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ダンジョン攻略(アッシュルート)

部分別アクセス解析を見ると新規読者がヤバいことになっているようなので、少しのあいだ予約投稿は避けてみようかなと


 

「どうした、かかって来いよ!」


 ゼティと別れて、ダンジョンの中を一人で歩いていると魔物が襲い掛かってくる。

 これが自然な生態系を形成する真っ当な生き物なら俺も手加減はするんだが、実際はダンジョンマスターの力で生み出された生き物の形をした別の存在なので、俺は手加減なんかしない。見た目はともかく感覚としては物をぶっ壊してるのと変わらないからな。

 ついで、今はゼティとの勝負中なわけで、戦いの相手はゼティだから、手加減をする必要がないし、そもそもできない。


 最初に襲い掛かって来たのは金属の鎧で武装したゴブリンたちが数匹。

 数が多かったから俺のテンションが上がって、同時に業術カルマ・マギアの熱量も上昇してしまったんだわ。

 俺は一瞬で石畳が真っ赤になるような熱を身に帯びているから、熱さのせいで中々近寄れないみたいなんで俺の方から近づくことにする。


 一気に距離を詰めて、闘気を纏った拳で殴ると、金属の鎧とか関係なく、ゴブリンの上半身が弾け飛ぶ。もっとも、俺が放つ熱のせいで血は一瞬で蒸発するし、肉も火が通るんで、そんなにスプラッタな絵面にはならない。


 味方が殺されたことで、ゴブリンが剣で斬りかかってくるが、それを俺は素手で受け流して足を払う。

 それだけでゴブリンの足が千切れ飛び、ダンジョンの床に転がる。俺の熱が伝導して、この場の床は今は熱したフライパンの上みたいなもんだから、転がるとそれだけで焼きあがってしまう。

 転がったゴブリンは絶叫をあげ、床をのたうち回るが、それも少しの間で、ほどなくして焦げた臭いをさせるだけで静かになった。


「ほらほら、かかって来いよ!」


 挑発するとゴブリンの内の一匹が飛びかかってきた。

 俺は足を跳ね上げて、そいつを蹴り飛ばすとゴブリンの体が腹の真ん中でへし折れる。

 仲間が一瞬でやられても、ゴブリンどもに臆する気配はない。


「自我が無いのは面白くないけど、戦う相手としてはまぁ悪くねぇよな。ぶっ殺す時に可哀想だとか思わねぇからよ」


 俺は拳を少しだけ前に出したまま一気に距離を詰め、突き出したままの拳をそのままゴブリンの胸元に突き入れる。

 一瞬で間合いを詰めてきた俺に対して他のゴブリンが慌てて手に持った武器を振る。

 それに対して、俺は背丈の低いゴブリンよりも更に低く腰を下ろし、潜り込むように武器を躱して懐に飛び込み、突き上げるように掌底を放ち、その一発で首がへし折れてゴブリンがもう一匹倒れる。


「よっと」


 背後から短剣みたいな剣でゴブリンが刺突を放つが、それも気配を感じ取れている。

 俺は、その突きを躱しながら、ゴブリンの短剣を持つ腕を掴み、俺の方に引き寄せて体勢を崩しながら関節を極めて腕をへし折り、続けて足を払って膝をつかせ、投げ飛ばす。顔面から叩き落すと熱せられたダンジョンの床の上で肉が焼ける音がする。


「まだまだ頑張れる奴はいるだろ?」


 二匹のゴブリンが同時に剣を持って俺に斬りかかる。

 二方向から襲い掛かる刃を俺は左右の手それぞれで受け流す。手首を回すようにして剣の刃を巻き取るように受け流すと、その力が剣を持つ者にも届き、二匹のゴブリンは回転して床に叩きつけられる。


「残りは一匹か?」


 周囲を見回すまでもなく気配で、どこにいるか分かるので、俺は振り向きざまに手を跳ね上げると、背後から斬りかかろうとしていたゴブリンの剣に当たり、その剣が弾き飛ばされる。

 武器を失ったため、即座に掴みかかろうと伸ばしてきた手を俺が叩き落とすと最後のゴブリンは呻き声を上げる。そりゃそうだ、業術で俺は熱くなってるんだから、触れた瞬間に火傷する。

 俺は最後のゴブリンの顔面を掴む。熱いからもがくが、それも一瞬だ。俺が握っていた部分はすぐに炭化してゴブリンは息絶える。


 ゴブリンを皆殺しにした通路を少し歩くと、広い部屋に出た。

 そこには数匹の巨人がいて、俺を見つけるなり巨大な棍棒を振り上げて襲い掛かって来た。


「力技で来る奴は好きだぜ」


 巨人もそうだけど、このダンジョンの主もな。楽しくなってきたから熱くなっちまうねぇ。

 振り下ろされた棍棒を躱すと、それを叩きつけられたダンジョンの床に棍棒がめり込む。棍棒を引き抜こうとする巨人の手に触れると、俺の業術で巨人の手が一瞬で燃え上がる。

 俺は絶叫し、膝をつく巨人の体を駆けのぼり、その延髄に蹴りを叩き込むと、巨人の首が俺の熱で燃え上がり、次に融解して千切れ飛ぶ。生き物も熱けりゃける。


「楽しくなってきたなぁ、おい!」


 弱い物いじめみたくなりそうだが、そういうのもたまには良いよな。

 でもまぁ、俺の相手はこいつ等じゃなくてゼティなわけだから、そもそも眼中にないわけで――


「おっと」


 仲間が無残にやられたのを気にも留めずに別の巨人が襲い掛かって来た。

 俺は転がっていた床の破片を拾い上げる。すると、段々と元は石畳であった床の破片が融けだして溶岩のようになる。

 俺は零れ落ちずに手のひらに残った融解した床の破片を巨人に目掛けて投げつける。溶岩を投げつけられているようなもんだから、当たれば怯まないわけはなく、俺が投げた物が当たると巨人は急停止する。

 その隙に俺は距離を詰めて、脚を蹴り飛ばすと蹴った部分が燃え上がるより先に熱で融解し、巨人はその場に転ぶ。俺はすぐさま胴体に上り巨人の胸元に拳を突き立てる。

 その瞬間、最後に残った巨人が俺に向けて棍棒を振り下ろすが、俺に届くより先に燃え尽きる。


「まだまだ熱くなるぜ?」


 隙を突いたつもりで攻撃してきたのは良いよな。

 ダンジョンの魔物はNPCみたいなもんだから、好きになるのは難しいが嫌いじゃないぜ? 

 なにせ戦意が衰えないからなぁ!


 俺は跳躍し、最後の巨人の頭に飛びつくと拳を握りしめて叩き込む。

 闘気を纏った純粋な拳の威力と、業術の熱で巨人の頭が融解しながら吹き飛んだ。


「次だ、次!」


 このダンジョンの主が俺の戦いの様子を見ているだろうから、おかわりを要求しておく。

 どんどん出してきて構わないよ、ゼティの方よりも多く出してきてもらわないと負けちまうしな。


 そうして先に進むと、俺の要求は受け入れて貰えたようで新たな魔物が現れる。

 それは俺の熱への対策なのか、炎を身に纏った大型の狼のような魔物で、それが何頭もいる。とりあえず名前は炎狼ということにしておこう。

 きっと、こいつを投入したのはダンジョンマスターにとって会心の策なんだろうね。俺の攻撃への耐性があるとか、そう考えたんだろうけど――


「俺の強さの基礎ベースは格闘なんだよなぁ!」


 飛び掛かって来た炎狼の首を掴んで地面に叩きつける。

 すぐさま別の一頭が地を駆け、俺の足に食らいつこうとしてきたので蹴り飛ばす。

 次の瞬間、別の一頭が腕に飛び掛かり噛みつこうとしてきたので、掌底を入れて叩き落す。その直後に俺がその場にしゃがみ込むと、背後から襲い掛かって来た炎狼が、一瞬前まで俺の頭があった場所を通り過ぎようとしたので、それを捕まえ、ダンジョンの壁に投げつけた。

 様子を窺っていた二頭が一斉に襲い掛かって来たので、俺もその動きに合わせて前に出る。

 一匹の突進を受け流して真上に跳ね上げ、落ちてきた所を、襲ってきたもう一匹の尻尾を掴んで振り回し、そいつでぶん殴った。


「そっちが熱に耐性があるように俺も炎に耐性があるんだよなぁ」


 殴りやすい相手で助かったよ。さぁ、次を出してくれ。

 段々と体も暖まってきたし、もう少し熱くなれるぜ?


 俺が地面に足をつくと、ダンジョンの床が熱で融けだす。

 ちょっと熱くなり過ぎか? いいや、まだまだ! もっと倒せねぇとゼティに負けちまうぜ!


「おかわり頂戴! おかわり!」


 俺の声が聞こえたのか、ダンジョンマスターが次の相手を用意してくれる。

 次の相手は通路の奥で弓を構えたゴブリンども。ついでに魔法が使える奴がいるのか魔力の流れを感じるね。しかし、ゴブリンが多いなぁ。

 使い勝手が良いのは分かるけど、結局の所、人間の兵士とやれることはさほど変わらないんだから面白はねぇよな。


「撃テェ!」


 おぉ、言葉が聞こえたってのはちょっと上級か?

 面白みがないなんて思って悪かったな。きっと何かやってくれるんだろう、俄然面白くなってきたぜ!

 俺の気持ちが昂るのに合わせて業術の熱も上昇し、ゴブリンの弓兵が放った矢は俺に近づいた瞬間に燃え上がり、融け落ちる。


 気分が上がり過ぎか? でも、良いよな?

 身に纏った闘気や魔力の熱が空気に伝わり、通路の気温が一気に上昇する。

 俺が通った後の床や壁が俺の熱で融け落ち、溶岩のようになる。

 俺の足元は少し前から、既に真っ赤に融けてドロドロだから言うことは無いかな? そんなに熱を出していて靴とか融けないかと思うかもしれないけど、闘気とか身に纏うってのは靴も含めてだから、俺の闘気に覆われた靴は熱の影響を受けないんで問題ないし、服も同じだ。


 でもまぁ、問題無いのは俺だけで、俺の周囲にいる奴は大変なことになったりする。

 直接触れてない通路の両脇の壁が融けるくらいの温度なんだから、生き物は少し近づいただけで俺の熱量でやられる。

 まず熱放射で火傷するし、目を閉じる判断が遅れると、俺が近づいただけで目玉が焼ける。ついでに、熱対流で熱い空気が流れ、それを吸った奴は触れただけで火傷するような空気を体に吸い込むことになるから、ただじゃ済まない。

 今の状態だと俺が近づくだけで、だいたいの奴が死ぬ。ちょっと上級の奴も魔力の流れを感じた奴も何も出来ず、俺の業術によって間接的に発生した高熱の空気に焼かれて死にやがった。

 期待外れだなぁ、と思っていると少しだけ熱が下がる。でもまぁ、それでも俺が近づくと死体は発火し、通り過ぎると融け落ちて、後には何も残らなくなる。


「だからさぁ、闘気とか魔力の使い方が達者な奴を寄越せって! 俺のこれは純粋な熱とは性質が違うから闘気や魔力で防げる。俺の話が信用できないにしても、闘気や魔力で体を覆える奴なら熱から身を守ることが出来るんだから、そいつを戦わせるべきだって分かんねぇかなぁ!」


 あんまりにも不甲斐ない俺への対応にちょっと怒りを込めて、ダンジョンマスターに呼びかける。

 きっと監視してるだろうか、俺のことは届くはずだ。

 用心深い奴なら、俺が嘘をついていると思うのかもしれないが、この状況でそんなことを考えているなら、そいつはタダの馬鹿だ。

 今の俺のどこに嘘を吐く必要がある? こんなに楽勝なのに嘘をついてまで自分に有利な状況にするか? 

 むしろ、そっちにハンデを与えたいんだよ、俺はさぁ!


 しかし、俺のそんな思いも空しく、通路を抜けた先にいたのは動く鎧リヴィングアーマーのような魔物。首が無く、中身は無いが鎧だけで勝手に動き、生きている奴に襲い掛かるアレだ。

 それを見た瞬間、俺はちょっとイラっとして感情が高ぶる。


「だからさぁ!」


 生きているから熱で怯むとか、そんな発想?

 もう、そんなレベルじゃねぇんだって、こんなにテンションが上がってきた俺はさぁ!

 俺はリヴィングアーマーに対して踏み込みで瞬時に距離を詰め、その体を撫でる。それだけで鎧は融け落ちて一瞬で俺の前に立つ敵はいなくなり、融けた金属が床の上に広がるだけになる。


「もう期待しない方が良いか?」


 リヴィングアーマーを倒して以降、俺の前に敵が出てこなくなった。

 こうなると、ゼティとの勝負に勝てるかも怪しいな。

 不思議なことにゼティと俺だと、俺の方が倒せない相手に見えるらしいから、今のような二手に分かれている状況になると、敵は倒しやすそうなゼティの方に戦力を集中させたがるんだけど、そっちの方がキツイと思うんだよなぁ。ゼティの強さはシンプルだけど、そのぶん対抗策が無いからな。


「これは負けたかなぁ」


 俺は少しテンションが落ちてきて、しょぼくれた気分で通路を歩いている。

 やはり誰も襲ってこないので、寂しい気持ちでダンジョンの奥へドンドンと進んでいくと、ほどなくして巨大な扉の前に辿り着いた。


 見上げるほど大きな扉はボス部屋の雰囲気を漂わせているが、中はどうなっているだろうか?

 マシな敵だと良いなぁと思いながら、十数メートルくらいの高さの扉を開けると、そこにいたのは――


「愚かな人間よ、よくぞ参った」


 尊大な口調で俺を出迎えたのは、金色の鱗に巨大な翼を持った――


「ドラゴンだーー!」


 おいおい、ちょっと強そうだぞ! どうする、どうする!?

 耐熱はデフォルトで持ってるだろうし、全身からとんでもない量の魔力と闘気を感じるぜ! それに知性もあるようだし、こいつは良いなぁ。強い気配がビンビンだ!

 期待しない方が良いかなんて思ってゴメンね、ダンジョンマスター君! こんな強そうな奴がいるなら、それ以外の魔物とか、おまけみたいなもんだし、雑魚くても仕方ないよね!

 エルディエルより強そうだし、ボスとしては申し分無い! 


「よっしゃぁ、そんじゃあり合おうか!」


 さぁ、ボス戦開始だぜ!





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