表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/379

ダンジョン侵入

 

 ベーメン村へ向けて旅をしている途中、ダンジョンとはなんぞやとリィナちゃんに聞いたところ迷宮だって教えてもらった。

 では、迷宮とは? リィナちゃんに聞いたところダンジョンと教えてもらった。

 なるほどなぁ、ダンジョンってのは迷宮で、迷宮ってのはダンジョンなんだね。ははは、答えになってないぞ。


 ちなみに地球ではダンジョンってのは本来は地下牢を意味するぞ。

 地下牢があるような場所は建物の構造上、造りが頑丈だったから、城が軍事拠点としての意味合いが強い時代は兵士が最後に立て籠もる場所でもあったけれど、城が権力の象徴となってからは、罪人を閉じ込めるためのものになったとか。

 何で地下牢ダンジョン迷宮ダンジョンになったかというと、城の地下は迷路になっていて、そこには財宝や怪物が住んでいるっていう、人々の噂話の影響が大きいようで、時が経つにつれ城の地下って部分がぼやけて迷路と財宝と怪物ってキーワードに着目されるようになったとか。

 まぁ、ゲームの影響も大きいとは思うよ。ゲームにおいてダンジョンってのは雰囲気があるのもそうだけど、閉鎖空間で行動が制限されるから、容量やプログラムの上でも都合が良いんで、よく使われた結果ダンジョンって言葉が迷宮を表現する言葉として一般化したんじゃないかと思う。


 まぁ、何が言いたいかというと、特に言いたいことは無い。

 ただ、ダンジョンって言葉が迷宮を指すようになるのは地球でもそれだけの経緯があったってことで、この世界の人間がダンジョン=迷宮と認識しているのはどうしてなのかなって思っただけ。もっとも、翻訳の都合上、理解しやすい言葉に直されているだけかもしれないけどさ。

 それだったら、余計なことを考えている意味はなかったねってだけで終わり。


「ダンジョンとはどういう場所なんだ?」


 ゼティがリィナちゃんに質問する。

 まったく分からねぇ野郎だな。さっき言っていたろ、ダンジョンってのは迷宮で、迷宮ってのはダンジョンだってリィナちゃんが言っていたじゃないか。


「ダンジョンというのは、この世界に突然現れる空間で、ダンジョンマスターという存在が作り出すらしくて、ダンジョンというのは基本的に迷宮という形をとり、その中には魔物が生息していますけど、同時に財宝も眠っています。

 そんな迷宮を作るダンジョンマスターがどういう目的を持っているかは分かりませんけど、中にはダンジョンの中の魔物を外へ出して人里を襲わせる者もいます。もっとも、そういうのは少数で大半は人間に何かしようってことは無いですね。ただ、どうしてもダンジョンから溢れ出てくる魔物はいるみたいですけどね。

 それで私たち冒険者は、溢れ出る魔物の駆除やダンジョンの中にいる魔物を討伐して、その素材を手に入れたり、財宝を求めてダンジョンに潜ります」


 へぇ、そうなんだ。さっきの俺への説明は何だったんだろうね。

 俺への反抗期の妹ムーブは永遠にやらなくても良いんだよ?


「村の近くにダンジョンができるのかぁ~ 村が栄えっかな?」


 ジョンはノンビリとした様子で村の近くにダンジョンができたと聞いても危機感を抱いていない様子だった。

 まぁ、リィナちゃんの話しを聞く限りだとダンジョンマスターがヤバい奴じゃなければ、それなりには安全だし、ダンジョンで得られる物を求めて冒険者とか人も増えるだろうから、そういう奴ら向けの商売をすれば儲かるかもね。


「そんなに楽観視するのは駄目よ。現に村の近くに現れたっていうバジリスクはダンジョンから出てきた可能性も高いんだから」


 リィナちゃんはジョンには当たりが弱いんだよね。俺には強いんだけどね。

 もしかしてツンデレって奴なのかな? 

 参るなぁ、俺はガキに興味ねぇんだよ。せめて800歳は越えてくれないと守備範囲外なんだよなぁ。

 俺って体感時間はともかく実時間の上では数千歳なわけだし、それが十年くらいしか生きてないのと付き合うってのはなんか微妙。


「そんなことは無いと思うぞ」


 いつの間にか隣を歩いていたゼティが俺の思考を読んだかのように否定の言葉をかけてきた。

 ツッコミありがとう。俺もそれは無いと思っているから大丈夫。


 くだらないことを考えたり話しながら歩いていると、ほどなくしてベーメン村に辿り着いた。

 俺とゼティは食事も睡眠も必要ないけど、ジョンとリィナちゃんには必要なんで、その二人に合わせていたら、一日以上かかってしまった。

 ベーメン村は普通の農村って感じで、それほど貧乏って感じも無い木造の家が幾つも立っており、畑もそれなり以上の規模がある。おそらくここで、ラザロスの町で消費される食糧を作っているんだろうね。


「ようやく我が家に帰ってこれたぞ!」


 それは良かったね、ジョン君。


「一旦、荷物を置いてくる」


 そう言ってジョンは自分の家に帰る。

 ジョンが向かった先は村の端っこにある今にも崩れそうな小屋だった。家族で住んでいる気配はないなぁ、とか思って見ていると、ゼティが首を傾げて疑問を口にする。


「もしかしてついてくるつもりなのか?」

「そうなんじゃないか?」

「素人を連れて行くのは良くないと思いますよ」


 リィナちゃんは不満そうだけど、俺は別に良いんじゃないかなって思う。

 戦力なら、俺とゼティがいれば何とかなるし、リィナちゃんだって必要無いんだよな。


「ダンジョンってどこ?」

「行く前にダンジョンは村の資産だから、村長とかに話を通さないと」


 リィナちゃんの提案は面倒くせぇなぁ。

 話をしたところで何があるの? これからダンジョンに調査に向かった連中と合流しようと思います、ついでに場合によってはダンジョンを壊すかもしれないんですけど、そこんところご了承くださいって言うの? 俺は正直者だから本当のことを言っちゃうと思うぜ?


「準備は終わった! 早く行こう!」


 ジョンはすぐに戻ってきた。

 準備と言っても、手に棍棒を持っているくらいだが、まぁいいだろ。

 けれど、リィナちゃんはジョンの装備が気に入らないようで、難癖をつけだす。


「ジョン君は何をしにいくつもりなんですか?」

「そりゃあ、財宝を見つけに」


 やる気があって何よりじゃないか、それだけで充分だと俺は思うよ。


「良いですか? 私やお師匠様はともかく、貴方みたいな素人には危険な場所なんですよ? 御両親とか貴方を心配する人もいるはずですし、無茶なことはやめてください」


「俺は家族はいないぞ、捨て子だからな」


 ついでに、そんなに好かれてもいないんじゃないか?

 あんな村の端の方にある小屋みたいな所に住まわせられているんだからさ。

 俺の勘だと、捨て子のジョンに拾って育ててやった恩を返せって感じで使い勝手のいい労働力として使われてるんじゃないかって思うんだが、どうだろうか?


「あ、そうなんですか……」


 リィナちゃんも色々と察したのか気まずい感じなる。

 地雷を踏んで後悔するくらいなら、他人の事情には口を出さないのが一番だぜ。

 俺なんか、他人の地雷を踏んでも特に何も思わないけどね。


「とにかく行かないか? ダンジョンは森の中なんだろ?」


 ゼティは全く興味がないようで、既に先に行こうとしている。

 もう村長とかに話を通すのは無しの方向性で、リィナちゃんはゼティを追いかけて歩き出し、それに続いてジョンと俺も歩き出し、森の中へ足を踏み入れる。


 しかし、よくよく考えてみたら、とんでもないパーティーだよな。

 俺(クラス:戦士、武器:素手)

 ゼルティウス(クラス:戦士、武器:剣)

 リィナ(クラス:戦士、武器:剣)

 ジョン(クラス:戦士、武器:棍棒)

 ゲーム的に考えたら、超絶脳筋パーティーなんだが、これで大丈夫か?

 まぁ、大丈夫なんだけどな。俺とゼティが強いんだから、どうとでもなるんだわ。


 ベーメン村近くの森の中に入ったは良いけれど、誰もダンジョンの場所を知らない。

 まぁ、バジリスクっていう魔物がダンジョンから出てきたっていうし、その移動痕を逆に辿っていけばダンジョンには辿り着くだろうから、ゼティに聞いてその魔物を倒した場所にまで連れて行ってもらい、そこからは俺が頑張って目的の場所を探す。

 俺は人間だった時にどこぞの国の特殊部隊からジャングルを逃げ回ったり、逆にジャングルの中で特殊部隊の連中を追跡したりしていた経験があるんで、その時の経験を生かせば森の中で移動の痕跡を探すのとかは楽勝だ。

 そうして、バジリスクの通った道を見つけて、その逆を行くとすぐにダンジョンの入り口まで辿り着くことが出来た。やっぱり、人生いろいろ経験しておくのが良いね。どこで何が役に立つか分からねぇからな。


「ここがダンジョンの入り口かぁ~」


 森の中に不似合いな石を積み上げられて作り上げられた地下への入り口を、ジョンが口を開けて眺めている。

 足元には俺達以外の靴跡が四人分あり、大きさからみて男二人に女二人の組み合わせだ。その組み合わせはカイル達とも合致するんで、ここに入っていったのは間違いないだろう。


「このまま入るんですか?」


 リィナちゃんがゼティに聞く。俺に聞かないのはなんなんだろうね?

 空気的に俺がリーダーっぽいのにゼティに聞く理由は? きっと、反抗期の妹的なムーブなんだろうってことで納得しておこう。いやぁ、可愛いねぇ。

 でも、面倒だから最初に変なことを言わなければ良かったと後悔中。

 実の兄じゃなくて親戚のお兄さんとか親戚のおじさんの設定にしておけば良かったな。まぁ、そういう問題じゃないだろうけど。


「待ってても良いとは思うが、中がどうなってるか分からないしなぁ」


 ゼティに話しかけているようだけど、ゼティの代わりに俺が答える。


「アンタには聞いていないんだけど」


 俺もリィナちゃんの発言は聞かなかったことにして、そのまま続ける。


「それにこのままここに待機していても退屈だろ?」


 ゼティと目が合うとゼティが頷く。気持ちが通じ合うって素晴らしいよな。

 というわけで、突入が決定したぜ。リィナちゃんとジョンも意見があるかもしれないけど、申し訳ないが聞くわけにはいかないね。


「カイル達と入れ違いにならないように、二人はここで待っててくれ」


 ゼティがリィナちゃんとジョンに頼む。

 俺達全員でダンジョンの中に入ったとして、入れ違いでカイル達が出てきたら面倒なことになるもんな。

 しかし、二人は不満そうだ。


「俺の財宝はどうすんだ?」

「お師匠様と離れるのは嫌です」


 たいした理由じゃないんで無視だ。

 とにかく、ここに残れってゼティが言い聞かせたら二人は渋々ながらもダンジョンの入り口前に残ることを了承してくれたんで、問題無し。


 俺とゼティがダンジョンに入ることになり、俺達は入り口からダンジョンの中へ足を踏み入れた。

 ダンジョンに入るなり、ゼティが俺に訊ねてきた。


「実際どう思う?」

「どう思うって何のことだ?」


 主語が無いと分からないんですけどゼルティウス君? そういうの良くないって他の使徒の子にも言われてるよね? まぁ、主語が無くても何を言いたいか察せるから良いけどさ。

 ダンジョンは入り口から下へ向かう階段になっており、俺達は降りながら話をする。


「ダンジョンマスターの話だろ? 結構、同じような形式があるから珍しくは無いけど。自然にできる形式じゃないよな」


 リィナちゃんが言っていたダンジョンマスターとダンジョンの話は他の世界でも同じようなタイプがあるんで珍しいことはないんだよ。

 でも、そのタイプってだいたいが、何かしらの外部から作為みたいなもんが働いていることが多い。俺がゼティみたいな使徒を異世界に送り込むのと同じ感じで、俺と同じような神が人間に力を与えて異世界に送り込むパターンとしてもダンジョンマスターってのは結構多いんだわ。


「自然発生型だと思うか?」

「八割くらいの確率で転移者だろうなぁ」


 ダンジョン周りの話だけ、この世界の設定から浮いているからなぁ。

 最初からゲーム的に組み立ててある世界だったらおかしくないけど、そういう設定でキッチリ組み立ててある世界でも無い感じだしな。

 そういう場合は違う世界の神が自分の世界の人間を送り込んで何かやっている場合が多いんだよな。


「俺達をこの世界に閉じ込めている奴の仕業だと思うか?」


 ゼティ君は質問ばっかりだなぁ。


「俺は違うと思うね」

「根拠は?」

「勘」


 そう言うとゼティは納得してくれた。

 まぁ、ちゃんとした根拠が無いわけじゃないんだけどね。でも説明するのが面倒くさいのよ。なので勘の一言で済ませてしまうわけ。でも、それで納得してくれるんだから問題ないよね?


「まぁ、こっちで色々と推理しても確かな答えは得られないんだ。とりあえず、ダンマスを見つけ出して、色々と聞き出すのが良いんじゃないかね?」


 ダンジョンマスター略してダンマスに聞けば、望み薄だけど、この世界を脱出する方法も分かるかもしれない。それが分からなくても、そいつから得られる情報はあるだろうから、話を聞きに行かないわけにはいかない。


「じゃあ、普通に攻略するのか?」


 階段を降りると大きな扉があったので、それをゼティが開けながら俺に訊ねる。


「それもつまんねぇなぁ」


 答えながら俺はゼティが開けた扉の中に入ると、扉の奥には広間があり、そこにはダンジョンの奥へ続く二つの通路があった。

 随分とまぁ、おあつらえ向きなシチュエーションに俺とゼティは顔を見合わせる。


「競争するか?」

「いいね」


 ゼティの提案に俺は頷き、二つある通路の内の左側を行く。


「倒した敵の数で良いか?」

「ボスとダンマスは100点しようぜ」


 ゼティが右の通路に向かいながらルールを決めようとしてきたので、雑魚は1点、ボス級を倒したら100点で得点が多い方が勝ちってことにした。おっと、最初の目的を忘れていたな。


「カイル達を見つけたら一人につき10点な」


 俺が追加したルールにゼティも異論はないようで頷いて先へと進んでいく。

 得点計算については、俺達は千年以上生きている大人なんでズルはしないから自己申告で問題ない。


「やっぱ、勝負事は良いよな」


 俺は一人になって左の通路を進みながら呟く。

 競争も戦いの一種だから、やる気が目に見えて昂ってくるのを感じるぜ。

 それに相手はゼティだぜ?

 そこら辺の奴らとるのも悪くねぇけど、相手が使徒ゼティなら、本気を出しても互角の勝負ができるのは間違いないわけで、そういう相手なら俺だって手加減の必要だって感じなくなり──


顕現せよ(アライズ)、我がカルマ。遥かなそらへ至るため──」


 ──最初から最高のテンションで業術カルマ・マギアの使用も躊躇わなくなる。


 エルディエルを相手にした時にも使ったが、その時は詠唱しなかった業術の第一段階の詠唱を行い、俺は業術を発動。

 俺が身にまとう魔力や闘気が熱を帯び、一歩踏み出す度に足元の石畳が靴の形に赤く焼けて、俺の靴跡が見える形で残る。


「じゃあ、行こうかね」


 退屈しのぎのための余興だが、せっかくのゼティとの勝負だ。

 ちょっと本気マジでやらせてもらおうか。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ