんだろう? この通り俺の方が倒しやすいから、俺の方に魔物を送り込んで来い」


 巨人を倒したゼルティウスはこの状況を見ているであろう、このダンジョンの主に呼びかける。

 ゼルティウスが知る限り、大抵のダンジョンは、中の様子はダンジョンマスターの監視下にあるので、今の状況も見ていただろうし、声も聞こえているはずだとゼルティウスはダンジョンマスターに呼びかけたのだった。

 魔物を送り込んで来いと言ったのはアスラカーズとの勝負に勝つため。勝負することに特に意味はないが、勝ち負けは大事なので、魔物を倒して多くの点を得ようとゼルティウスは考えた。


 アスラカーズの方も同じことをやっているだろうとゼルティウスは予測するが、今の戦いを見れば自分の方に送り込んでいるだろうという確信があるし、自分とアスラカーズを比べれば自分の方が与しやすいというのも明らかだという事実がある。

 アスラカーズの方は普通に戦ってもどうにもならない相手だが、自分の方は普通に戦っても倒せるのだから、自分の方を選ばない理由はないとゼルティウスは思う。


 しかしながら、そんなゼルティウスの思いは叶わず、ゼルティウスの前に現れる敵は数も質もたいしたことが無かった。もっとも、それはゼルティウスの認識であり、ゼルティウスに魔物を差し向けている方はそうでもないのだが。

 弱体化し、アスラカーズにかけられた弱体化の呪いもあるとはいえ、それでも数十匹程度の魔物で足止めができると思われるとは随分と甘く見られているなと思いながら、ゼルティウスはダンジョンを奥へと進んでいく。


 そうして進んだ先、とある大広間でゼルティウスは思いもがけず目的の人物たちと出会うことになる。


「え、ゼルティウスさん!?」


 それは探していたカイルたち。しかし、カイルたちは戦闘の真っ最中であり、リヴィングアーマーに囲まれ、苦戦を強いられている様子だった。


「少し待っていろ」


 ゼルティウスは速やかに敵を始末することを決め、剣を手に駆け出す。


「待て! そいつらの鎧はミスリル製──」


 それがどうしたとゼルティウスが剣を振ると、この世界において武具に用いた際、鉄や鋼よりも優れるとされるミスリルが容易く斬り裂かれる。

 ゼルティウスの剣は決して名剣ではない。この世界に来てからゼルティウスが買ったナマクラだ。しかし、ゼルティウスの技は得物を選ばない。

 木の枝で鋼を斬り裂くこともできるゼルティウスならば、鉄の剣であればミスリルを斬ることも容易い。


 一瞬でカイルたちを取り囲んでいた魔物を斬り捨て、ゼルティウスはカイルたちに向き直ると、警戒されないように笑みを浮かべて、言うのだった。


「ちょっとツラを貸してくれないか? 手間は取らせないから」




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