立ちはだかる剣
タイトルを変えてみたけれどもイマイチ流行りに乗れてない感じ。
たぶん、近いうちにまた変えることになると思う。
アッシュとラ゠ギィが向かい合っていた時、その後方ではゼルティウスとゴ゠ゥラが対峙していた。
ゴ゠ゥラは先程ゼルティウスに斬られているが、その傷は既に癒え、完全な状態でゼルティウスの前に立っているが、その視線は──
「アスラカァァァァズ!」
ゴ゠ゥラの視線はアッシュに向かっておりゼルティウスの姿は眼中に無い。
そして、ゼルティウスが目に入らないゴ゠ゥラはアッシュの方に向かっていこうとする。
しかし、それは当然ゼルティウスが許さない。
「俺が行かせると言ったか?」
無造作に構えていたゼルティウスの剣が閃き、ゴ゠ゥラの両足が斬り飛ばされる。
ゴ゠ゥラは前のめりに倒れ、そこでようやくゼルティウスの存在を意識するのだった。
「小物が邪魔をするな!」
「邪魔をしているのはお前の方だ、小僧」
ゴ゠ゥラは斬り落とされた足を即座に再生させ今度はゼルティウスの方に向かって突進する。
その瞬間ゼルティウスの剣が閃き、ゴ゠ゥラの全身から血が噴き出す。
太刀筋も何も見えない神速の斬撃。しかし、ゴ゠ゥラはその刃を受けても立ち止まることなく、全身から血を噴き出しながらもゼルティウスとの距離を一気に詰め、その勢いのまま体当たりをしてゼルティウスに組み付くと、その状態のまま突進し、通路の両脇の壁を突き破って外へと押し出す。
研究棟へ入るための通路は学院の校舎の三階に位置する部分にあり、ゼルティウスとゴ゠ゥラは共に建物の三階から落下して地面に叩きつけられることになった。しかし──
「自分から場所を変えてくれたことに関しては礼を言わせてもらう」
組み付かれた状態だったゼルティウスはゴ゠ゥラが下になるように空中で体勢を変えて、ゴ゠ゥラの体をクッションにして地面に落下していた。そのついでにゴ゠ゥラの体に剣を突き立てるのも忘れずに。
「この──アスラカーズの下僕風情がぁぁぁ!」
ゴ゠ゥラは自分を踏みつけにして剣を突き立てるゼルティウスを押しのけるようにして立ち上がるが、その動きが見えた瞬間にゼルティウスは既にゴ゠ゥラの体から剣を抜き、距離を取っていた。
「好きに言えばいい。死にゆく者の言葉など何も響かん」
ゼルティウスの視界の中でゴ゠ゥラの姿が僅かにブレる。
それを仙理術士の『縮地』の前兆であることを知っているゼティはゴ゠ゥラの動き出しに合わせて剣を振る。──直後、周囲に撒き散らされるゴ゠ゥラの鮮血。ゴ゠ゥラが相手の不意を突くために行った高速移動の『縮地』を見切ったゼルティウスの剣はゴ゠ゥラの脇腹を深く斬り裂いていた。
「馬鹿なっ!」
ゴ゠ゥラは傷を負った脇腹を押さえながら驚愕の表情でゼルティウスを見る。
「俺の体は鋼鉄と同じ強度。それをどうしてこうも易々と斬れる!」
「鋼と同じ程度で誇るな。その程度、得物がこれでも容易い」
ゼルティウスがそう言いながらゴ゠ゥラに見せるのは自身が持つ剣。
それはソーサリアに来てから二束三文で購入したナマクラであるが、ゼルティウスが扱えば鉄すら容易く斬り裂く名剣となるうる。だが、ゴ゠ゥラはゼルティウスの言葉を信じず、単純に剣の切れ味によるものと錯覚した。
剣さえ奪えば──そう思い、ございません。ゼルティウスの剣を奪い取るために動き出す。
「剣を失っても、その台詞が吐けるか!」
『縮地』ではなく、純粋な踏み込みで距離を詰めるゴ゠ゥラ。
それを迎撃するためにゼティは剣を構え振り抜くが──
「……どういうつもりだ?」
ゴ゠ゥラの体に触れた剣はその体を斬ることはできず、ただ肉にめり込むだけだった。
仙理術士はその体に物体を取り込むこと術を持つ。その術を用いてゼルティウスの剣を受けた際に、術を発動しゼルティウスの剣を自分の肉体で絡めとり、その剣を奪い取ろうとしたのだった。
「無駄なことをしているな」
ゼルティウスはゴ゠ゥラの体に取り込まれそうになっている自分の剣を手放し、距離を取る。
「負け惜しみを言うな!」
ゴ゠ゥラはゼルティウスから自分の体を傷つけられる名剣を奪ったつもりで、自分が優位に立ったと思っている。ゼルティウスはそんなゴ゠ゥラに対して──
「貴様は己の技と術そして武を理解していないな」
ゴ゠ゥラはゼルティウスの剣を鋼を取り込んだことで、自分の体がその剣と同じ硬度になっていると思っているし、実際にもそうなっている。しかし、ゼルティウスはそんなゴ゠ゥラを取るに足らないと断じる。
「鋼の硬さ? 笑わせる。貴様がどれほどの物を取り込もうが話にならん」
ゼルティウスは地面に落ちていた木の小枝を拾い上げる。
そして、それをゴ゠ゥラに向けるなり、一気に距離を詰め、小枝を振るう。
直後、ゴ゠ゥラの胴が大きく断ち切られ、ゴ゠ゥラの体が地面に崩れ落ちる。
「ヒトは鍛えれば鍛えるほど強くなることができる。鍛えれば鋼より人の体が強くなることを理解してないのか?」
少なくともゼルティウスが戦った過去の仙理術士はそれを理解しており、自己の鍛錬に重きを置いていた。
鋼程度の硬さで己の肉体を誇るゼルティウスから見る限りゴ゠ゥラは明らかに鍛錬不足であるし、そもそも己の技と術そして武について理解不足だ。
「少し俺に傷をつけた程度で調子に乗るな!」
ゴ゠ゥラの体が瞬時に再生し、ゴ゠ゥラは元に戻った体を動かしてゼルティウスから速やかに距離を取る。
再生の方式はアスラカーズの使徒と同じで、傷が治ると同時に身に着けている衣服も元通りになっている。
「俺が新たに手に入れた力を見せてやる!」
ゴ゠ゥラは距離を取ると同時にゼルティウスへと手を向ける。
直後、ゴ゠ゥラの手から放たれたのは魔術によって生み出された火球。
その火球はゼルティウスへと一直線に飛翔するが──
「それがどうした」
ゼルティウスが自分に向かってくる火球に対して、手に持った小枝を振るうと火球は簡単に斬り裂かれ、掻き消える。
「稚拙な技量の者を喰らったところで得られるのは稚拙な技だけだ」
ゼルティウスがゴ゠ゥラに向けるのは呆れたような視線。
「そもそも、この世界の並の人間が使う魔術より貴様が元から使える仙理術の方が遥かに強力だというのに何故わざわざ弱い力を手に入れようとするか分からないな」
言いながらゼルティウスは手に持っていた小枝を放り捨てる。
それを見て手に持っていた武器を捨てたと判断したゴ゠ゥラはチャンスだと錯覚する。
「手っ取り早く安易に力を得ようとにヒト食いをしたのだろうが、そんな近道をするより地道に己が修得した術を磨き上げる方に力を注げば、もう少し俺にも対抗できたかもしれんが──」
ゴ゠ゥラはゼルティウスに向けて今が好機だと魔術の発動しようとする。だが、その瞬間──
「今となってはもう遅い」
魔術を放とうとゼルティウスに向けていたゴ゠ゥラの腕が輪切りにされる。
突然のことで何が起きたか分からないゴ゠ゥラがゼルティウスを見ると、ゼルティウスの手には一見すると何の変哲もない長剣が握られていた。しかし、それは──
「究竟──剣霊具現、一刃創成」
ゼルティウスが手に持った剣を横に振るうと刀身が伸び──正確には刀身が幾つかの節に分割され、一本のワイヤーでつながった蛇腹剣の姿が明らかになる。
「蛇剣ハル゠ワシーン」
ゼルティウスが瑜伽法で生み出した剣の名前を呼び、それに応えるように蛇腹剣が唸りを上げてゴ゠ゥラに襲い掛かる。
通常の剣の間合いよりも遥かに遠い間合い。ゼルティウスの蛇腹剣の刃が伸び、通常の剣よりも遥かに遠い間合いにある相手の体を斬り裂く。
「っうおぉぉぉっ!」
ただでさえゴ゠ゥラはゼルティウスの太刀筋が見えないというのに、そのうえで蛇腹剣という変幻自在の武器を使われれば尚更ゴ゠ゥラにはゼルティウスの攻撃を見切ることなど不可能であった。
魔術による攻撃によって獲得できたはずのリーチの差も、それを発揮するより先にゼルティウスの創り出した剣によってアドバンテージを奪われている。
ゴ゠ゥラに出来ることといえば雄叫びをあげ、ゼルティウスの攻撃に耐えることくらいしかなかった。
「わめくな」
ゼルティウスが何の感情も浮かんでいない顔で蛇腹剣を振るう。
直後、その刃は不可思議な軌道を描き、真正面からゼルティウスに向かっていた刃の切っ先だけがゼルティウスの背後に回り込み、首を延髄側から喉に向けて貫いた。
「っが──」
声も出せず絶命するゴ゠ゥラ。
ゼルティウスが剣を持った手を振るうと喉を後ろから貫いていた切っ先が速やかに抜かれ、直後にその切っ先がゴ゠ゥラの体を脳天から垂直に貫く。
「……この程度では死に切らんのだろう?」
ゼルティウスが再び剣を振るうとゴ゠ゥラの体を貫いていた蛇腹剣が元の長剣の長さに戻る。
「貴様が食ったヒトの数は二人程度だろう。であるならば、十回ほど殺す必要があるな」
仙理術士もアスラカーズの使徒と同様に命の数は残機で表せる。
仙理術士はヒト食いをすることで残機を増やせるが、その残機の増え方は一人の命を食ったから一つ増えるという単純なものではなく、食った人間の魂を再生や復活のエネルギー源という形で使用しているので、一人を食っただけでも数回分の残機を獲得できるようになっている。
「俺はたまに思うよ。お前らが簡単に死ななくて良かったってな」
蛇腹剣が再び刃を伸ばす。
「貴様らが蘇る回数分だけ、貴様らに未来を奪われた人々の苦しみを味わわせることができるからな」
ゴ゠ゥラはゼルティウスの剣を見切ろうと意識を集中させるが、集中しようとした瞬間に四肢が輪切りにされ宙を舞い、そこにゼルティウスの蛇腹剣が閃き、ゴ゠ゥラの輪切りになった四肢を貫き、串刺しにしてみせる。
「っっうぉぉぉぉっ!」
手足を失って声を上げるゴ゠ゥラだったが、辛うじて四肢の再生が間に合い立ち上がる。
しかし、立ち上がった瞬間、その心臓は突如、地面から突き出た蛇腹剣の切っ先に貫かれる。
ゼルティウスが蛇腹剣を振ると地面から突き出た蛇腹剣がゴ゠ゥラの心臓から抜かれて地面に引っ込む。
「この程度で──」
声を上げようとしたゴ゠ゥラの喉を、ゴ゠ゥラの真後ろの地面を突き破って現れた蛇腹剣の切っ先が延髄側から貫く。
「俺は既にわめくなと言っている」
ゼルティウスは喉を貫かれたゴ゠ゥラを睨みつける。
「どうして貴様らは平気で人の命を踏みつけにできる? 貴様が食った人間は命を奪われるほどの悪人だったか? いや、悪人であったとしても魂まで食う必要はない」
ゼルティウスが手に持っていた剣を手放す。
すると蛇腹剣は光の粒子となって散り、ゴ゠ゥラの喉を貫いていた刃も消え去り、ゴ゠ゥラは負傷から膝を突く。
「命は失われても魂は輪廻し、新たな命となる。だが食われた魂は新たに生まれ変わることはなく、命はそこで終わる。貴様らのしていることは命の輪廻という未来を奪う行為であり、これから生み出されるであろう全ての命を踏みつけにすることだ。俺はそれを許すわけにはいかない」
断罪の意思を伝えるゼルティウスの手に瑜伽法で生み出された新たな剣が握られる。
「邪神の手下が何を言う」
「邪神の手下だからこそ、こうして人のために尽くしている」
神の正道とは無関心を是とし、神として正道を歩むことを放棄した邪道の神は人に肩入れする。
「ヒトを喰らいヒトであることを捨てた貴様は死ね」
ゼルティウスが膝を突くゴ゠ゥラに向けて剣を振りかぶる。
それを見たゴ゠ゥラが取った手段はヒト食いによって手に入れた魔術による防御ではなく、己の身を鍛え上げて手に入れた仙理術士の技による攻撃。ゴ゠ゥラは至近距離からゼルティウスに向けて『流撃』を放つが──
「その程度の技が通じると思っているのか」
ゴ゠ゥラが放った『流撃』は確かにゼルティウスに直撃したはずだが、ゼルティウスは全くの無傷。
家屋も一発で破壊し、アッシュにもダメージを与えられる攻撃がゼルティウスに通じないという理解の及ばない事態に際してゴ゠ゥラが次に取ったのは逃走の一手。
ゴ゠ゥラは即座にゼルティウスに背を向け、全速力で駆け出すが、ゼルティウスはそれを上回る速度でゴ゠ゥラの進行方向に先回りし立ちはだかる。
「逃がすわけがないだろう」
立ちはだかるゼルティウスに対し、ゴ゠ゥラはその攻撃に備え防御を固める。
鋼の硬さの肉体に更に力を注ぎ込み、鉄壁の防御力を──しかし、ゼルティウスの剣はその守りを容易く破り、ゴ゠ゥラの腹部を長剣が貫く。
「その程度の守りを抜けないとでも思っているのか」
腹を貫かれた傷に膝を突くゴ゠ゥラ。
ゼルティウスはそんなゴ゠ゥラの首を刎ねるために剣を構え、刃を叩き込もうとする。だが、その直前──
「…………」
ゼルティウスは不意に剣を止め、研究棟の入り口の方向に顔を向ける。
その表情は無表情に見えつつ僅かな困惑が浮かんでいた。
その理由はアッシュの業術の気配を感じたためである。それがただの業術であるならば、ゼルティウスは気にも留めないのだが、発している気配からゼルティウスは無視できなかった。
感じられるアッシュの気配は戦闘用の業術ではなく、殺戮用の業術。普段のアッシュを知っていれば、敵を殺すための殺戮用を使うというのはただ事ではない。それを理解しているゼルティウスはこの場を速やかに片付け、アッシュのもとに向かおうとする。
片付けるとは当然ゴ゠ゥラのこと。しかし、ゼルティウスの意識が一瞬だがアッシュの方に向いたそれが致命的だった。
ゼルティウスが改めてゴ゠ゥラの首を刎ねようとした、その瞬間、横合いから放たれた『流撃』がゼルティウスの体を粉砕し、その血肉を辺りに撒き散らす。
「不意打ちで失礼いたします」
そう言って姿を現したのは、つい先ほどまでアッシュと戦っていたラ゠ギィだった。
ラ゠ギィは身動きが取れなくなっているゴ゠ゥラに近寄ると、自分を見上げるゴ゠ゥラの頭部に気を打ち込み、意識を刈り取り担ぎ上げる。
「帰りますよ、先輩。いくらなんでも差がありすぎる」
「──帰すと思っているのか」
元通りに復活したゼルティウスが背を向けて立ち去ろうとするラ゠ギィに問う。
「そこの小物もそうだが、貴様も逃がすわけにはいかない。いや貴様だけは逃がすわけにはいかない」
殺意を纏ったアッシュから逃げ切ったうえ、自分の防御を突き破る『流撃』を放つ仙理術士だ。ゼルティウスにとってラ゠ギィはゴ゠ゥラよりも優先して倒すべき対象となっていた。
「ご容赦いただけるとありがたいのですが。私はアスラカーズ様のお怒りから逃げるのに、だいぶ力を使ってしまったので──」
言葉の最中にラ゠ギィは動きだす。
それに用いる術は仙理術士の使う近接戦闘用の高速移動術である『転動』。
しかし、ゼルティウスは身体能力でもって、その速度に追いつく。
そして、高速移動の最中でゴ゠ゥラを担ぎながら防御の態勢を取るラ゠ギィの体を長剣で斬る。
「……ちっ」
舌打ちをしたラ゠ギィは表情に明らかな苛立ちを浮かべると、足を止めてゼルティウスに向き直るが、しかし次の瞬間にはいつもの柔和に微笑んだ表情を浮かべていた。
「やはり瑜伽法を使う相手は苦手ですね。身体能力強化の差というのは大きいと痛感しますよ」
ラ゠ギィは油断なくゼルティウスの動きを伺いつつ、口の動きを止めることはしない。
「『根』をはり、『城』を建て、『宝』を飾り、『威』を示し、『国』を築き、『令』を敷く』でしたか? 瑜伽法の六術法というのは」
ラ゠ギィの言葉を聞き、ゼルティウスは警戒の構えを取る。
「どこで聞いた?」
「申し訳ありません。どこで聞いたかは記憶にございません」
ラ゠ギィは飄々とした態度を見せながらも、しっかりとゼルティウスを見据え、その隙をうかがう。
「『根』は自分という存在を固定し、それぞれの世界が持つ法則に耐性を得るための術。『城』は自分と世界の間に境を作り外界から与えられるものを防ぐ術。『宝』は……身体能力を上げる術で、『威』は自身の力を相手に通すための術でしたよね?」
「俺に講釈する内容ではないな」
ゼルティウスは正解だとも間違いだとも言わない。
ただラ゠ギィの言葉に何か意味があると思い警戒をするだけだ。
「特に意味はありませんよ。ただ……知っているのならば、使えるとは思いませんかと聞きたかっただけで──」
ラ゠ギィがそう言った瞬間ゼルティウスは即座に瑜伽法の『城』の術法を発動し、守りを固める。ラ゠ギィが『威』の術法で自身の防御を突破して魂自体に打撃を叩き込んでくる可能性を考えたためである。
瑜伽法は究竟の段階に至るまで業術のような派手な攻撃はなく、自身の能力の底上げや攻撃に何らかの特性を付与することに留まる。しかし、その分、元々の技量など大きく関係してくる。ゼルティウスはラ゠ギィの技量から危険な攻撃が来ると反射的に防御の態勢を取ってしまっていた。
しかし、その反射的行動も一瞬でゼルティウスはラ゠ギィの気配から攻撃の気配が無いと察し、即座に防御を解いて攻撃に移ろうとする。だが、ラ゠ギィにとっては、ゼルティウスの一瞬の迷いだけで充分だった。
「本来の仕事があるので私達はここで失礼します」
ラ゠ギィはゴ゠ゥラを担いだまま『縮地』で逃走する。
結果、攻撃よりも僅かに防御に思考が傾いたことで攻撃に移るタイミングを外されたゼルティウスはラ゠ギィとゴ゠ゥラの逃亡を許してしまう。
苛立たし気に舌打ちしつつ、ゼルティウスの思考は即座に二人を追うべきかどうかの判断を開始する。
ゴ゠ゥラの方はともかくラ゠ギィの方はここまでの結果から仙理術士として相当な実力者だとゼルティウス分析しており、なるべく早く始末をつけるべきだと思い、そのために追うべきだとも思っているが──
「見つけたぞ! 魔導院を脅かすアウルム王国の手先だ!」
戦闘の音を聞きつけた魔導院の学生達がゼルティウスの周りに集まってくる。
「まずはこいつらを何とかするしかないか」
そうしなければアッシュとの合流もままならない。
そう判断したゼルティウスは仙理術士二人のことはひとまず置いて、目の前の殺気だった集団を何とかするため、学生達の中に飛び込んでいくのだった。
ちょっと忙しいので一週間くらい休みます




