どこを目指すのか
俺とゼティは積もる話もあるので、俺が寝床にしているラザロスの町近くの草原に戻ってきた。
とりあえずテントを張って、火を熾して、俺とゼティは火を囲んで地面に腰を下ろす。
「で、お前はどうやってこの世界にやってきたんだ?」
俺がやって来た経緯はゼティに話してある。ゼティがこの世界にやって来た経緯を聞いて、俺の時と何かしらの共通点でも無いかと思って聞いてみたのだが——
「この世界に来る直前、俺は宇宙戦争中の世界にいて、最終決戦の真っ只中だった。俺の敵が有する最終兵器の宇宙要塞を剣でぶった切ったら、動力に使っていたらしいブラックホールが暴走して、それに飲み込まれた。で、気づいたらこの世界だった」
良くある話過ぎてなんとも言えねぇなぁ。
でもまぁ、俺の場合との共通点は無さそうだな。
「その世界に用事は残ってんのか?」
一応だけど聞いておく。
残っていたなら、ゼティは荒れているだろうから、今の様子を見る限りでは大丈夫なんだろう。
「それに関しては問題ない。あの世界にはいなかったからな」
ゼティが俺の使徒になったのは人探しのためだ。
とある男を見つけるためだけに俺の手下になって、異世界を旅してまわっているんだが、一向に手がかりが掴めない。
俺とゼティの間には契約があって、ゼティの人探しの手伝いってことで色んな世界に送り込んでやる代わりに、俺の頼みを聞くってことになっていたりする。
俺に対して色々と思う所はあるんだろうけど、俺がいないとゼティも困るだろうから、俺を裏切ることは無いだろうね。
「この世界にいるかもしれないし、いないかもしれない。いないと分かった時に、出て行くことが出来ないんではな困るからな。さっさと脱出の手段は確保しておきたい」
「そう言ってもなぁ」
「何か考えがあるだろう?」
無くはないけどな。
とりあえず、俺達がこの世界を脱出できないのは、この世界のシステム自体の問題か、それとも誰かが邪魔しているかのどっちかだと俺は思うんだ。
この世界のシステムが問題であるなら、それを管理している神々をぶっ殺して管理権限を奪えばいい。ついでに、まともに機能していない世界の運営システムの修復もできる。
邪魔している場合も、そこらの人間が俺達をこの世界に閉じ込めることなど出来るわけがないから、高次の存在が犯人だろうし、そういう高次の存在は神々である場合も多いんで、やっぱり神をぶっ殺すしかないな。
「この世界の神をぶっ殺す」
シンプルにこれが問題解決の手段だと俺は思うね。
小手先の打開策を探すより、こっちの方が俺達の性に合っているしな。
「どっちの神だ?」
ゼティの疑問は白神とかの六神か、それとは別の神かって話だ。
結局の所、この世界の六神ってのは世界を管理するためのAIみたいなもんなんだよな。
別の神ってのは、そんな六神を作って、そいつらに世界の管理を任せた奴。
俺と同じような存在だね。
「とりあえず六神を殺そうぜ? そいつらの方が居所が分かりそうだからな」
クルセリアとかいう場所に白神を崇める宗教の総本山があるみたいだし、そこを目指すのが良いだろうね。
エルディエルから情報を聞けなかった以上、最初からそこを目指す予定でもあったしな。
「ところで、ゼティはどれくらい前から、この世界にいるんだ? 何のプランも立てていないようだから、最近だと思うけどさ」
「一か月前にこの世界に来たな」
けっこう前じゃねぇかよ。その間、何やってたんだテメェはよぉ。
でもまぁ、ゼティ君はアレだよね、只者ではない雰囲気を出してはいるけど使徒の中でも頭脳労働が苦手な方に入るから仕方ないような気もするんで、許してやろう。
見知らぬ土地に来て、苦労してたのかもしれないしな。
「一か月間、何やってたんだ?」
「冒険者をして魔物を狩っていた」
けっこう楽しんでんじゃねぇかよ。
お前、こんな世界に飛ばされたって言ってたわりには楽しんでるじゃねぇか。
まぁ、良いけどよ。俺も好き勝手にやっていたんで、偉そうなことは言えないしな。
「ところで一か月って、俺の故郷の時間で換算するとどれくらいだ」
一か月と言っても世界によってまちまちだし、もしかしたら短い期間なのかもしれないから一応、聞いておく。
「お前の所の1秒と変わらない。60秒で1分で、60分で1時間、一日は24時間。一か月は30日で固定で、一年は12か月で360日だ。この世界を作った奴はお前と同郷なんじゃないか?」
つまり地球出身で人間から神になった奴だ。その可能性は高い気がするな。
まぁ、地球って言っても色んな地球があるし、時代も違ったりするし、地球じゃなくても全く同じ時間の計算をする世界だって無いわけじゃないから、それだけでこの世界を作った奴を絞り込むのは難しいよな。
それに世界を創る際の設定は自分の出身の世界に合わせるのが楽だから、みんなそうしているだけであって、変えるのは自由だから、そもそも推理の材料にもしがたい。
結局のところ、今は考えても仕方ないってことだ。
「それで、お前の方は?」
余計なことを考えていると俺が何をしていたのかゼティが聞いてきた。カッコつける必要も隠すようなことも無いので、あったことをそのまま話す。
「そこら辺の奴と喧嘩をして金を稼いでいた。ついでに代官から人探しを頼まれたりもしたな」
俺もたいしたことはやってないんだよなぁ。
白神の手下の天使をボコにしたくらいだけど、あんまり意味なかったしな。
「代官の頼みを聞いてやるのか?」
ゼティが質問してきたけど、その意図は無視して他所の国に行くべきなんじゃないかっていう提案だ。
俺と合流できたんだし、さっさと別の国に行って、この世界を脱出する方法を見つける方が先なんじゃないかって言いたいんだろう。
「まぁ、一応な」
でも、そうするのはちょっと面白くない気もするんだよね。
「厄介ごとになりそうのか?」
「まぁ、そんな感じ」
厄介ごとになりそうだから、できれば首を突っ込みたいんだよね。
厄介なことほど面白いんだから仕方ないだろ?
「だと思ったよ。いつもそうだからな」
俺のことを理解してくれているようで有難いね。感動で涙が出そうだぜ。
「俺も付き合ってやるが、何か当てはあるのか? というか、誰を探しているんだ?」
「探し人は、この土地の領主の隠し子だな」
俺の答えにゼティはどういうわけかピンと来たような顔になる。
どうやら、思い当たる人物がいるようだね。俺もいるんだが、どっちの推理が当たるやら。
とりあえず勿体ぶる必要もないんで、俺は可能性のある人物の名前を挙げることにする。
「俺はカイルって言う冒険者が怪しいと思っているんだが」
「奇遇だな、俺もそいつが怪しいと思う」
なんだよ、会ってたのか?
まぁ、ゼティも冒険者をやっているんだし、同業者同士で顔を合わせることもあるか。
「そっちの根拠は?」
俺はゼティがどうしてカイルが怪しいと思ったのか聞く。
「雰囲気」
俺もそうなんだよなぁ。やっぱり、それなりの教育を受けた奴は雰囲気が違うんだよ。
領主の隠し子である以上、預ける奴はそれなりに信頼のおける人物だし、もしものことがあった時に領主になれるように最低限の教育は施されるだろうから、育ちの良さってのは出てくるはずで、俺達が見た感じではカイルにはそれがあった。
「俺も同じだ。二人しかいないが満場一致でカイルが怪しいから、アイツに接触してみようと思う」
「カイルが領主の隠し子だったらどうする? 代官に引き渡すのか?」
ゼティ君、なかなか良い質問をするね。
「それは代官の出方次第だなぁ。ラザロスの代官は悪い奴ではないだろうが、良い奴とも言い難いからな」
色々と考えているようだし、そんな奴の思惑通りになるのも面白くないだろ?
俺が何を考えているか、察したようでゼティは呆れた表情になるが、否定したりするようなことはしない。こいつも本音では厄介ごとが大好きだからね。
「とりあえず、カイルに会って真相を確かめ、それからどうするか決めるってことで良いんだな?」
ゼティが今後やるべきことを整理してくれたので、その通りだと俺は頷く。
「カイルたちは昨日の夜はベーメン村って場所にいたんで、明日くらいにはラザロスまで帰ってくるだろう。その時に会って話をするってことで良いな?」
「あぁ、それで良い。ここで待ってりゃカイルたちも顔を出しに来るだろうから、その時に話をすればいい」
というわけで話はついたし、明日からやることも決まった。
この世界から脱出する手段は大事だけど、目先の厄介ごとに首を突っ込むのも大事だよな。




