倒すべき敵は
短め
ソーサリアの遥か北東の草原、地平線まで続く緑の大地を一人歩む人影があった。
その人影こそアスラカーズの使徒にして魔族の召喚した勇者であるガイ・ブラックウッド。
自分から逃げるように進軍を開始した魔族達を追うガイは一人の旅路を歩みながら、過去に思いを馳せる。
それは使徒になる前の記憶。守ろうとした人類が滅び去った直後。
その時もガイは一人で歩いていた。ただ、歩く場所は廃墟となったビルが立ち並ぶ都市。そこは過去に東京と呼ばれた場所だった。
人類最後の拠点であるエデンを守るという目的で集ったガイの仲間達は人類が滅んだことで共通の目的を見失いそれぞれが別の道を歩むことになった。
しかし、そうして別れた仲間達もすぐに『異邦人』達に襲われ命を落とし、今となってはガイしか生き残ってはいない。
仲間も失い天涯孤独の身となったガイは廃墟となった東京の街中を彷徨い歩いていた。
東京は『異邦人』達に最初に攻撃された都市の一つであったが、その際の『異邦人』側のミスによって、『異邦人』達にも立ち入ることが不可能なほど強い瘴気に覆われた土地となったが、ガイはその瘴気ですら物ともしない。
ガイは自分以外の誰も立ち入ることのできない東京の中で一人、廃墟の中にある物を漁って時間を潰して過ごした。
ガイが探すのは漫画やアニメやゲーム。教育制度や文化、文明が崩壊した世界においてガイの教科書はそういった娯楽作品だった。
地球の人類の文明と文化を受け継ぐ唯一の生き残りであるガイは、自分以外の誰も踏み込めず、誰も存在できない東京の廃墟の中で、人類の文明と文化の遺産で暇を潰す。
そして、それに飽きたら、東京の外にいる『異邦人』を狩るという日々を過ごしていた。
そうやってガイが過ごすようになった頃、『異邦人』は既に地球を完全に支配していた。
『異邦人』達は地球に自分達のコミュニティを築き、社会体制を確立させていた。もはや地球は人間の物ではなく『異邦人』のものであり、『異邦人』達は彼らなりに平和な社会を築いていた。
そんな世界では誰も踏み入ることのできない魔境から現れ、人々を襲うガイは『異邦人』にとって怪物以外の何物でもなく、既に『異邦人』の物となった地球おいて、ガイこそが侵略者であり『異邦人』だった。
誰も味方は無く、敵だけの今の状況は地球にいた頃に似ているとガイは自分の立つ草原を見て思う。
この草原全てを自分の敵の屍で埋めたならどれだけ気分が良いだろうか?
地球にいた全ての『異邦人』──1000万匹を殺し切った時の気分。
『異邦人』の世界に乗り込み、その世界の全て──30億匹を殺し切った時の気分。
流石にその時には及ばないだろうが、その時と近い気分になれるだろうとガイは考え、そして──
「──どう思う?」
ガイは目の前に並ぶ魔族の軍勢に向かって訊ねた。
しかし、返事はなくガイに帰ってくるのは溢れる殺意と憎しみに満ちた眼差しだけだ。
「こういうの雁首揃えてって言うんだっけ? 大勢でどうしたの?」
先頭に立ってガイに殺気を向ける魔族は魔族の軍を率いる将の一人だった。
二足歩行の竜──竜人という種族の貴族だったなと、ガイは見覚えのある顔の相手に訊ねるが、やはり答えは返ってこない。なので、ガイは一人で喋るだけだった。
「オレはさっさと進軍しろって言ったのに、こんな所で何をしてるんだろうか? まさかオレを待ってたとか?」
「その通りだ!」
魔族の将が答えると、その背後の軍勢が同意するように雄たけびを上げる。
「貴様を生かしておけば魔族は滅ぶ! 我々は貴様を倒し、魔族を救う!」
「まぁ、そんなところだと思ったよ」
ガイはこの場にいる魔族の軍勢を見る。
「でも、その程度の数でオレを殺すって?」
数は1000といった所だろう。手練れも多く、士気も高い。
しかしながら、ガイはそれを見ても何の警戒心も抱かない。
「オレの昼飯になりに来たとしか思えないよ」
戦いにすらならないという当たり前のことをガイは口にしたのだが、魔族達はそれを挑発と思い更に士気を高め、そして──
「魔族の未来のため、死んでもらう!」
魔族の将は武器を構え、だが──その瞬間に死んだ。
瞬きよりも速く、動いたガイの拳がその胸を貫き、遅れてその衝撃で肉体が弾け飛ぶ。
「死んだのはお前の方だったな」
状況を理解した残り1000の魔族が雄たけびを上げ、一斉にガイに向かって襲い掛かる。
「そして、これから死ぬのもお前らだ──」
一人に対して1000の魔族が突撃する。
しかし、ガイは動じることも無く、向かってくる魔族に向かってゆっくりと歩いて近づいていく。
そして、激突する一人と一軍。普通に考えれば一方的に蹂躙されるだけ。だが、それはガイには当てはまらなかった。
1000の魔族の突撃。
その先頭に立つのは馬の下半身に人の胴体を持つ人馬族。
人馬一体の生まれついての騎兵である魔族達が槍を構えて突進する。だが、ガイはそれを避ける様子も無くそのまま騎兵の突撃を受け止めた。
普通に考えればガイが吹き飛ぶ。しかし、結果はその逆。ガイに突撃した人馬族は逆に自分から岩に激突したように弾かれて倒れた。
ガイが何をしたわけでもない。ただ単にガイの方が硬く、そして騎兵の一団の突撃よりを受けても、それに揺るがないほどの力があったというだけだ。
先陣を切った人馬族だったがガイを押し切ることもできず、ガイに激突して玉突き事故を起こしたように倒れた先頭を踏みつぶさないよう、自ら勢いを弱める。
すると、その後続を走っていた巨体を持つ鬼の魔族がガイの周囲を取り囲むように移動し、他の魔族と包囲を形成しながら、巨大な棍棒を振りかぶり、ガイに向かって一斉に襲い掛かった。
ガイはそれを見て鼻で笑う。
話にならないと、そんなもので自分に傷を負わせられるわけがないと。
「戦いになると思ってる時点で間違ってる」
呆れたように呟くガイの言葉は魔族達には届かない。
これは戦いではなく虐殺以外の何物でもない。
「それを教えてやるよ」
そしてガイの殺戮が始まった──
休んだら、それきり続きを書けなくなりそうだから、無理して書いている。
気力と体力が弱っているので色々と整理がついてないこともあるけれど、ここで余計なことをすると間違いなくエタるから、とにかく書き続けるしかない。




