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アスラ式術式適正テスト

腰を痛めて何一つ集中できない

 

 セレシアに業術カルマ・マギア瑜伽法ユーガ・アルスの習得の提案してみたわけだが、その反応はというと──


「良く分からん術を身につけるつもりはない」


 なんともまぁ、つれない返事だった。

 習得しとけば絶対に役立つんだけどね。つーか、上位の使徒連中と喧嘩になった際は業術は『駆動』より上、瑜伽法は『究竟アルス・マグナ』は習得しとかないと勝負にならねぇんだよな。


「ガイと戦う時には多少は使えないと厳しいぜ?」


 俺がそう言うとセレシアはそばに立っていたゼティを見る。

 ゼティは俺の言葉に同意するように頷き、その手続きを経てようやくセレシアは納得する。

 どうやら、俺の言葉の信用はされていないようだ。まぁ、どうでもいいけどさ。


「マー君と戦ってた時にマー君が使ってた、あれが業術だ。覚えりゃ役に立つって分かるだろ?」


 自分に勝った相手が使ってた術なら興味があるだろ?

 俺はそっちの方向からセレシアに興味を持たせることにした。


「そう言われると、確かに気にはなる」


 よっしゃ、食いついてきやがった。

 このまま教え込んじまおう。


「とはいえ、私は魔術系統はそこまで得意ではないから習得は難しいのではないのか? 使えなくはないが、あまり複雑なのは覚えられないような気がするが──」


「そこら辺は大丈夫だと思うぜ。俺は教えるのが上手いからね」


 俺が自信満々に言うとセレシアは疑わし気な眼差しで俺を見て、続けてゼティを見る。

 ゼティはセレシアの視線に対し──


「残念ながら嘘じゃない。業術と瑜伽法の両方を教えられるのはコイツだけだ」


 片方だけだったら、俺より教えるのが上手い奴は使徒の中にもいるぜ?

 でも、両方を上手く教えられるのは俺だけなのさ。


「ゼティ殿も使えるのだろう?」


 セレシアは俺に遠慮してるんだろうか、ゼティに教えてもらいたそうにしている。

 まぁ、単純に俺が嫌なだけだろうけどさ。


「俺が使えるのは瑜伽法だけだ。そちらを教えることもできなくはないが──」


 そこでゼティが言葉を区切り、俺を見てきたので、俺が言葉の続きを受け持つ。


「現状、キミにどっちの適性があるかは分からないから、どちらも教えられる俺の方が適任なのさ」


「どちらか片方しか習得できないのか?」


 業術か瑜伽法のどちらか片方しか習得できないってことは無いよ。

 俺はどっちも使えるしね。ただまぁ──


「向き不向きってのがあるからね。向いてない方を習得しようとしたら、かなり時間がかかるんだよ」


 だから、どっちに適性があっても教えられる俺の方が良い。

 つーか、そもそもゼティは瑜伽法を使うのは上手でも、教えるのは得意じゃないしね。

 ゼティの瑜伽法は自分の得意分野に偏り過ぎてて、ゼティから教わるとセレシアの瑜伽法もゼティみたいに偏る可能性があるから、指導役としてゼティは微妙なのよ。

 それを分かってるから、ゼティ自身も指導役はやりたがらないんだよね。


「む、それなら仕方ないのか? 良く分からんが、とりあえず、よろしく頼む」


 セレシアが俺に頭を下げる。

 別に頭を下げることじゃないんだけどね。

 使徒になったら、そのうちに誰かから必ず教わることだし、教えるのが義務みたいなもんだからな。

 俺が教えなくても、アダムあたりが教えてくれたと思うし、セレシアの性格だと他の使徒も教えてくれるだろうしね。


「それじゃあ、教えてやろうか──と、その前に業術と瑜伽法について教えないといけないな」


 最初はそこから教えていかないとね。

 セレシアは何も言わずに聞く構えを取っている。天幕の中の地面に腰を下ろし、真面目な生徒の態度を取っているわけだし、それなら俺も真面目な教師をやろうかね。


「まず基本的な事柄として、業術も瑜伽法もその効果を説明するとしたら、『自分に都合の良い世界を創る』という、それに尽きる」


 色々な効果はあるけど、業術は最終的には『自分に都合の良い世界を創る』という、そこに行きつく。

 俺の業術の『展開』なんかが分かりやすいかな?

『俺以外の奴が強くなる』ってのは俺の理想の世界を体現してるとも言えるよね。

 手加減の必要のない強い敵と戦えるってのは俺にとって最高の世界なわけだしさ。

 自分に都合の良い世界が『自分に不利な世界』ってのは、おかしいかもしれないけど、俺はそういうものを求めてる奴だから仕方ない。


「まぁ、『最終的には』の話で、実際には『自分に都合の良い世界』の一部要素を、発現させる程度にとどまるんだけどね」


 俺の業術の『駆動』なんかは感情の昂ぶりに合わせて内力が無限に上昇するって効果を持つけど、それは『想いが力になるという』というルールが適用されるのが俺にとって都合の良い世界だから、その要素をが現れてるんだよね。


「業術も瑜伽法もどちらも同じような効果を持つといったが、それならどちらを習得しても大差がないのか?」


 俺の表面的な説明を聞いてセレシアはちょっと誤解をしてしまったようだ。

 この誤解は解いておいた方が良いね。


「いや、二つの術式は結構違うんだよね。それはまぁ、世界に対するアプローチの違いのような物かな」


 俺の説明にセレシアは首を傾げる。

 業術と瑜伽法はどっちも『自分に都合の良い世界』を創る術だけど、その創り方が違うのさ。


「簡単に言えば業術は既存の世界を侵食し、自分にとって都合よく塗りつぶす。対して瑜伽法は世界と自分の繋がりを切り離し、自分にとって都合の良い世界を新しく組み立てるって感じだ」


 俺の説明を聞いてセレシアは再び首を傾げる。

 まぁ、感覚的なもんだから理解は難しいよな。


「威力や能力の傾向なんかも違っていたりして、例えば──」


 そうして俺は業術と瑜伽法を比較する説明を始める。

 業術の能力は使用者の性格や衝動や欲求に強く影響されるせいで、能力を細かく決めることが難しい。

 多少の調整は効くが業術に目覚めた時点で能力の方向性は決まってるが、その代わり、自らの衝動に則った何でもありの無茶苦茶な能力になりやすい。

 対して、瑜伽法は使用者の興味、関心、理想、そして得意なことなどに影響されるので修行次第で身に着ける能力を選べる。その分、瑜伽法は業術よりも常識的で小さくまとまった能力になったりする。

 そういう事情から、業術は感情的なのに対し、瑜伽法は理性的とも言ったりするんだよね。


「どちらが強いんだ」


「どっちが強いとかはねぇよ。業術は習得する術に関しては固定されてるから応用が利かない。対して、瑜伽法は術をドンドン増やしていけるから応用が効くが、単純性能だと業術に及ばない」


 ゼティの剣を創り出す瑜伽法なんかは俺の業術に比べるとショボい印象があるけど、応用性が高いしな。

 それとゼティは今後、剣を創り出す以外の瑜伽法を習得することができるけど、俺の方は業術を増やすことができない。

 俺は一応、二つ目の業術を持ってるけど、それは例外中の例外だしね。


「技の覚え方も業術と瑜伽法は結構違ってて──」


 業術は第一段階の『顕現』で既に固有の能力を発現する。自分の内なる力をぶちまけ、己の衝動や欲求を形や純粋な力として世界に示す。

 そして『駆動』で基本的には自分の肉体を介して『自分にとって都合の良い世界』の持つ特性を発現する。

 そこから『展開』で一定領域内を自分にとって都合の良い世界に作り替える。

 そんでもって、最後に『終束』させる。


 それに対して瑜伽法は基本の術を習得し、それを組み合わせ『究竟アルス・マグナ』という自分だけの奥義を作り上げる。

究竟アルス・マグナ』の習得が最重要であるから『究竟アルス・マグナ』のことを瑜伽法って言うこともあったりして結構ゴチャゴチャしてるね。

 瑜伽法の基本の術は『根』『城』『宝』『威』『国』『令』で、これを組み合わせる。

 ゼティの『究竟アルス・マグナ』は『宝』と『威』の組み合わせで、俺が使う『修羅闘獄陣』は基本は『国』と『令』の組み合わせだったりするみたいな感じで、それぞれの基本の術についてはセレシアが瑜伽法に適性があったら教えることにしよう。


「わかったかい?」


「全然」


 だよね。

 でも、分かるまで説明するつもりはないんで、悪しからず。


「とりあえず使えるようになれば何となくわかるさ」


 俺は教えるのの専門家じゃないもんでね。

 業術を良く知りたいなら業術の上手い奴、瑜伽法は瑜伽法の上手い奴に教わればいいんだ。

 俺はとりあえずセレシアがどっちかを使えるようにしたいだけだから、術の細かい説明なんかいらねぇだろ。


「それで結局、私はどちらを習得するべきなんだ?」


「どちらを習得するかは選べねぇよ。とりあえずは向き不向きを調べて、向いている方を習得するんだよ」


 向いてない方は習得するの大変だからね。

 向いている方を最初に習得し、それから時間をかけて向いてない方を……つっても、ゼティみたいに一向に習得できない奴もいるけどさ。


「どうやって向き不向きを調べるんだ?」


「そんな大層なことはしねぇよ。俺がキミに質問し、キミの答えから俺が業術と瑜伽法のどっちが得意か判定する」


「そんなことで分かるのか?」


 まぁ、本来はもっとちゃんとした調べ方もあるんだけどね。

 でも、そんなのやってる時間はねぇからさ。


「アスラ式術式適正テストって言って、使徒界隈じゃメジャーな方法だぜ」


 俺の言葉を信じられないのかセレシアはゼティを見る。


「嘘はついていない。信じられないかもしれないが、的中率は8割を超えている」


 ほらな、ゼティもそう言っている。

 もっと、俺を信用してもらいたいもんだ。


「それじゃ、信じて貰えたところで、早速質問をしていこうかね。『はい』、『いいえ』、『どちらとも言えない』で答えてくれよ? それじゃ第一問は──」


(1)自分は社交的な人間だと思う。 「はい」


(2)誰かと過ごすより一人で過ごす方が好きだ。 「どちらともいえない」


(3)集団の中でリーダーシップを取る方だ。 「どちらともいえない」


(4)自分は感情的な人間だと思う。 「はい」


(5)やむを得ない事情がある場合はルールを破っても良い。 「いいえ」


(6)間違った行為は正さないと気が済まない。 「いいえ」


(7)成功のカギは入念な準備より突然の閃きだと思う。「いいえ」


(8)独創性は何よりも重要だ。 「いいえ」


(9)指示するよりも指示されることが多い。 「はい」


(10)ルールを守ることは何よりも重要だ。 「どちらともいえない」


「……ふーむ、まぁ、こんなところかな」


 俺は10問目で質問を終えることにした。

 本来は50問くらい質問を出すんだけど、時間もねぇし、なんとなくわかったから、ここまでにしておこう。全部やらなくても、どちらに適性があるかはある程度分かるしな。


「俺が思うにキミの適性は──」


 そうして俺はセレシアに結果を伝える。

 業術と瑜伽法、セレシアにどちらの適性があるかは──


「瑜伽法だろうな」


 とりあえずは分かったことだし、これからは瑜伽法の習得に向かって頑張ろうか。

 ガイとも多少は戦えるようにするのは難しいかもしれねぇけど、やれるだけのことはやらねぇとな。





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